基礎情報
2023/8/2 2024/8/26
脱炭素とは?概要や取り組み状況に関して解説
脱炭素の世界的な取り組みが進む中、建築業界においても脱炭素に対応する機会が増えているのではないでしょうか。
それに伴い、脱炭素の概要や目的を確認したい方もいると思います。
この記事では、脱炭素の概要を解説します。
脱炭素に向けた国や地域の取り組み状況や企業の取り組み事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
脱炭素とは温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すこと
脱炭素とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出を実質ゼロに抑えることです。
脱炭素は省エネ対策などによって温室効果ガスの排出量を抑えるとともに、温室効果ガスの排出量から植林や森林管理など人為的な活動による吸収量を差し引いて実質的にゼロを目指すことで実現します。
たとえば、脱炭素に向けて「カーシェアリングや太陽光ソーラーシステムなど省エネを配慮したサービスの購入や使用」「省エネと創エネによって消費エネルギー量実質ゼロを実現する建物の建築及び管理」などを行うことにより、温室効果ガスの排出量を抑えています。
脱炭素の達成は、気候変動問題の解決に向けた世界共通の長期目標となっています。日本政府も、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すことを2020年10月に宣言しています。
消費エネルギー量実質ゼロを実現する建物の概要や基準に関しては「ZEBとは?知らないと乗り遅れるZEBの基礎知識」「ZEHとはどんな住宅?いま知るべき、ZEHの基礎知識」を参考にしてください。
なお、温室効果ガスの排出量を抑える方法に関して知りたい人は「二酸化炭素排出の原因とは?個人や家庭、企業における対策方法を解説」を確認してください。
脱炭素とカーボンニュートラルの違いは定義されていない
脱炭素とカーボンニュートラルの違いは環境省などの省庁などによって公式には定義されていません。
また、環境省はカーボンニュートラルの定義を「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」として公表していますが、脱炭素の定義を明示していません。
脱炭素とカーボンニュートラルの違いに関して公式の定義が明確にされていないため、インターネッ上では脱炭素とカーボンニュートラルを別のものとして取り扱っているケースもみられます。
※本サイトにおける脱炭素の定義はこちら
なお、環境省ではカーボンニュートラル実現の手段として脱炭素への移行を提唱しています。
そのため、脱炭素はカーボンニュートラルを実現する取り組みとして捉えることもできます。
環境省によるカーボンニュートラルの定義はこちら
脱炭素が必要とされる背景には地球温暖化がある
脱炭素が必要とされる背景には地球温暖化による気候変動があります。
地球温暖化の要因には、化石燃料の消費による大気中における二酸化炭素濃度の増加があります。
2021年の大気中の二酸化炭素濃度は、温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)の解析によると415.7ppmでした。
工業化(1750年)以前の平均的な値である約278ppmと比較して49%増加しています。
また、二酸化炭素濃度の増加によって世界の平均気温は過去10年間、高温が記録されています。
そして、21世紀末(2081年~2100年)の平均気温は、2.6~4.8℃上昇することが予測されています。
さらに、気候変動によって強雨に伴う洪水や土砂災害や台風の増加による高潮災害のリスクが高まります。
気候変動に伴う災害や災害による経済的なリスクを回避するためにも地球温暖化対策を行い、持続可能な社会の実現に向けて脱炭素に取り組む必要があります。
参照:地球温暖化の現状と原因、環境への影響|環境省COOL CHOICE
脱炭素に向けた世界の動向
2015年12月に採択されたパリ協定以降、脱炭素は世界的な情勢となっています。
2021年4月には、世界全体のCO2排出量の37.7%を占める125カ国・1地域が、2050年までの脱炭素の取り組みを表明しています。
【各国のカーボンニュートラル表明状況】
国 | 温室効果ガス(GHG)削減目標 | カーボンニュートラル表明内容 |
日本 | 2030年のGHG排出量: 2013年比46%削減、さらに50%減を目指す |
2050年までにカーボンニュートラル実現(法定化) |
米国 | 2030年のGHG排出量: 2005年比50~52%減 |
2050年までにカーボンニュートラル実現(大統領公約) |
EU | 2030年のGHG排出量: 2005年比61%減 |
2050年までにカーボンニュートラル実現(長期戦略) |
中国 | 2030年のGHG排出量: 2005年比65%以上減 |
2060年までにカーボンニュートラル実現(国連演説) |
参照:第1部 第2章 第1節 脱炭素を巡る世界の動向│エネルギー白書2022 HTML版│資源エネルギー庁
たとえば、日本をはじめ、EU・英国・米国では2050年までにカーボンニュートラルを実現することを表明しました。
いずれの国もカーボンニュートラルに至る複数のシナリオを掲げて取り組んでいます。
また、中国は2030年までにCO2排出を減少させ、2060年までにカーボンニュートラルを実現することを表明しました。
中国は、新エネルギー自動車向け補助金を出すなど電気自動車(EV)の普及を行っています。
さらに、脱炭素を表明している各国は脱炭素分野への政策的支援も表明しています。このことからも世界的に、脱炭素は地球温暖化のみならず成長戦略として捉える動向があるといえるでしょう。
脱炭素社会とは温室効果ガス排出実質ゼロを目指す社会
脱炭素社会とは温室効果ガス排出実質ゼロを目指す社会のことです。
脱炭素社会に向けた取り組みは国や自治体のみならず企業や個人の課題でもあります。
たとえば、脱炭素社会に向けた日本の取り組みとして、山間部の風力発電によって蓄えた電力を都市部で利用する地域間交流が挙げられます。
また、脱炭素社会に向けた企業の取り組みとして、使用電力の再生可能エネルギーへの置き換えや、ZEB/ZEHの実現などがあります。
ほかにも、地方自治体や中小企業、個人ができる脱炭素社会への取り組みもあります。
EV(電気自動車)やFVC(燃料電池車)など、エコカーの活用によって移動時のCO2排出量を削減できます。
なお、脱炭素社会に対応するために必要な機器や電動車を購入するための補助金制度もあります。
脱炭素への取り組みにおいてコストが足枷となっている場合には補助金制度の活用を検討してみてください。
脱炭素に向けた国や地域の取り組み状況
脱炭素に向け、自治体と民間企業、またはゼロカーボンシティ同士が連携してさまざまな取り組みが進められています。
【国や地域の取り組み例】
取り組み例 | 概要 |
ゼロカーボンシティ |
|
ゼロカーボンドライブ |
|
ゼロカーボンパーク |
|
ZEB/ZEH |
|
たとえば、2023年2月28日現在、871の自治体が「2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ」を表明しており、再生可能エネルギーの活用を推進するなど、ゼロカーボンシティを目指しています。
また、CO2排出量がゼロのドライブを目指す取り組みや国立公園における脱炭素などがあります。
これらの取り組みは脱炭素を図ると同時に、電力の再生可能エネルギー化の普及や、持続可能かつ魅力的な観光地づくりの実現が目標となっているのも特徴といえます。
ほかにも、国が脱炭素に向けた取り組みとして普及を進めているZEBやZEHがあります。
ZEBやZEHの実現に向け、住宅や建築物の省エネ基準への適合義務付け拡大などさまざまな計画が策定されており、建築業界での対応もさらに必要性を増すことが予測できます。
なお、ZEBに関して知りたい人は、「ZEBとは?知らないと乗り遅れるZEBの基礎知識」「ZEHとはどんな住宅?いま知るべき、ZEHの基礎知識」を参考にしてください。
脱炭素に向けた企業の取り組み状況
2015年のパリ協定を契機に、脱炭素社会に向けた国内企業の取り組みが進んでいます。
【国内企業の取り組み状況】
項目 | 状況 |
TCFDへの賛同企業 | 1,252社が賛同(2023年3月27日現在) |
RE100への参加企業 | 78社が参加(2023年3⽉1⽇現在) |
たとえば、経済省が公表している情報によると執筆時点では、企業の気候変動への取組みなどを開示しているTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同する国内企業は1,252社でした。
また、使用電力を100%再生可能エネルギーに置き換えている企業が加盟できるRE100に参加する国内企業は執筆時点で78社でした。
RE100への参加企業399社のうち、アメリカが99社となっており、日本はそれに次ぐ78社であることからも日本企業の脱炭素に対する積極性が伺えます。
なお、企業が行っている具体的な事例を知りたい人は「脱炭素社会に向けて企業が取り組むべきことは?必要な理由や事例も解説」で紹介しているので、参考にしてください。
参照:
日本のTCFD賛同企業・機関|経済産業省
RE100に参加している国別企業数|環境省
まとめ
脱炭素とは、温室効果ガスの排出を実質ゼロに抑えることです。
脱炭素は公式に定義されておらず、カーボンニュートラルの違いも公式に定義されていませんが、脱炭素はカーボンニュートラルを実現する取り組みとして捉えることもできます。
脱炭素が推進される背景には地球温暖化による気候変動があります。
2015年12月に採択されたパリ協定以降、脱炭素は世界的な情勢となっており、日本をはじめとする主要国が2050年のカーボンニュートラル達成を表明しています。
また、脱炭素社会とは温室効果ガス排出実質ゼロを目指す社会のことです。脱炭素社会に向けて国や地域をはじめ、さまざまな企業が取り組みを進めています。
建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。
リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。
この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
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