基礎情報
2024/1/11 2024/12/18
循環型社会とは?個人でできることや取り組み事例について紹介
人間社会は、天然資源を利用することで生活を保っています。しかし、天然資源の利用は環境に悪影響を及ぼすことも事実です。
そこで近年、自然環境を守り、人間社会を維持するための「持続可能な社会の実現」に向けて、「循環型社会」という言葉が重要視されています。
循環型社会の実現は地球規模で取り組み必要があるため、国や企業だけでなく私たち個人も意識的に行動しなければ達成できません。
この記事では建設業界の方向けに、「循環型社会」実現に向けた必要な取り組みを解説します。私たちが個人的にできる取り組みも紹介していくので、ぜひ参考にしてください。
循環型社会とは
循環型社会とは、天然資源を効率的に再利用・再生し消費を最小限に抑え、できるだけ環境への負荷を軽減する社会を指します。これまで私たちは、石油や天然ガスなど天然資源をエネルギーや製品の原料として利用した後は、そのまま廃棄していました。
しかしこの流れによって、資源の減少・廃棄物の焼却によるCO2の増加・埋め立てによる環境破壊などの世界規模の問題が発生しています。
そこで、大量生産・大量消費・大量廃棄という「一方通行」の流れを循環型に変えることで、持続可能な社会の実現を目指すために提示されたのが、循環型社会という概念です。循環型社会は、持続可能な社会の実現に向けた統合的な取り組みであり、「低炭素社会」「自然共生社会」の実現にも重要な役割を果たしています。
参照:循環型社会への新たな挑戦
循環型社会を実現するための3Rとは
循環型社会を実現するためには、3つのRが重要視されています。
Reduce(リデュース)
Reduce(リデュース)は、廃棄物の発生や使用する資源を減らすことを指します。製品の購入前に必要性を確認する、使い捨てになる製品を選ばない、などが具体的な行動例です。
また、省エネ家電というエネルギー効率の高い家電を選ぶことで、エネルギー資源や電気代の節約にもつながります。
Reuse(リユース)
Reuse(リユース)とは、使用済みの製品や部品を、そのままもしくは修理・改造して再び使用することを指します。
不要品を廃棄するのではなく、フリーマーケットや中古用品店で売買することで、廃棄物の削減が可能です。また、家具や衣服のDIYやリメイクもリユースに該当します。
Recycle(リサイクル)
Recycle(リサイクル)は、使用済みの製品を原料やエネルギー資源として再利用することを指します。
日本では、牛紙パックがトイレットペーパーに、ペットボトルが衣服などに再利用されるリサイクルが多くなっています。製品が正常に再利用されるために、正しい方法で分別する取り組みもリサイクルの一環です。
循環型社会が注目されている背景
循環型社会は環境の負荷の軽減を目的としています。実際に循環型社会がなぜ注目されているのか、理由は以下の4つが挙げられます。
廃棄物の増加
20世紀後半以降の経済成長や技術の発展により、大量の廃棄物が発生し、適切な処理がされない廃棄物が環境に大きな悪影響を及ぼすようになりました。
この問題は全世界で発生し、現在も続く地球規模での海洋汚染や土壌汚染・大気汚染の原因となっています。
こういった、廃棄物の増加に伴い、環境負荷に対する課題の解決のために循環型社会の実現が注目されています。
資源の枯渇リスク
第2節一次エネルギーの動向によると、2015年末時点で石油の可採年数は50.7年、天然ガスの可採年数は52.8年と予想されています。
このように、天然資源の枯渇リスクが高まる中で、新しい資源が求められるようになりました。循環型社会が実現することで、天然資源の再利用が可能となるため、枯渇リスクを軽減することができ、循環型社会が注目されるようになりました。
国際的な政策の推進
地球規模の環境問題に対して、国連をはじめ各国で「持続可能な社会の実現」に向けた対策を強化しています。
これに伴って、国だけでなく企業や個人としても循環型社会への取り組みが求められるようになりました。
また、2015年9月に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)内で、循環型社会に関する目標が掲げられたことでも、さらに注目されています。
循環型社会形成推進基本法とは
循環型社会形成推進基本法とは、循環型社会の実現を目指すことを目的として、2000年6月に公布された法律です。
以下の3つの基本原則(3R)を推進することで、環境への負荷を軽減し、持続可能な社会の実現を目指しています。
- リデュース(廃棄物の発生の抑制)
- リユース(再利用)
- リサイクル(資源の再生)
また、循環型社会形成推進基本法に基づいて、様々な規制も制定されています。
例えば、2001年4月に施行された家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)によって、廃棄されたテレビやエアコンなどの家庭用機器は再商品化が義務付けられました。これにより、廃棄物の抑制や資源の再利用が可能となります。
また、2001年5月に施行された食品リサイクル法によって、食品関連事業者には廃棄物の抑制や再生利用の促進が義務化されました。これにより、食品廃棄物の減少や農業への資源の循環が可能となります。
世界の取り組み事例
ここまでで、循環型社会の概要について解説しました。循環型社会を実現するためには、日本だけでなく世界での取り組みが必要となります。ここでは、循環型社会の実現に向けた世界の取り組み事例を紹介します。
アジア太平洋3R推進フォーラム
国際的な循環型社会の形成の一環として、我が国が設立を提唱した「アジア太平洋3R推進フォーラム」や短寿命気候汚染物質削減のための気候と大気浄化のコアリション(CCAC)、経済協力開発機構(OECD)の廃棄物・資源生産性作業部会(WPRPW)などにおいて、我が国の経験を積極的に発信しています。特に、アジア太平洋各国における3Rの推進に向け、各国政府、地方公共団体、国際機関、民間セクター、専門家、NGOなどを含む幅広い関係者の協力の基盤となるアジア太平洋3R推進フォーラムでは、3Rに関するハイレベルの政策対話の促進、各国における3Rプロジェクト実施への支援の促進、3R推進に役立つ情報の共有などを推進しています。
2014年(平成26年)2月にインドネシアのスラバヤにて開催された本フォーラムの第5回会合には、アジア諸国及び太平洋島しょ国の33か国の政府、自治体、国際機関などから約500名が参加しました。その成果として、官民連携や都市間等の協力関係の推進を記載した「スラバヤ宣言」を採択しました。
日本は過去の歴史において、廃棄物の適正処理や3Rへの取組を通じ、政府・自治体・民間企業などの関係者が各々の経験・技術・ノウハウを蓄積してきました。この結果、日本では各種リサイクル法や焼却施設におけるダイオキシン対策施策、水銀・PCBに代表される有害廃棄物処理に関する厳しい規制などが整備され、これらに対応した先進的な処理技術を有しています。そのため、海外諸国における廃棄物問題の解決に向けて、日本は貢献することができる条件が整っています。今後も引き続き各国政府や国際機関などとの協力を発展させ、国際的な循環型社会の形成を目指していきます。
引用:平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第3節 資源がもっと活きる未来へ
EU(欧州連合):プラスチック袋削減指令
EU(欧州連合)では、プラスチック袋の消費量削減に関する指令のもと、有料化や使用制限を設けて、使用量の削減に取り組んでいます。
【the adoption of measures ensuring that the annual consumption level does not exceed 90 lightweight plastic carrier bags per person by 31 December 2019 and 40 lightweight plastic carrier bags per person by 31 December 2025, or an equivalent targets set in weight and/or
the adoption of instruments ensuring that, by 31 December 2018, lightweight plastic carrier bags are not provided free of charge at the point of sale of goods or products, unless equally effective instruments are implemented.”
翻訳版はこちら
2019年12月31日までに1人当たりの軽量プラスチック製レジ袋の年間消費量が90枚を超えないこと、2025年12月31日までに1人当たりの軽量プラスチック製レジ袋の年間消費量が40枚を超えないことを保証する措置の採用、または重量で同等の目標を設定すること、および/または、同等に効果的な手段が実施されない限り、2018年12月31日までに商品または製品の販売時点で軽量プラスチック製レジ袋が無料で提供されないことを保証する手段の採用。
引用:amending Directive 94/62/EC as regards reducing the consumption of lightweight plastic carrier bags
ドイツ:デポジット制度
ドイツでは、「1988年ペットボトル/デポジット政令」(The PET/Deposit Ordinance in 1988)を制定し、使い捨てのペットボトルに、1本当たり50ペニヒ〜2マルクのデポジットが義務づけられた。さらに「1991年包装政令」では、 すべての飲料容器について強制デポジットが課された。ただし、全飲料容器の 72%以上をリターナブル容器にする場合、全飲料容器に対する強制デポジット義務は免除されるという規定も盛り込まれている。
ミネラルウォーター用のリターナブル瓶を例に取ると、購入時に消費者は1本 当たり30ペニヒのデポジット料金をレジで支払う必要がある(なお、プラスチックケースにも1ケース当たり3マルクのデポジット料金がかかり、1ケース(12 本)を購入した場合、合計6マルク60ペニヒを支払う義務がある。)。使用後、 消費者は販売店に空きびんを持ち込み、デポジット料金を返却してもらう(現 金の場合と販売店の金券になる場合がある。)。一方、回収されたびんは、工 場へと運ばれ、リユースされる(ガラス瓶は40~50回、ペットボトルは15~30 回再利用。)。なお、使い捨て飲料容器の大部分については、デュアルシステムを通して、回収・リサイクルされている。
日本の取り組み事例
前の項では世界の取り組み事例を紹介しました。
次に紹介するのは、日本国内における建設業界の循環型社会を実現するための取り組みを紹介します。
自社で取り組みを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
大成建設株式会社
責務
大成建設グループは、建設業を中核とした企業グループとして、事業活動が循環型社会への移行に及ぼす影響と循環型社会への移行から受ける影響を十分に認識し、グリーン調達率の向上と建設副産物の最終処分率の低減を進め、サーキュラーエコノミーを実現することを責務とします。
事業を通じた貢献
大成建設グループは、循環型社会の実現に向けた「リスクと機会」を的確に抽出し、土壌・地下水汚染対策や廃棄物・最終処分場などに関連する技術・サービスの開発・普及および産業副産物の再資源化の推進により、「循環型社会」の実現に貢献します。
リスクと機会
従来の大量生産・大量消費・大量廃棄のリニアエコノミーから、資源の投入・消費を抑えつつストックを有効活用し、付加価値を生み出すサーキュラーエコノミーヘの移行が世界的な重要課題となっており、企業にも省資源、再生可能な資材の利用、プラスチックによる自然環境汚染への対応等、サプライチェーンも含めた持続可能な調達への取り組みが求められています。
循環型社会への移行が滞った場合、資源不足による資材価格の上昇や、廃棄物の処分費用の増加によるコスト増等のリスクが当社グループに及ぶことが想定されます。また、当社グループの取り組みが十分でない場合には、ステークホルダーからの評価が低下し、受注機会が減少する等のリスクが想定されます。
一方で、循環型社会への移行に伴い、当社グループにおいてはサーキュラーエコノミー実現に貢献する再生資源使用の拡大、土壌浄化などの環境再生事業の受注機会の増加が見込まれます。また、当社グループが進めている資源・建設資材等を有効活用する、循環利用に配慮した設計・システム・製品・技術の開発及び社会実装の促進は、競争優位性の確保・向上に寄与します。
当社グループにとって、循環型社会への移行は企業価値向上やステークホルダーからの評価向上につながる機会であると考えています。
引用:循環型社会|持続可能な環境配慮型社会の実現|環境|大成建設サステナビリティ
前田建設工業株式会社
建設業は、国内全産業の約4割の資源を利用し、約2割の廃棄物を排出しています。また、世界に目を向けると、欧州における資源循環を前提としたビジネスモデルであるサーキュラーエコノミー(CE)への転換や海洋プラスチック問題等、国際的な動きへの対応が求められています。
2019年9月、国土交通省は、「建設リサイクル推進計画2020~「質」を重視するリサイクルへ~」を公表しました。建設廃棄物のリサイクル率が維持・安定期に入ってきたことから、今後は、リサイクルの「質」の向上が重要な視点とされています。
「アスファルト・コンクリート塊がより付加価値の高い再生アスファルトとしてリサイクルされる仕組みの検討」は、排出事業である当社とグループである前田道路の共通課題となってます。また、「石油を原料とする廃プラスチック対策」や「建設発生土の官民有効利用マッチングシステム」は、温暖化対策としての側面を持っています。
当社グループは、インフラの運営(発注)者、排出事業・再生業者といった複合的な視点から、循環経済の実現に向け、製品のライフサイクルを通じた環境配慮設計に取り組むとともに、業界を通じた建材メーカーへの働きかけを進めます。また、資源・副産物物流データの一元化により行政報告の削減や生産性向上の施策の社会実装に、継続して取り組んでいきます。
引用:循環型社会構築:建設廃棄物の対策|サステナビリティ|前田建設工業株式会社
個人でできることとは
ここまでで、国内や国外で組織的に行われている取り組みを紹介しました。しかし、私たちの行動が引き起こした環境問題は私たちが意識しなければ、解決することはできません。ここでは、私たち一人ひとりが循環型社会の実現に向けてできることを紹介します。
リデュース
リデュースとは、廃棄物の発生を減らすことを指します。廃棄物を減らすことで、燃焼や埋め立てによるCO2の排出量増加・環境汚染を防ぐことができます。
リデュースの具体的な行動は以下の通りです。
- マイバックの使用
- 食品の計画的な購入・保存
- 省エネ家電の使用
参照:「循環型社会とは?」どうしたらいい?未来のために私たちにできることとは?
リユース
リユースとは、一度使用した物を修理や改造することで再び使用することを指します。これにより、廃棄物の発生を減らすことができます。
リユースの具体的な例は以下の通りです。
- フリーマーケットの利用
- DIY
- シェアリングサービスの利用
リサイクル
リサイクルとは、使用済みの製品を資源として再利用することを指します。資源が循環型に変化するため、廃棄物の減少にもつながります。
リサイクルできる身近な製品は以下の通りです。
- 牛乳パック
- ペットボトル
- 家電
まとめ
本記事では建設業界の方に向けて、「循環型社会」実現のために必要な取り組みを解説しました。循環型社会とは、天然資源を効率的に再利用・再生し消費を最小限に抑え、できるだけ環境への負荷を軽減する社会を指します。
循環型社会は、国や企業だけでなく私たちが個人として行動を変えなければ、実現できません。まだまだ課題のある環境問題の解決に向けて、一人ひとりができることを実践していきましょう。
建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。
リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。
この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
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