業界事例
2024/7/25 2024/9/25
CDP気候変動部門Aリストに選定された鉄建建設 迅速なAリスト入りを支えたサステナビリティ経営(後編)
前編では、CDP気候変動部門Aリスト選定までの経緯、Aリスト入りを果たせた要因、背景などについてお話しいただきました。
後編では、Aリスト入りを事務局として支えた「サステナビリティ推進室」の具体的な取り組み、サステナビリティ経営を推進する上での組織づくりなどについてお聞きしていきます。
社長直轄の組織横断的部署
CDP気候変動部門Aリスト選定など、鉄建建設のサステナビリティ経営への取り組みを牽引してきたのが2021年に新設した『サステナビリティ推進室』です。推進室内には、サステナビリティ推進における環境戦略に関する施策全般を企画・立案するサステナビリティ企画部と、温室効果ガスの排出量をはじめとする気候関連財務情報等の収集・分析および目標設定や管理を行う環境マネジメント部の2部を設置。室長は、2024年4月から取締役常務執行役員経営企画本部長が兼任で務めています。
「サステナビリティ推進の取り組みに当たっては、社内の他部署、グループ会社、協力会社等との連携が不可欠となります。大切なことは、いかに全社組織横断的に取り組むかという点です。サステナビリティ推進室だけがやればいいという意識にならないよう、グループ全体で、持続可能な開発目標であるSDGsや環境・社会・企業統治であるESGの意識を醸成し、SDGsとESGを包含するサステナビリティ経営を確立することが肝要であると考えています」(白石氏)
鉄建建設株式会社 |
専属の室員は5人。白石氏は「私は土木、奥田は建築、中村は事務と各職種が混在している部署なので、それぞれに得意分野があります」と説明します。
CDPへの回答作成に当たっても、項目ごとに責任者を決めて、それぞれが割り当て部分の回答作成に取り組んだといいます。「もちろん全員で意見を出しながら、こういう書き方が適切なのではないかといった議論をしながら進めていきました。当室だけで回答できない部分については、社内の各部署に聞いて回りましたし、グループ会社や取引先との情報交換も行いました」(奥田氏)
このとき社長直轄の組織横断的な部署であったことが功を奏したといいます。「どこの本部にも属していませんので、建築本部、土木本部、管理本部などいろいろ直接聞いても、本部と同等の位置づけなのでおかしくないわけです」
また、コンサルともキャッチボールを繰り返しました。「我々だけで回答を書いても、CDP側にきちんと評価されるかどうか分かりません。コンサルの方から、最新のアドバイスをいただきながら進めました。こまめなキャッチボールが功を奏したとも言えます」(奥田氏)
鉄建建設株式会社 |
社員の環境意識向上を鼓舞
鉄建建設は、サステナビリティ経営を推進し、社会的価値と経済的価値の両立をめざした方針および施策を策定する機関として、社長を委員長とした経営層をメンバーとするサステナビリティ委員会を設置しています。
サステナビリティ委員会内の専門委員会の一つである環境戦略委員会は、気候変動に関連するリスクと機会の評価を行い、事業活動におけるCO2排出量削減に向け、2030年および2050年の長期目標を設定し、現場や事務所でさまざまな取り組みを推進しています。サステナビリティ推進室は同委員会の事務局として、グループ全体の旗振り役も務めています。
「推進室の役割の一つとして、グループ全社員の環境意識の向上が挙げられます。やはり大切なことは社員のやりがいです。環境に関する意識向上を目指して、2023年度からは改善活動表彰制度の中にサステナビリティ推進室長表彰が加わりました。最も優れたものは社長賞となります」(白石氏)
東京商工会議所主催の環境社会検定試験(eco検定)について、2027年度までに全グループ社員の50%以上の合格を目指して、全グループ社員を対象とした取り組みも進めています。eco検定推進企業として登録し、2022年度は合格者数ランキングが従業員300名以上の企業部門で第3位となりました。
白石氏は「当社は2024年2月1日に会社創立80周年を迎え、その節目に、CDP気候変動部門において、Aリストという最高評価をいただきました。改めて、ステークホルダーの皆さまの満足度向上と持続可能社会の実現に向けて、グループ一丸となって、今まで以上の努力を行っていかねばならないと認識しました」と話します。「CDPスコアの高評価は、株主やお客さまをはじめとするステークホルダーの皆さまからの信頼向上にもつながりますので、これらの信頼を損なうことのないよう、企業グループとしてできる範囲内で、さまざまな取り組みを進めていきたいと考えています」
自然社会との共生に関する取り組みの一例としては、『てっけんの森』での活動が挙げられます。東京都は水道局の水源林づくり、大阪府は台風で被害を受けた森林に植樹を行う環境林づくり、宮城県は都市近郊の里山の保全を行う里山林づくりと全国3箇所において、生物多様性の保全に努めています。特に東京都の水源林の保全では、活動を通じて、東京都が推進する「東京グリーンビズ」や環境省が推進する「生物多様性30by30」にも参画しています。
山梨県甲州市の水道水源林「てっけんの森」
出典:鉄建建設Webサイト https://www.tekken.co.jp/blog/000136.html
「幸いにも、当社は環境に優しいとされている鉄道において、他社と比べても優れた技術力と多くの工事実績を有しております。今後もこれらの工事で培ってきた技術力を向上させつつ、2050年のカーボンニュートラル達成を目指して、脱炭素社会の実現、持続可能な地球環境の維持に貢献していきたいと考えています。環境という土台のもと、経済的価値と社会的価値の両軸をバランスよく追求する企業グループとなり、サステナビリティ経営を推し進める会社でありたいと願っています。また、社会基盤を創造する会社として、単に技術や仕組みだけではなく、それを使って社会を変革していこうという、いわゆるSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)の取り組みは大切であると考えています。」(白石氏)
鉄建建設株式会社 |
終わりに
鉄建建設がスピーディーなCDP気候変動部門Aリスト選定を果たせた要因の一つとして、サステナビリティ推進室が果たした役割が大きいという印象を持ちました。社長直轄の組織横断的な部署として、各本部と対等な立場で情報交換を行うことができたことが、CDPへの回答作成に大いに役立ったと言います。また、社内のサステナビリティ経営の旗振り役、社内の環境意識の醸成にも寄与しています。
サステナビリティ経営を推進する上で、どのような組織づくりを進めるべきか、鉄建建設はその一つの好例を示してくれています。
※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年5月)のものです。
前編はこちら:
CDP気候変動部門Aリストに選定された鉄建建設
迅速なAリスト入りを支えたサステナビリティ経営(前編)
この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
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