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二酸化炭素(CO2)排出量の計算方法を解説

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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二酸化炭素(以下、CO2)の排出量がどのように計測されているのかを知りたい方もいるでしょう。
CO2の排出量は計測器などを使って実際の量を測るのではなく、計算式を使って算出されています。

CO2の排出量は、「活動量×排出係数」の計算式によって算出されています。
また、活動量にはエネルギーの使用量や廃棄物の焼却量など実際の数値を、排出係数にはCO2の排出行動ごとに定められた数値をそれぞれ使用します。

当記事では、CO2排出量の計算方法を解説します。エネルギー使用におけるCO2排出量の考え方や、国への報告義務について知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

CO2の排出量は活動量と排出係数の計算式で算出される

CO2の排出量は、活動量と排出係数の計算式で算出されています。

【CO2排出量の計算式】
CO2排出量=活動量×排出係数

活動量には電気やガスの使用量、廃棄物の焼却量などが該当し、排出係数にはCO2の排出行動ごとに定められた値を使用します。

たとえば、軽油の使用における排出係数は2.58(tCO2/㎘)であり、1ℓの軽油を使用した場合は0.001(㎘)×2.58(tCO2)=0.00258(tCO2/㎘)となるため、約2.6㎏のCO2が排出される計算です。

排出係数は電力やガソリン、灯油の使用など、CO2の排出行動ごとに定められた値を使用します。
家庭や企業から排出されるCO2の総量を算出する場合は、排出行動ごとのCO2排出量を計算した上で、その合計値を求めましょう。

なお、CO2の排出行動ごとの排出係数を知りたい方は、環境省の公式HP「算定方法・排出係数一覧」から確認してください。

電力使用の排出係数は契約の電力会社によって異なる

供給された電気を使用する場合の排出係数は、契約している電力会社によって異なります。
電力使用におけるCO2の排出係数は、各電力会社での「CO2排出量÷販売電力量」の値で定められているためです。

【電気事業者の排出係数(令和5年提出用)】

電気事業者 基礎排出係数 (tCO2/kWh)
東京電力エナジーパートナー(株) 0.000457
北海道電力(株) 0.000549
東北電力(株) 0.000496
関西電力(株) 0.000299
四国電力(株) 0.000485
九州電力(株) 0.000299
沖縄電力(株) 0.000739

参照:環境省「電気事業者別排出係数一覧

CO2排出量の計算式に当てはめた場合、電力1kWh使用時のCO2排出量は関西電力(株)が約0.30㎏、沖縄電力(株)が約0.74㎏となり、同じ電力使用量でも約0.45㎏の差が発生します。

企業でCO2排出量を計算する際は、自社で契約している電気事業者の排出係数を使用しましょう。

なお、電気事業者別の排出係数は年度ごとの排出実績を元に更新されます。
CO2排出量の計算には、環境省の公式HP「算定方法・排出係数一覧」から該当する年度のデータを使用してください。

再生可能エネルギーは調整後排出係数を使用する

電力使用におけるCO2排出係数には、基礎排出係数のほかに再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を反映し、CO2排出量を調整して算出される「調整後排出係数」があります。

再生可能エネルギーの固定価格買取制度とは、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。
再生可能エネルギーによる発電はCO2排出係数が0となることから、調整後排出係数が低いほど環境への配慮を示す指標となります。

国の算定報告公表制度に基づく法定報告では、基礎排出係数と調整後排出係数の両方を報告する必要があります。

一方で、企業の自主的な報告であるサステナビリティレポートやCSR報告書で開示する数値は任意となりますが、より実態を反映している調整後排出係数の使用が望ましいとされています。

提供する電力のうちの再生可能エネルギーの使用比率により、複数のプランを提供している電気事業者もあります。
契約の電力会社や利用プランを選ぶ際には、調整後排出係数をひとつの指標としてみましょう。

地球温暖化係数を用いて温室効果ガスのCO2換算値を計算できる

気候変動に関する政府間組織(IPCC)によって公表される地球温暖化係数(GWP)を用いて、温室効果ガスのCO2換算値を計算できます。

CO2換算値とは、CO2を基準としたときにほかの温室効果ガスがどれだけ地球温暖化への影響があるかを表した数値のことです。
CO2換算値は「活動量×排出係数×地球温暖化係数」の計算式で算出できます。

【地球温暖化係数(GWP)】

温室効果ガス 地球温暖化係数 主な発生源
二酸化炭素(CO2) 1
  • 化石燃料の燃焼
メタン(CH4) 28
  • 家畜の腸内発酵
  • 廃棄物の埋め立て

など

一酸化二窒素(N2O) 265
  • 燃料の燃焼
  • 窒素肥料の使用
  • 工業プロセス
  • 有機物の微生物分解

など

ハイドロフルオロカーボン(HFC) 12,400 など
  • エアコンや冷蔵庫などの冷媒
  • 建物の断熱材

など

三フッ化窒素(NF3) 16,100
  • 半導体の製造プロセス

参照:経済産業省「主な温室効果ガスの温暖化係数一覧

たとえば、家畜の腸内発酵や廃棄物の埋め立てなどで発生するメタン(以下、CH4)のIPCC第5次報告書における地球温暖化係数は28であり、同量のCO2と比較して28倍の温室効果があるとされています。

大気中の温室効果ガスの大半を占めているのはCO2ですが、中にはCO2の数万倍もの温室効果をもたらすものもあります。
CO2だけでなく温室効果ガス全体の削減を目指すことが、有効な地球温暖化対策につながるでしょう。

サプライチェーン排出量の計算方法

企業における温室効果ガスの排出量に関しては、サプライチェーン排出量の見える化への取り組みが広まっています。
企業が投資家や国の調査機関へ情報開示する際は、サプライチェーン排出量での開示が求められます。

サプライチェーン排出量とは、自社だけでなく原料の調達、製造、廃棄といった事業活動全体での温室効果ガス排出量のことです。

排出段階によってScope1、Scope2、Scope3に分けられており、それらの合計がサプライチェーン排出量として算出されます。

【サプライチェーン排出量の計算式】
サプライチェーン排出量=Scope1+Scope2+Scope3

【サプライチェーン排出量の排出段階】

排出段階 概要 具体例
Scope1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
  • 燃料の燃焼
  • 工業プロセス

など

Scope2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
  • 電力の使用
  • ガス製品の使用

など

Scope3 事業者の活動に関連する他社の排出(Scope1、Scope2以外の間接排出)
  • 使用する資材が生産される過程で排出されたCO2
  • 通勤や出張で使用する交通機関から排出されるCO2
  • 自社からの廃棄物が外部で処理される場合に発生するCO2

など

サプライチェーン排出量を考えることで、事業活動のどの段階でどれだけの温室効果ガスを排出しているのかを整理できます。
省エネ製品を使用することや廃棄物を減らすことなどによって、自社以外の部分での温室効果ガス削減にも貢献できるでしょう。

サプライチェーン排出量について詳しく知りたい人は、環境省の「サプライチェーン排出量算定の考え方」を参考にしてみてください。

Scope1排出量の計算方法

Scope1は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出であり、以下の計算式で算出されます。

【Scope1の排出量の計算方法】
Scope1排出量=燃料の消費量×燃料ごとの排出係数

燃料の消費量には、工場や倉庫で使用するボイラーや、ガソリンを使用する社用車などによる燃料の使用量が当てはまります。

また、排出係数は使用する燃料ごとに定められているため、環境省の公式ホームページ「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」から該当の項目を確認してください。

Scope2排出量の計算方法

Scope2は他社から供給される電気や熱、蒸気の使用に伴う間接排出です。
企業活動では主に電力会社から供給される電力がScope2に該当し、以下の計算式で算出されます。

【Scope2の排出量の計算方法】
Scope2排出量=電気使用量(kWh)×電力会社ごとの排出係数 

電力会社ごとの排出係数は、環境省による算定方法・排出係数一覧ページの「電気事業者別排出係数一覧」から確認できます。
電気事業者別排出係数は年度ごとに改定されるため、算出の際は最新の数値を確認しましょう。

Scope3排出量の計算方法

Scope3は、Scope1とScope2以外の間接排出であり、事業者の活動に関連する他社の排出のことです。
自社で使用する資材の原材料が製造される過程や、販売した製品が使用、廃棄される際に排出されるCO2もScope3に当てはまります。

【Scope3の排出量の計算方法】
Scope3排出量=活動量×燃料ごとの排出係数 

Scope3は排出活動ごとに15のカテゴリーに分類されており、カテゴリー別に算出した値を合計してScope3全体の排出量を求めます。

Scope3における活動量に該当するのは、電気の使用量や貨物の輸送量、廃棄物の処理量などです。
自社製品を使用する際に必要となる電力や、輸送時に使用されるガソリンの量などが当てはまります。

Scope3の排出は自社が直接かかわっていない部分のため、企業が公表している各種データや業界平均データ、製品の設計値などから情報収集を行いましょう。

なお、販売した製品の使用など使用方法等の条件によって排出量が変わる場合があるものは、標準的な使用シナリオを企業で設定し算定することも可能です。

クラウドサービスの利用によるサプライチェーン排出量の見える化

サプライチェーン排出量の見える化に伴い、計算や管理をサポートするクラウドサービスも開発されています。
AIテクノロジーの使用や外部システムとの連携により、CO2排出量のデータ収集や計算、報告などの工程を一部自動化することが可能です。

サプライチェーン排出量のScope1~3の中でも、自社以外での間接的なCO2排出となるScope3の算出は複雑であり、企業のCO2排出量計算の課題となっていました。

たとえば、建設業においては建築に使用する資材が生産される過程や、施工した建造物の使用・解体に伴って排出されるCO2などがScope3の対象です。
自社以外のCO2排出データを収集し、計算や管理を全て手動で行うには膨大な手間が掛かる可能性があります。

クラウドサービスを利用することにより、企業におけるCO2排出量の算出・管理の一部を自動化することが可能となり、サプライチェーン排出量の算出に要する作業が大幅に削減されるでしょう。

CO2排出量を計算して見える化する理由

CO2排出量を計算して見える化する理由には、以下が挙げられます。

【CO2排出量を見える化する理由】

  • 脱炭素経営の入口となるため
  • エネ法によってエネルギー消費量の報告義務が発生したため
  • 温対法によって排出量報告が義務化したため

近年注目を集めている脱炭素経営への入り口となるだけでなく、企業によっては法律でCO2や温室効果ガスの排出量報告が義務化されています。
報告義務があるにもかかわらず報告を怠った場合は罰則が設けられているため、自社が報告の対象であるかを確認するためにもCO2排出量の計算が必要となるでしょう。

脱炭素経営の入口となる

自社のCO2排出量を計算して見える化することは、脱炭素経営の入り口となります。

脱炭素経営とは、脱炭素を目標とした事業方針を定め、気候変動対策に重点を置いた企業経営をおこなうことです。
環境省では、脱炭素経営に向けたステップとして「知る」「測る」「減らす」の3つを提示しています。

CO2排出量を計算して見える化することは、「知る」と「測る」に該当します。自社のCO2排出状況を把握することにより、CO2排出量の削減に向けた計画を立てることができるようになるため、脱炭素経営に向けた一歩となるでしょう。

なお、脱炭素経営について詳しく知りたい方は、環境省の「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」を参考にしてみてください。

パリ協定により、国際的に温室効果ガスの削減目標ができた

パリ協定とは、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みのことで、京都議定書の後を継ぐものです。2015年にパリで開催した国連気候変動枠組条約第21回締約国会議によって採択、2016年に発効されました。

対象国はすべての締結国となっており、各国によって温室効果ガスの削減目標が決められています。

日本は「温室効果ガスの排出量を2013年度比で2030年までに26%、2050年度までに80%削減する」という削減目標を、国連気候変動枠組条約に提出しました。

省エネ法によって温室効果ガス排出量の報告義務が発生した

エネルギー使用の合理化を目指す「省エネ法」によって温室効果ガス排出量の報告義務が発生したため、企業によってはCO2をはじめとする温室効果ガス排出量の計算が必要となる場合があります。

省エネ法に基づき、原油換算エネルギー使用量が1,500㎘/年以上となる特定事業者には、エネルギーの使用状況や温室効果ガス排出量などの定期報告書や計画書の提出が義務付けられています。また、年間の貨物の輸送量が3,000万トンキロ以上である特定荷主にも同様の報告義務があります。

省エネ法における温室効果ガス排出量の報告義務について詳しく知りたい方は、国税庁のホームページ「省エネ法」を確認してください。

温対法によって排出量報告が義務化した

地球温暖化対策の推進を目指すための法律である温対法では、2006年より温室効果ガスを多量に排出する事業者に対して排出量の算定および国への報告が義務付けられています。

温対法での排出量報告義務は、省エネ法の特定事業者や特定荷主などに加え、全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500㎘/年以上となる事業者が対象です。
事業内容にかかわらず、一定量以上の温室効果ガスを排出する企業には報告義務が発生します。

自社が報告の対象であるかを確認するためにも、自社の温室効果ガス排出量の算出が必要です。
温対法における排出量報告義務について詳しく知りたい方は、環境省のホームページ「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」を確認してください。

まとめ

CO2の排出量は、「活動量×排出係数」の計算式によって算出されています。
活動量にはエネルギーの使用量や廃棄物の焼却量など実際の数値を、排出係数にはCO2の排出行動ごとに定められた数値をそれぞれ使用します。

電力使用における排出係数は契約の電気事業者によって異なり、基礎排出係数のほかに再生可能エネルギーの使用率が反映された調整後排出係数があります。
国の算定報告公表制度に基づく法定報告では、基礎排出係数と調整後排出係数の両方での報告が必要です。

日本では事業における直接的なCO2排出だけでなく、使用する資材が生産される過程など間接的な部分も含めたサプライチェーン排出量の見える化が広まっています。

温室効果ガスの排出量が一定数を超える事業者には国への報告義務があるため、自社のCO2排出量を計算した上で、特定事業者に該当する場合は忘れずに報告を行いましょう。

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