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時計 2023/6/26 アップデート 2023/11/13

TCFDとは?開示する項目や企業への影響を解説

気候変動にともなうリスクや機会を経営戦略に織り込むことを検討している企業は、TCFDについて調査をしているのではないでしょうか。また、TCFDが推奨するシナリオ分析の実施を検討している場合もあるでしょう。

当記事では、TCFDについて解説します。TCFDが推奨する開示項目や気候変動に関する情報開示を対応しない場合の影響も解説しているため、TCFDについて知りたい人は参考にしてみてください。

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TCFDとは気候関連財務情報開示に関する組織のこと

TCFDとは、企業や組織に対して気候変動関連リスクの情報開示を推奨する組織のことで、正式名称は「気候関連財務情報開示タスクフォース」です。気候変動が⾦融システムの安定を損ない⾦融機関の脅威となる恐れがあることから、G20の要請を受け、⾦融安定理事会(FSB)が設立しました。

TCFDの活動内容は、企業や組織の気候変動に関わるリスクや機会などの開示を推奨する事項の作成です。企業の気候変動に関連するリスクの開示によって、投資家や金融機関が気候変動に関する財務リスクや機会を適切に評価できる状態にすることを目標に活動しています。

なお、TCFDは気候変動リスクや機会に関連する情報開示の推奨項目を記載した「気候変動に関連した情報開示(最終報告)」を2017年6月に公表しています。これにより、各企業は気候変動関連の情報開示に取り組む際の指針を持つことが可能となりました。

TCFDの最終提言や開示に関する補足資料は、TCFD公式サイト「Publications(全文英語)」から確認が可能です。公式サイトは全文英語表記ですが、日本語で記載された各種資料をダウンロードできます。

日本ではTCFDコンソーシアムが設立されている

日本では「TCFDコンソーシアム」が民間主導で設立されており、オブザーバーとして「経済産業省」「金融庁」「環境省」が参加しています。

TCFDコンソーシアム設立の目的は、企業の情報開示や開示された情報を金融機関などが適切な投資判断に繋げるための取り組みについて議論することです。議論は3種類の組織に分かれて行います。

【TCFDコンソーシアムの構成】

構成 活動概要
情報開示ワーキンググループ 効果的な情報開示に向けた議論を行うグループ
情報活用ワーキンググループ 開示された情報の活用方法に関して議論を行うグループ
ラウンドテーブル 投資家と事業会社が意見交換を行うための小規模なグループ

たとえば、「情報開示ワーキンググループ」では、投資家や事業会社の議論内容を蓄積し、気候関連情報開示に関する最先端の動向を反映した「TCFDガイダンス3.0」を公開しています。

なお、TCFDコンソーシアムへ入会を希望する場合は、TCFDへの賛同と規約の確認が必要になります。TCFDコンソーシアムへの入会を検討する場合は、TCFDコンソーシアム公式サイトを確認してみてください。

TCFD提言で開示を要求されている項目

TCFD提言で企業が開示する項目として推奨されているのは「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4点です。また、開示項目のほかに推奨される開示内容が11項目公表されています。

【TCFD提言による推奨される開示項目と内容】

ガバナンス 戦略 リスク管理 指標と目標
a)気候関連のリスク及び機会についての取締役会による監視体制の説明をする a)組織が選別した、短期・中期・⻑期の気候変動のリスク及び機会を説明する a)組織が気候関連のリスクを選別・評価するプロセスを説明する a)組織が、自らの戦略とリスク管理プロセスに即し、気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標を開示する
b)気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割を説明する b)気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響を説明する b)組織が気候関連のリスクを管理するプロセスを説明する b)Scope1,Scope2及び該当するScope3のGHGについて開示する
c)2℃以下シナリオを含む様々な気候関連シナリオに基づく検討を踏まえ、組織の戦略のレジリエンスについて説明する c)組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが組織の総合的リスク管理においてどのように統合されるかについて説明する c)組織が気候関連リスク及び機会を管理するために用いる目

標、及び目標に対する実績について説明する

出典:気候関連財務情報開示タスクフォース「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言(最終報告書)」

たとえば、「リスク管理」では、気候関連リスクを評価するための委員会や会議体を公表し、気候関連リスクを特定するための工程が設計されているかを開示します。また、特定したリスクや対応策を社内の総合的リスクに関連させていくための工程についても開示が推奨されています。

なお、TCFDコンソーシアムは、気候変動リスクの推奨開示項目を業種別に解説した資料を公開しています。開示の例を交えて解説されているため、TCFD開示を検討している企業は、「TCFD ガイダンス 3.0(業種別ガイダンス)」も参考にしてみてください。

シナリオ分析による情報開示が推奨されている

TCFD提言の開示項目の1つ「戦略」の項目では、情報開示の際に「シナリオ分析」を用いることが推奨されています。シナリオ分析では、気候変動などの不確実な課題に対する経営戦略の持続可能性や強靱性を投資家や金融機関などへ示すことができます。

シナリオ分析とは、地球温暖化や気候変動の影響によるリスクや機会を認識して、気候変動が起きた場合の対応を想定することです。企業が選択するシナリオは「移行リスク」と「物理リスク」の2種類に大別されています。

【シナリオの分類】

移行リスク 低炭素経済への移行に関するリスクのことで政策規制や市場、技術、投資家からの評判の変化などが挙げられる
物理リスク 気候変動による物理的変化に関するリスクのことで、平均気温の上昇や降水・気象パターンの変化、海面の上昇などが挙げられる

移行リスクの具体的なシナリオには、WEO(World Energy Outlook)、SSP(Shared Socioeconomic Pathways)などがあります。また、物理リスクの具体的なシナリオには、政府間組織である気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が採⽤するRCPシナリオなどが適用可能です。

なお、シナリオ分析は気候変動関連の情報開示に取り組む企業の多くが悩む項目です。シナリオ分析の進み方については、環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候変動リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド」から確認できるため参考にしてみましょう。

TCFD提言の未対応による企業への影響

TCFD提言に未対応または対応不⾜の場合は、短〜中⻑期的に企業の持続的な経営へ影響を与える恐れがあります。気候変動リスクへの対策が不十分と判断されたり、環境分野への取り組みに関する機会損失が発生したりする可能性があるためです。

【考えられる短~中長期的な影響】

短期的なリスク ・資金調達コスト増
・環境評価やブランドの低下
・報告義務を怠ったとして訴訟を受ける可能性  など
中長期的なリスク ・情報開示ルールや証券取引所等による規制
・気候変動の不確実性に対応できないことによる、経営自体の脆弱化  など

参照:環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候変動リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド

たとえば、短期的なリスクとして、投資家や金融機関等から気候変動への対策が不十分と認識されることで、投資の引き上げやESG投資などの機会損失を招く可能性があります。

なお、TCFD提言に基づき情報開示を行うには、能力と労力が必要になります。TCFD提言未対応の企業は、環境変動リスクが与える短~中長期的な影響を考慮して対応の方針を検討してみてください。

TCFDへの賛同や企業の確認は公式サイトから行える

TCFD賛同の手続きや賛同企業の確認は、TCFDの公式サイトから行うことが可能です。TCFD開示などの取り組み状況を確認される項目はないため、気候変動リスクに関する情報開示前でも賛同することができます。

TCFDへの賛同は、TCFD が気候関連リスクへの有用なフレームワークを提供すると組織が考えていることを示します。また、賛同が承認されると、TCFD公式サイトへ企業名が掲載されます。

TCFDに賛同している日本の企業を確認したい場合は、経済産業省「日本のTCFD賛同企業・機関」からも確認が可能です。

まとめ

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)は、気候変動によるリスクについて開示するべき推奨事項を検討するために設立された組織です。FSBによって設立され、構成メンバーは、金融系企業や情報開示を行う機関から選出されています。

TCFDは、2017年6月に活動の報告として「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言(最終報告書)」を公表しています。最終報告では、企業へ気候変動関連リスクや機会に関して開示する推奨項目が示されています。

なお、TCFDの最終報告書へ賛同する企業は、TCFD公式サイトから賛同を表明することで公式サイトに企業名が掲載されます。TCFDへの賛同を検討している企業は、TCFD公式サイト「Support the TCFD(全文英語)」を確認しましょう。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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