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SHIFT事業とは?脱炭素を推進する事業の特徴や支援内容を解説

SHIFT事業とは

昨今は2050年を目標とした脱炭素の実現や、2030年度の温室効果ガスの削減目標の達成などを見据えて、国や自治体がさまざまな施策を打ち出しています。現代の企業活動においては、脱炭素についての考慮や環境問題への配慮がすべての業界に求められます。

しかし、予算の問題などもあり、なかなか具体的な行動に移れない企業も多いでしょう。そこで注目すべきなのが、「SHIFT事業」です。SHIFT事業の活用によって、脱炭素に関する具体的な目標が立てやすくなるでしょう。本記事では、SHIFT事業の基本や特徴について解説します。

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SHIFT事業とは?

shift事業とは

SHIFT事業とは、CO2の排出量削減などに関する取り組みを支援する制度です。建設業界など、CO2の排出量の削減が求められる企業などには、SHIFT事業の活用に大きなメリットがあるでしょう。以下では、SHIFT事業の詳細を解説します。

工場・事業場における先導的な脱炭素を推進する取り組み

SHIFT事業とは、工場・事業場における先導的な脱炭素を推進するための取り組みを指します。「Support for High-efficiency Installations for Facilities with Targets」の略称であり、令和3年からさまざまな事業・企業の行動を支援しています。

原則として工場・事業場を対象にした施策であり、CO2の排出量が多いけれど、削減が難しい事業の支援がSHIFT事業の役割となっています。建設業など工場・事業場で各種事業を展開する業界において、SHIFT事業について詳しく把握しておくことは事業活動に有益といえるでしょう。

各種事業に対して補助金による支援が受けられる

SHIFT事業は工場・事業場における各種事業に対して、補助金による支援を行っています。CO2の排出量を削減したり、脱炭素につながる取り組みに力を入れたりすることで、規定の補助金が支給されます。補助金を得るには条件を満たし、そのうえで申請などを行う必要があります。

そのためCO2の削減や脱炭素を進めるにあたって、同時にSHIFT事業の活用方法を把握しておくことが望ましいでしょう。

ASSET事業との違い

SHIFT事業が開始される令和3年までは、「ASSET事業」と呼ばれる制度が実施されていました。ASSET事業は、CO2の排出量増加が顕著である業務部門と最大排出部門の産業部門で、排出量の大幅削減を実現する取り組みを支援する制度です。

先進的な設備の導入を支援したり、費用効率性の向上を促したりする仕組みの考案、今よりも排出量の削減に力を入れる事業者の裾野拡大などが目的とされていました。具体的にはL2-Tech認証製品の導入や運用改善などによって、CO2削減目標を設定・達成した企業に費用の一部を補助するなどの支援を行っていました。

ASSET事業は令和2年に終了し、その後SHIFT事業としてその目的や精神は受け継がれています。SHIFT事業はASSET事業と異なり、削減量や削減率などを重視する施策です。ASSET事業では補助金の費用対効果に注目し、少ない補助金で高い効果を出すことを目指していました。

SHIFT事業では費用対効果だけでなく、CO2の削減量や削減率についても注目し、将来につなげることが目標として掲げられています。ASSET事業の補助金を得るには結果的にL2-Tech認証製品を導入する必要がありましたが、SHIFT事業ではその条件が削除されています。

そのため企業は自社に最適な環境・設備を導入し、環境について考えられるようになっています。

SHIFT事業の実施期間

SHIFT事業は2024年時点で、令和3〜7年での実施を予定しています。予算額や事業内容の詳細などは毎年変更されているため、いつ制度を利用するにしても最新情報の把握が必要です。

ASSET事業の終了後にそのままSHIFT事業に移行したことを考えると、令和7年度でSHIFT事業が終わったとしても、新しい制度が始まる可能性があります。そのため令和7年度までにSHIFT事業を活用しつつ、その後はまた新しい制度の利用を検討することがポイントになるでしょう。

SHIFT事業の目的とは?

SHIFT事業の目的

SHIFT事業の実施には、さまざまな目的があると考えられます。SHIFT事業を活用するのならその目的や実施する理由を把握し、具体的なプランを構築するのもポイントです。以下では、SHIFT事業が行われる主な目的について考えていきます。

工場や事業場の脱炭素を考えるきっかけをつくる

SHIFT事業は、工場や事業場といったCO2の排出量削減が課題となっている現場において、脱炭素などについて真剣に考えるきっかけをつくることも目的の1つだと考えられます。建設業なども含めて、事業そのもので大量のCO2の排出が余儀なくされる場合、問題意識があっても具体的な対策にまで踏み出せないケースも多いです。

そこでSHIFT事業をきっかけに脱炭素の情報を提供し、事業の改善や効率化、環境問題への配慮の方法などを改めて考えてもらうことが目的になり得るでしょう。

具体的な目標を立てて実現に向かう体制を構築する

SHIFT事業は、各企業が具体的な目標を立ててCO2削減などの目標を達成する体制の構築を促す目的もあると考えられます。CO2の排出量増加が環境問題に大きな影響を与えていることは、周知の事実です。当然事業の当事者である企業・担当者も、そのことを理解したうえで今後の対策を考えていることでしょう。

しかし、具体的な方針が固まらなかったり、コスト面で問題が発生したりするケースも多いです。そこでSHIFT事業が問題解決を促し、具体的な施策の実施につなげるサポートを行うと考えられます。

工場・事業場における脱炭素のロールモデルとなる取り組みを創出する

SHIFT事業は、工場・事業場における脱炭素の「ロールモデル」となる取り組みを創出することも1つの目標としています。行動の規範となるロールモデルが事例として創出されれば、各企業がその内容を参考に自社の環境改善などを進められるでしょう。

SHIFT事業をきっかけにして生まれた知見を広く公表して横展開を図り、社会全体に役立てていくことも目的になると想定されます。そのため建設業界などは、SHIFT事業で生まれたさまざまなアイデアや具体的な事例を確認し、参考にしていくことも重要です。

工場・事業場で働く人たちの意識を変革する

SHIFT事業は、工場・事業場で働く人たちの意識を変革する役割もあると考えられます。経営側ではなく、実際に工場や事業場で働いている人たちのなかにも、環境問題に関心がある人は多いです。しかし、日々の業務に追われて問題を直視する暇がなく、なかなか具体的な行動に移れないケースもあるでしょう。

そこで企業が積極的にSHIFT事業を活用し、環境を変えて多くの従業員に現代の問題を考えてもらうことも重要視されます。

カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現を近づける

SHIFT事業は、カーボンニュートラルおよび脱炭素社会の実現を近づけるための重要な施策です。2050年のカーボンニュートラルの実現や、2030年度に2013年度と比較して温室効果ガスを50%削減するといった目標を達成するには、現段階から成果につながる取り組みを多数実施していく必要があります。

そういった遠くない未来を見据えて、多くの企業に自発的に動いてもらう方法の1つとして、SHIFT事業が展開されていると考えられるでしょう。

SHIFT事業の事業内容

SHIFT事業の事業内容

引用:環境省『脱炭素経営によるバリューチェーン全体での脱炭素化の潮流に着実に対応するための工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)』

SHIFT事業を活用するには、具体的な事業内容を把握することが重要です。どのような支援が受けられるのか、どんな事業を対象としているのかを知ることが、SHIFT事業を有効利用する最初のステップです。以下では、SHIFT事業の基本的な事業内容を解説します。

CO2削減計画策定支援

「CO2削減計画策定支援」とは、「年間CO2排出量50t以上3000t未満の工場・事業場を保有する中小企業などに対し、CO2排出量削減余地の診断およびCO2削減計画の策定を支援する事業」です。CO2削減余地診断についての経験が豊富な「支援機関」が、工場・事業場の現状と課題を整理して対策の提案を行うことが特徴です。

そのほか、CO2削減目標と実施方法を提示する「CO2削減計画」の策定も支援可能です。補助率は3/4、補助上限は100万円までとなっています。一方で、CO2排出量を「見える化するDXシステム」を使って改善を行うDX型計画に対しては、補助上限が200万円となります。

省CO2型設備更新支援

「省CO2型設備更新支援」は、「CO2削減計画」に基づいて設備の更新などを行う際に支援をする制度です。「標準事業」「大規模電化・燃料転換事業」「中小企業事業」の3種類があり、それぞれ以下の補助金額が支援されます。

・標準事業:1/3、補助上限1億円
・ 大規模電化・燃料転換事業:1/3、補助上限5億円
・ 中小企業事業:CO2削減量比例型補助、補助上限0.5億円

企業間連携先進モデル支援

「企業間連携先進モデル支援」とは、Scope3(事業者自らが排出している温室効果ガス)の削減に取り組む企業が主導し、サプライヤーなどの工場・事業場のCO2削減に向けた設備更新に関して、補助金を交付することが主な内容です。補助率は1/3・1/2となり、補助全体の上限は5億円です。

補助事業の運営支援

「補助事業の運営支援」を委託するかたちでも、SHIFT事業の対象になります。CO2排出量の管理や取引システムの提供、実施した結果の把握・分析を行うことが基本です。

SHIFT事業を活用するポイント・注意点

SHIFT事業を活用するポイント・注意点

SHIFT事業を活用する際には、いくつか把握しておくとよいポイントや注意点があります。以下では、SHIFT事業を申請する前に確認しておくべき点を解説します。

SHIFT事業に関する情報をこまめに収集する

SHIFT事業の活用を検討するのなら、関連情報をこまめに収集するのがポイントです。SHIFT事業は一見複雑な内容に感じられるため、スムーズな申請が難しくなる可能性があります。早めの対応を心がけましょう。

公募期間や補助金の上限などを確認しておく

SHIFT事業の利用時には、公募期間や補助金の上限といった数値を確認しておくのも重要です。公募締切が過ぎてしまえば、条件を満たせても補助金の支給を受けられません。また、各事業には補助金の上限額が決まっているため、かけるコストを事前に計算して補助される金額を明確に計算しておくことも大切です。

不明点は早めに問い合わせる

SHIFT事業についてわからないことがある場合には、そのままにせず問い合わせを行うことがおすすめです。環境省は、SHIFT事業についての問い合わせ窓口を設置しています。環境省の「​​地球環境局 地球温暖化対策課 地球温暖化対策事業室」に連絡することで、不明点もわかりやすく説明してもらえるでしょう。

セミナーなどを利用して理解を深める

SHIFT事業の利用を検討するのなら、関連するセミナーなどに参加して理解を深めることも重要です。SHIFT事業や環境問題に関する専門家の意見を聞けるため、より事業の問題を考えやすくなります。環境省も説明会を積極的に開催しているため、スケジュールを確認して参加することもポイントです。

SHIFT事業の事例

SHIFT事業を実際に活用した事例は、多数公開されています。内容を参考にすることで、具体的な施策を考えやすくなるでしょう。以下では、令和4年度におけるSHIFT事業の事例を紹介します。

吸収式冷凍機からマルチエアコンへ更新した事例

現有の空調設備が30年経過しており、経年劣化に伴う故障も増加している。また吸収式冷凍機は、蒸気ボイラーにA重油を使用しているためCO2排出量が多くなっている。
吸収式冷凍機から高効率なヒートポンプに更新するとともに、高効率なパッケージエアコンを導入することで、熱効率向上による燃料使用量の削減やCO2排出量の削減を目指す。

期待する効果
エネルギーコスト削減額 約 430万円 / 年

CO2削減以外の効果
・きめ細かな温度設定が可能になる
・冷暖切り替えの工数が削減できる
・メンテナンス費用が削減できる

引用:令和4年度SHIFT事業事例集

給湯・加温システムのハイブリッド化による事例

給湯機、空調等のエネルギー効率が悪く、更新時期が過ぎているが、投資金額が大きく自費では難しい。
①高効率なマルチエアコン、②高効率なヒートポンプ給湯機等を更新することで、電気使用量の削減や契約電力料金の削減を目指す。また環境管理の向上を図る。

期待する効果
エネルギーコスト削減額 約 400万円 / 年
投資回収年数(補助あり) 約 21年
投資回収年数(補助なし) 約 30年

CO2削減以外の効果
・施設の故障リスク回避が可能となる
・施設の快適性が向上する
・全体的にエネルギーコストの低減に繋がる

引用:令和4年度SHIFT事業事例集

高周波誘導炉への更新で周辺環境を向上した事例

キュポラが更新時期に達しており、コークス使用によるCO2排出量が多量。また、騒音、残渣、臭気など工場周辺の環境に悪化影響。
キュポラから高周波誘導炉に更新することで、コークスから電気への燃料転換による燃料使用量の削減とCO2排出量の削減を目指す。

期待する効果
エネルギーコスト削減額 約 3,955万円 / 年
投資回収年数(補助あり) 約 5年
投資回収年数(補助なし) 約 8年

CO2削減以外の効果
・メンテナンス負荷が低減できる
・炉のメンテナンス手順や体制の改善により、新設高周波誘導炉の稼働日数の向上が図られる
・高周波誘導炉を導入することで騒音、残渣、臭気などの工場周辺環境の改善が図られる

引用:令和4年度SHIFT事業事例集

まとめ

SHIFT事業は工場・事業場における先導的な脱炭素を推進する取り組みとして、広く活用されています。すでに令和3年から開始している制度であるため、多くの事例を参考にして具体的な行動を模索できるでしょう。この機会にSHIFT事業の詳細を確認し、申請に必要な準備を進めてみてはいかがでしょうか。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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