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時計 2023/12/27 アップデート 2024/3/1

再生可能エネルギー導入における課題と解決策を解説

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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世界経済が発展を続けているなか、地球温暖化をはじめとした環境問題への懸念から脱炭素を推進しようとする意識が高まっています。脱炭素とは、特に地球温暖化の原因となる温室効果ガス削減につながるとされる考え方です。現代では石炭や石油といった化石燃料からエネルギーを得る方法が未だに主流ですが、この方法は温室効果ガスの1つである二酸化炭素を大量に排出します。そのため、化石燃料を燃焼させずにエネルギーを取り出せる再生可能エネルギーに注目が集まっています。

水や太陽光といった再生可能資源からであれば、半永久的にエネルギーを得られるため、脱炭素への取り込みの一環として再生可能エネルギーの導入を検討している企業も多いのではないでしょうか?

当記事では再生可能エネルギーの導入における課題と解決策に関して解説します。日本国内における再生可能エネルギーの普及率の見通しに関しても説明するので、ぜひ参考にしてください。

日本の発電量に占める再生可能エネルギーの割合は20%以下

日本では再生可能エネルギーの普及率は、化石燃料による発電と比較して高いとはいえない状態です。

経済産業省の資料によると2020年時点で日本の発電量に占める再生可能エネルギーの割合は、19.8%でした。2011年度の10.4%から引き上がっているものの、地球温暖化の原因となっている温室効果ガスを排出する石炭や天然ガス、石油による発電が76.4%を占めています。

再生可能エネルギーの普及が低迷する背景には、日本特有の風土があります。太陽光発電など日照が必要となる再生可能エネルギーに対する日照時間の短さや、再生可能エネルギーを利用できる土地が十分に確保できないなど、再生可能エネルギー施設を設置するための条件を満たしていないからです。

再生可能エネルギーの普及率を上げるためには、日本特有の風土に対応できる技術開発を行うとともに、導入におけるさまざまな課題を解決する必要があります。

再生可能エネルギー導入における課題と解決策

再生可能エネルギーの導入における課題は複数あります。これらの課題のなかには、電力会社などエネルギーを供給する側だけでなく、エネルギーを活用する需要側にとっての課題もあり、それぞれに対する解決策も検討されている状況です。

【再生可能エネルギー導入における課題と解決策】

  • 導入および発電コスト
  • エネルギー密度
  • 安定的な発電
  • 調整力の確保 

導入および発電コスト

再生可能エネルギーは導入時の発電電力量当たりの建設費の高さが課題となる場合があります。電力会社など電力を供給する側の解決策としては、技術開発によるコストダウンが挙げられます。

電気として使用する需要側に対するコストの解決策として、「FIT法改正」による入札制度への移行が行われています。FIT法とは、電力会社に対して、再生可能エネルギーで発電した電気を国が決めた価格で買い取るよう義務づけた制度のことで、これにより市場価格に左右されることなく一定金額での電力買い取りが保証されます。

また、FITは供給側が利益を得ます。現行では需要側から再エネ賦課金として集金したお金を供給側にFITとして支払ってバランスをとっています。

このように、再生可能エネルギーの導入や発電におけるコストに関する課題は、供給側は技術開発の発展、需要側の再エネ割賦金によって解決が見込まれます。

参照:資源エネルギー庁 「改正FIT法による制度改正について

エネルギー密度

再生可能エネルギーは、単位面積や単位重量当たりの発電エネルギー量を示す「エネルギー密度」が低く、大きな設備を設置できる広大な面積が必要となることも課題となります。日本は山林が多く、再生可能エネルギーを利用できる土地が狭いからです。

この解決策として、たとえば、太陽光発電システムの場合は、建物の屋根を設備の設置場所にする方法が拡大しています。また、耕作放棄地を活用したり、耕作を継続しながら農作地を太陽光発電の設置場所として活用したりする方法もみられます。

このように、再生可能エネルギーのエネルギー密度が低く、設備を設置するための土地が必要な課題に対しては、発電を行える環境の整備を行うことが解決策となります。

安定的な発電量

再生可能エネルギーの導入においては安定的な発電量の確保も課題として挙げられます。再生可能エネルギーは自然由来のエネルギーを使用するため、日照時間や天候に左右されるからです。

再生可能エネルギーによる安定的な発電量を確保するための解決策として、蓄電池を活用する方法があります。蓄電池とは、電気を貯めておく装置のことで、これにより発電量と電力の使用量のバランスを保つことが可能になります。

また、太陽光だけでなく洋上風力発電を活用した電源の導入や、消費電力量をコントロールする「デマンドコントロール」により発電量を安定させる策もあります。

このように、再生可能エネルギーによる発電量の安定は、さまざまな技術開発やその活用により解決できるといえるでしょう。

調整力の確保

再生可能エネルギーを導入する場合、調整力の確保も課題となります。再生可能エネルギーにおける調整力とは、再生可能エネルギーを主力電源として活用できるよう、不安定な発電量を安定的に活用できるようにすることです。

再生可能エネルギーによる発電は、天候や季節に左右される種類のものが多いため、電力の需要と供給のバランスを保つのが難点となっています。また、送電網や配電網として発電所がつくった電気を流す「系統」は容量が決まっていることも、調整力の確保が課題となっている背景にあります。

調整力の確保に向けた解決策として、充分な送電容量の確保を行うため、地域間やエリア内において系統増強を図る「電源接続案件募集プロセス」が広域で導入されています。さらに発電量と電力の使用量のバランスを保ちやすい蓄電池や、環境負荷が低い水素の活用なども調整力の確保に対する解決策となります。

電源接続案件募集プロセスとは、電設備等を電力系統に連系するための大規模な送電容量対策工事に際して必要となる工事費負担金を、事業者などから希望によって、近隣の電源接続案件の可能性を募り、複数の電気供給事業者から工事費負担金を共同負担して系統増強を行う手続きのことです。

なお、水素のエネルギー源としてのメリットなどに関して知りたい方は「水素と脱炭素の関連性は?エネルギー源としてのメリット・デメリットも解説」を参考にしてください。

再生可能エネルギー導入におけるメリット

企業が再生可能エネルギーを導入することによって、環境問題への対策を行えるだけでなく、国際イニシアチブへの加入や投資における評価など、複数のメリットがあります。 

【再生可能エネルギー導入におけるメリット】

  1. 温室効果ガスを排出しない
  2. RE100など国際的イニシアチブ加盟につながる
  3. ESG投資などの評価につながる

温室効果ガスを排出しない

再生可能エネルギーは、CO2をはじめとする温室効果ガスを排出しないエネルギー源として活用できる点がメリットです。再生可能エネルギーは、太陽光や風力など枯渇しない、自然のエネルギーを活用するからです。

また、再生可能エネルギーは温室効果ガスを排出しないため、脱炭素を進めるうえでも導入が推進されています。このような背景から、再生可能エネルギーは、化石燃料に依存している日本において、脱炭素への取り組みに欠かせないエネルギー源として国をあげて導入が推進されています。

参照:経済産業省「令和3年度(2021年度)エネルギー需給実績を取りまとめました(確報) 

RE100など国際的イニシアチブ加盟につながる

再生可能エネルギーを導入し、事業運営を100%再生可能エネルギーで行うことを目指す企業は、RE100への加盟が可能になります。RE100とは、「Renewable Energy 100%」の略称で、イギリスの国際環境NGO「TCG (The Climate Group)」によって設立された国際的なイニシアチブです。

RE100は、事業に必要なエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄うことを目指しており、加盟条件として「年間の消費電力量が50GWh以上」「自社事業の100%再生エネルギー化の期限設定および公表」「支配率50%以上の子会社を含めた再生可能エネルギー化」などが設定されています。

RE100への加盟国は、世界で419社、日本では 83 社(2023年10月現在)です。

このRE100に加盟することによって、環境問題への取り組みが評価され、投資を受ける際に有利になる可能性が高まります。また、取引先や提携先に対して脱炭素を求める企業もあるため、ビジネスチャンスをつかむ上でもRE100への加盟は有益であるといえるでしょう。

参照:The Climate Group「RE100 Members | RE100」

ESG投資などの評価につながる

再生可能エネルギーを導入することによって、環境に配慮した経営を行う企業として、ESG投資などの評価につながる可能性が高まります。ESG投資とは、投資先の価値を測る際に売上や利益に加え、環境・社会・企業統制といった要素を考慮する投資のことです。

再生可能エネルギーは、地球温暖化の原因となっている温室効果ガスを排出しないエネルギー源です。そのため、再生可能エネルギーを導入する企業は、環境問題に取り組み、脱炭素を目指す企業と見なされます。

このように、再生可能エネルギーを導入することによって、投資機関やステークホルダーからの信頼獲得や企業価値が向上する可能性が高まり、ESG投資などの評価につながるでしょう。

再生可能エネルギーの今後

日本では諸外国と比較して再生可能エネルギーの普及率が低い状態にありますが、今後導入が拡大していくことが予想されます。2050年「カーボンニュートラル実現」に向け、政府が2030年度までに再生可能エネルギーを36〜38%に引き上げる目標を掲げているためです。

【再生エネルギーの種類別導入目標】

種類 導入目標
太陽光 14-16%
風力 5%
水力 11%
地熱 1%
バイオマス 5%

 しかし、経済産業省の資料によると、日本はエネルギー供給源のうち80%程度を化石燃料に頼っている状況です。さらに、2030年度も40%程度の発電量を化石燃料で賄うことが見込まれています。

そのため、政府は再生可能エネルギーをはじめ、水素など分野ごとに、投資を後押しするための規制改革、早期の市場創出、産業力強化対策等環境整備の方策やエネルギー転換などに必要となる新たな社会システムやインフラ整備に関して議論しています。

まとめ

日本では再生可能エネルギーの普及率は20%以下となっており、化石燃料による発電と比較して高いとはいえない状態です。低迷する再生可能エネルギーの普及率を上げるためには、日本特有の風土に対応できるような技術開発を行うとともに、導入におけるさまざまな課題を解決する必要があります。

再生可能エネルギーの導入における課題として「導入および発電コスト」「エネルギー密度」「安定的な発電」「調整力の確保」など複数ありますが、いずれも技術開発や水素など他のエネルギー源との活用が解決策として挙げられます。

日本では、再生可能エネルギーの導入における課題を抱えており、諸外国と比較して普及率が低い状態にあります。しかし、2050年「カーボンニュートラル実現」に向け、政府が2030年度までに再生可能エネルギーを36〜38%に引き上げる目標を掲げているため、今後導入が拡大していくことが予想されており、課題の解決が求められています。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO₂排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。

また、建設会社からCO₂排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるディベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO₂排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは、建設業界のCO₂対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業界に特化したCO₂排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

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