基礎情報
2024/4/20 2024/10/9
TNFDで推奨される情報開示とは?4つの基本項目と評価プロセスを解説
環境に関する企業の積極的な取り組みが欠かせない現代において、TNFDのような基本的な指針を示すフレームワークを知ることは重要です。TNFDを軸に情報開示に必要な準備を進めることが出来れば、適切な環境対策が可能となるでしょう。本記事ではTNFDで推奨される情報開示の項目について解説します。
TNFDの基本について
TNFDでは自然環境の変化や生物の多様性に関する視点から、積極的に開示すべき情報を提示しています。このTNDFによって推奨されている情報に合わせて開示の準備をすることが企業にとって取り組みを進める上でのはじめの一歩になるでしょう。以下では、TNFDの基本について解説します。
TNFDの意味とは?
TNFDとは、「Taskforce on Nature-related Financial Disclosures」の略称です。日本語で「自然関連財務情報開示タスクフォース」と訳されており、自然環境や生物の多様性に関する情報の開示などを推奨する組織を意味します。
TNFDは情報開示の軸になるフレームワークを提供しており、その内容に沿った情報を整理して公開することで、その企業が環境問題への課題と解決法を考えていることをアピールできます。また、TNDFのフレームワークに従い情報整理を行うことは自社の状況を正確に把握することにもつながるため、フレームワークを中心に事業内容やそれを取り巻く現状を確認してみることも大切です。
TNFDが注目されている背景
TNFDは環境変化や生物の多様性に対して企業がどのように関係しているのかを考えることが出来るフレームワークです。昨今は環境問題が深刻化していて、気候変動や自然災害などによって多くの実害が出ています。環境問題への対策を行わないと将来的に問題が悪化する可能性があるため、いますぐに行動に移す必要に迫られています。
特に事業活動によりで環境汚染などを引き起こす可能性のある企業は、率先してTNFDなどを軸にした情報開示に努めることが推奨されています。企業は商品の企画から実際に販売する一連のプロセスでさまざまな活動を実施します。そのプロセスの中には直接・間接的に自然環境に悪影響を与える活動もあるため、改善を進めることが求められています。
TNFDの情報開示が必要とされる理由
TNFDの情報開示は投資家や金融機関にとって重要です。昨今はESG投資などをはじめとした環境活動への取り組みを評価する投資方法が広まっています。財務状況などの数値だけでなく、どれだけ自然環境を意識した取り組みを行っているのかが投資の判断材料となるケースも珍しくありません。
TNFDのフレームワークは、そういった情報をスムーズに投資家や金融機関に伝えられる手法として有効です。企業はTNFDなど環境への取り組みを明確にするフレームワークを活用して情報開示に必要な準備を進めることが重要です。
TNFDで開示が推奨されている項目
TNFDには「ガバナンス」「戦略」「リスクとインパクト管理」「指標と目標」と言う4つの項目があり、これらの項目について開示が推奨されています。これらの4つの項目を軸にしてそれぞれの詳細を整理し、開示に向けた準備を進めます。以下では、TNFDによって推奨される開示項目を解説します。
TNFDの開示項目1.ガバナンス
TNFDにおける「ガバナンス」では企業の自然への依存や影響を考慮し、自然環境の変化によるリスク・機会の組織ガバナンスの開示を目指します。企業がどのようにして自然環境や生物の多様性に関する取り組みを管理しているのかなどを明確にして開示します。これと並行して取締役会の監視方法、経営者の役割などの説明も実施します。
また、先住民・地域コミュニティ・ステークホルダーなどに関する人権方針やエンゲージメント活動もガバナンスで開示します。
TNFDの開示項目2.戦略
TNFDの「戦略」では組織のビジネスモデルや財務計画が環境問題や生物の多様性においてどのように影響するのか開示します。このため、事業におけるリスクと機会を明確にし、それに対応する施策や取り組みの実態も把握する必要があります。
短期・中期・長期それぞれの影響を考え、各タイミングにおいて適切な対策を構築するのもポイントです。組織戦略におけるレジリエンスを明確にし、あらゆるシナリオを想定している点を強調することも必要です。また、事業組織の上流・下流・投融資先における資産や活動している場所も開示します。
TNFDの開示項目3.リスクとインパクト管理
TNFDの「リスクとインパクト管理」とは環境問題におけるリスク・機会を特定・評価・優先順位付けする方法、および監視における組織のプロセスを開示します。この中では直接管轄している事業と、上流・下流のバリューチェーンにおける自然活動の依存と影響の関係性を特定・評価・優先順位付けするプロセスを説明します。
さらに、管理方法のプロセスや、組織全体のリスク管理プロセスの情報提供についても説明します。
TNFDの開示項目4.指標と目標
TNFDでの「指標と目標」とは環境に対する重要な依存や影響関係及びリスク・機会を評価かつ管理する際に使用する指標と目標の開示です。
この項目では、組織が戦略やリスクマネジメントのプロセスに則って自然関連のリスクと機会を評価しているかが重要な指標になります。
また、環境への依存性と自然に影響している事業内容を評価するために使用している指標も情報開示すべきと推奨されています。同時に、自然環境への依存性・影響のリスクと機会を管理するための目標とゴール、目標に対するパフォーマンスも説明対象になっています。
TNFDとTCFDの情報開示項目について
TCFDとは「Task force on Climate-related Financial Disclosures」の略称であり、日本語で「気候関連財務情報開示タスクフォース」と訳されています。
TCFDは環境のなかでも気候変動における影響への取り組みを情報として開示することを推奨する組織・フレームワークです。
TCFDが気候変動に対する取り組みとしてTNFDより先に機能していましたが、それだけでは賄いきれない部分があり、それを補填する形でTNFDが誕生した経緯があります。そのためTNFDとTCFDの情報開示項目は、似ている内容になっています。
TCFDの情報開示項目は、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つとなっており、先に紹介したTNFDの開示項目と基本は同じものだと言えるでしょう。しかし、TNFDとTCFDの両方を開示することで、企業は自然環境の保護のみならず気候変動対策も行っていることを明確にできます。そのため企業はTNFDだけでなく、TCFDについてもきちんと調べておくことが推奨されています。
TNFDの評価プロセス「LEAPアプローチ」について
TNFDにおける情報開示までを評価する際のプロセスには、「LEAPアプローチ」と呼ばれる方法が活用されています。「LEAPアプローチ」はフレームワークの1種であり、利用することでスムーズにTNFDの情報開示プロセスを評価できます。以下では、この「LEAPアプローチ」の基本を解説します。
TNFDの評価プロセスとは?
TNFDの評価プロセスとは、その名の通りTNFDを軸にした情報開示を実施する際のプロセスを客観的に評価することを意味します。評価プロセスをきちんと行うことで、裏付けの取れたデータを情報として開示できます。TNFDの評価プロセスでは「LEAPアプローチ」のフレームワークが使用されます。
LEAPアプローチは、「Locate(発見)」「Evaluate(診断)」「Assess(評価)」「Prepare(準備)」の4つの項目の頭文字を取った造語です。TNFDではこのLEAPアプローチをリスク管理プロセスに取り込む実践的なガイダンスとして公表しました。LEAPアプローチを実施する際には「スコーピング」と呼ばれる方法が実施されています。この「スコーピング」によって、LEAPアプローチにおける各フェーズの具体的な分析が可能です。
スコーピングでは自社の組織活動にどのような要素があるかを確認し、財務・時的なデータを軸に必要なリソースの割り当てを行います。
フェーズ1.Locate(発見)
LEAPアプローチの最初のフェーズでは「Locate(発見)」を実行します。自然環境と組織の接点を確認し、接点を通して重要なセクターや事業を明確にします。この「Locate(発見)」では以下の4つの段階を軸に、具体的な情報を把握していきます。
L1:ビジネスモデルとバリューチェーンの広がり
L2:依存とインパクトのスクリーニング
L3:自然との接点
L4:脆弱性の高い場所との接点
フェーズ2.Evaluate(診断)
「Evaluate(診断)」の段階では、先の「Locate(発見)」発見で特定した重要なセクターや事業における組織からの影響や依存関係の特定・測定・評価・を進めます。こちらも以下の4つの段階ごとにやるべきことが分割されています。
E1:環境資産・生態系サービスの影響要因の特定
E2:依存と影響の特定
E3:依存と影響の測定
E4:依存と影響の評価
フェーズ3.Assess(評価)
「Assess(評価)」とは、自社におけるリスク・機会の特定に伴い、測定・評価・優先順位付けなどを行うフェーズです。自社にとって自然に対するリスク・機会がどれだけ重要なものになるのかを、さまざまな視点から確認する必要があります。以下では「Assess(評価)」における手法を紹介します。
A1:リスク・機会の特定
A2:既存リスクの軽減と、リスク・機会管理の調整
A3:リスク・機会の測定と優先順位付け
A4:リスク・機会の重要性の評価
フェーズ4.Prepare(準備)
最後の「Prepare(準備)」のフェーズでは、具合的な戦略の策定を実施します。この「Prepare(準備)」には策定内容や施策における実際のパフォーマンスを測定、報告し、て公表するまでの流れが含まれます。
「Prepare(準備)」では、以下の要素がポイントになります。
P1:戦略とリソース割り当て計画
P2:目標設定とパフォーマンス管理
P3:報告
P4:公表
こまでの4つのフェーズを繰り返しレビューしていくことが、LEAPアプローチの基本となります。
TNFDの情報開示を進める際のポイント
TNFDで推奨される情報開示を進めるには、いくつかのポイントがあります。事前にポイントを踏まえて準備をしておくことで行動すべき内容や目的が見つけやすくなるでしょう。以下では、TNFDの情報開示を進める際のポイントを解説します。
TNFDのフレームワークを段階的に理解する
TNFDの情報開示に必要な準備をするためにはまずはフレームワークを段階的に理解することがポイントです。いきなり情報開示というゴールを目指して始めると何を優先すべきなのか判断できず、適切な調査やデータ収集が難しくなります。まずは先に紹介した項目ごとに、1つずつ問題を確認・対処することがポイントです。
そのためにもTNFDへの理解を深めた専門のチームを作るなど、社内の環境整備を進めることも重要となります。
TNFDとTCFDの両方に備える
TNFDだけでなく、TCFDへの理解も深めて両方に備えることもポイントです。TNFDとTCFDは先に解説した通り、非常に関係性が深いです。どちらか一方だけに着手するのではなく、TNFDとTCFDの両方を把握し、それぞれのフレームワークに合わせて情報を開示することが有益な結果を生み出すでしょう。
専門家の意見や事例を参考にする
TNFDによる情報開示を行う際には専門家の意見や過去の事例を参考にするのも1つの方法です。TNFDは自然環境や生物の多様性といった専門的な要素を扱います。このため、その分野における見識が浅いと問題を特定できず、的外れの情報開示に終わってしまう可能性もあるでしょう。
TNFDの情報開示を実現するメリット
TNFDを軸にした情報開示を実践することには、さまざまなメリットがあります。どのようなメリットがあるのかを把握できれば、対応する従業員も何をすべきか明確になりモチベーションを高められます。以下では、TNFDの情報開示によるメリットを解説します。
ステークホルダーに必要な情報を届けられる
TNFDの情報開示はステークホルダーに必要な情報を届けられるメリットがあります。ESG投資などを検討している投資家はTNFDに含まれる項目の情報を知りたがっている可能性が高いです。TNFDとTCFDによる情報開示を徹底することで、スムーズに重要な情報の提供が出来、その後の投資などに繋がります。
自社の将来についてTNFDの基準から分析できる
TNFDの情報開示プロセスを経由することで、環境に関するTNFDの基準に基づいて自社の将来を分析することが可能です。TNFDで確認する各項目で集めた情報は、自社を構成する因子でもあります。それらを分析することで既存事業の改善や新規事業の創出など、さまざまなアクションに活用できるでしょう。
まとめ
TNFDでは、「ガバナンス」「戦略」「リスクとインパクト管理」「指標と目標」といった4つの項目が情報開示の内容として推奨されています。それぞれの項目を確認し、必要な情報を整理して開示の準備をすることがこれからの企業活動において重要視されるでしょう。
TNFDの評価プロセスである「LEAPアプローチ」についての理解も具体的な行動を起こすうえでポイントになります。この機会にTNFDおよびLEAPアプローチなどのフレームワークを確認し、具体的な行動に移ってみてはいかがでしょうか。
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この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
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