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時計 2024/3/3 アップデート 2024/10/9

CDPとはどんな組織?特徴や活動内容について解説

CDPとはどんな組織?

「CDP」は、環境に対する情報開示を促す組織で、企業や自治体へ大きな影響力を与えています。このCDPが提供する方法で情報開示を行う企業が増えています。

本記事では、CDPの特徴や具体的な活動内容、企業にとって情報開示を行うメリット・デメリットを解説します。

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CDPとは何か?

cdpとは

CDPについての理解を深めるには、まずCDPとはどのような組織でどんな活動をしているか知ることが重要です。以下では、CDPの基本的な概要や特徴を解説します。

CDPはイギリスに拠点を持つNGO

CDPは、イギリスで発足したNGOです。国際的な環境非営利団体として2000年に誕生し、最初は「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(Carbon Disclosure Project)」と呼ばれていました。日本国内でも2005年から「CDPジャパン」が活動を開始し、環境に関するさまざまな活動を行っています。

世界中の企業に対して環境活動に関する情報収集を行い、分析や評価を通して機関投資家向けに情報開示をしています。世界規模で環境について考えるきっかけを作りつつ、企業と投資家を結びつける存在として注目を集めています。

CDPは「人々と地球にとって、健全で豊かな経済を保つこと」が目的

CDPの主な活動目的は、「人々と地球にとって、健全で豊かな経済を保つこと」です。人々と地球が共存し、経済的にも豊かな状態をキープするための活動が、CDPの存在意義となります。CDPはこの目的達成に向けて、投資家・企業・自治体などに働きかけを行っています。

また、CDPは環境に影響する情報開示を促し、積極的な行動を起こすきっかけの提供をしています。CDPが収集したさまざまな情報は、世界の投資家・企業・政策決定者に共有され、意思決定に影響を与えています。

CDPの役割

CDPの役割

CDPは世界が環境問題を考えなければならない現代において、重要な役割を担っており、環境対策の成果を出すことを期待されています。以下では、CDPが担う重要な役割について解説します。

企業に質問書を送付する

CDPは投資家などの要請を集約して、企業に対して環境情報の開示を促しています。この際にCDPは対象の企業に向けて「質問書」を送付します。この質問書を使ってヒアリングを実施し、環境に与える影響に関しての具体的な情報開示を促進するのがCDPの主な活動です。

先の解説通りCDPは日本で2005年から活動を開始し、2022年には東京証券取引所のプライム市場上場企業の1,841社全社に対して、質問書による調査要請を実施しています。質問書の内容は気候変動・水セキュリティ・森林の3つの項目から構成されており、それぞれの回答内容を収集して分析及び評価します。

回答の内容によってA・A-・B・B-・C・C-・D・D-・Fの9段階で評価し、「CDPスコア」として格付けを行います。無回答だった場合には、最低ランクのFが付けられます。CDPの質問書は、その回答を元にして「情報開示」「認識」「マネジメント」「リーダーシップ」のカテゴリーに分類し、それぞれで評価を行います。

高い評価を得ることができれば、環境問題に取り組む企業として社外にアピールできるため、積極的な情報開示を行う企業が増えています。

中小企業も対象となる

CDPの質問書は、大企業に限らず中小企業も対象になっており、大手企業と取引のあるサプライヤーに対しても積極的に情報開示を求める「CDPサプライチェーンプログラム」を進めています。このプログラムにより、中小企業にもCDPの質問書が送付される可能性があります。質問書を送付された中小企業は、質問書への正確な回答が求められます。

CDPは「CDPサプライチェーンプログラム」を通じて、原料の調達・開発・製造・出荷といった、サプライチェーンで発生する環境負荷を可視化することを目指しています。

日本の環境省も2019年に「CDPサプライチェーンプログラム」への参加を表明しているため、国内の中小企業も質問書が送られてきても慌てないように、CDPについて理解を深めておく必要があります。

企業から取引先への情報開示を求める仲介役になる

一般企業がCDPを通して取引先に情報開示を求めるケースもあり、CDPは必要な情報開示を促す仲介役としての役割も担います。情報開示を求める企業は「CDPサプライチェーンメンバー」と呼ばれ、日本国内では22の会社がメンバーに加盟しています。

CO2削減の問題は、単独の企業だけでは実現できません。原材料の仕入れから流通、廃棄などサプライチェーン全体を含めて考えなければ、効果的な環境問題へのアプローチは難しいのが現状です。そのため、サプライチェーン全体でCO2削減を図る目的でに、CDPを仲介した取引先への情報開示に注目が集まっています。

2021年度には、世界で1万3,000社以上の企業に加えて、1,100以上の都市・州・地域がCDPに情報開示を行いました。今後もこのような動きは活性化し、多くの情報が開示されると予想されます。

投資家が正しく評価できる環境を構築する

CDPは投資家に対して、企業の環境問題への活動内容を評価できる仕組みを提供する役割を担っています。企業は気候変動などの対策に関する、さまざまな施策を実行しています。

しかし、投資家から見ると、開示されている情報が正しいのか、グリーンウォッシュ(環境に配慮していることを偽る方法)ではないのかを判断することが難しいです。そこでCDPは企業の情報開示に積極的に介入し、投資家が正しく評価できる仕組みの構築を目指しています。

投資家に正しい情報を提示できるようになれば、ESG投資は加速し、投資により企業の業績が上がることが予想されます。それに伴って企業による環境問題への対応も進んでいくため、結果的に世界規模で環境改善の活動が進んでいくと考えられます。

環境に関する国際基準を設定する

CDPはSBT(パリ協定と整合したCO2削減を目指す国際イニシアティブ)や、RE100(企業が事業活動で使う電力を、再生可能エネルギーで100%カバーすることを目指す国際イニシアティブ)の設立・運営にも携わっています。

これによりCDPは、環境保護に関する複数の国際基準の設定を進めることになりました。環境への取り組みに対して具体的な数値化ができれば、客観的な評価が得やすくなります。そのためCDPによる国際基準の設定活動は、世界の機関投資家から高い支持を得ています。

企業がCDPに参加するメリット・理由

企業がCDPに参加するメリット・理由

企業がCDPに参加し、積極的に協力することには多くのメリットがあります。これらのメリットを把握することで、CDPを活用した事業計画が立てやすくなるでしょう。以下では、企業にとってのCDPと関わるメリットを解説します。

投資家から信頼を得られる

CDPに参加することで、企業は投資家から高い信頼を得られる場合があります。例えば環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3分野を軸に投資先を決めるESG投資では、CDPのデータが参照されます。

そのため、企業がCDPの質問書への回答を適切に行うことで、投資家に正しい情報を提示することが可能となります。昨今は企業のキャッシュフローや利益率だけをみて投資先を決めるのではなく、環境に対する具体的な行動や貢献度をみてESG投資を実施するようになりつつあります。

そのため、CDPの活動に積極的に関わり、投資家に企業価値を把握してもらうことが重要となります。

企業ブランディングを実現できる

CDPへの参加をきっかけに環境活動やこれまでの貢献度を可視化できれば、企業ブランディングにつながります。現代社会において、企業が環境に対してどのような行動を取っているのか、どんな考え・計画を持っているのかは重要な情報として扱われます。

CDPを通してそれらの情報を開示することで自社のアピールになり、ブランド価値の上昇が期待できます。

自社の状況を正確に把握するきっかけになる

CDPの質問書への回答を行うことは、客観的な視点を持ちつつ自社の現状を把握するきっかけになります。例えば「気候変動」の項目なら、CO2排出量やカーボンプライシングの活用状況、今後の事業戦略、ガバナンスといった内容を総合的に把握可能です。

「水セキュリティ」では、事業計画が水に与える影響について考慮し、水資源の不足に対する理解度を改めて確認できるでしょう。「森林」においては、森林を保全するためにどのような取り組みを実行できるのか、事業で使う木材・畜産物・農作物といった原材料の製造過程で、森林減少につながる方法がないかを確認可能です。

このようにCDPの質問書への回答を通して、自社の実態が客観的に見えてくる点がメリットの1つです。

これからの経営戦略を立てることにつながる

今後の企業は、社会と一緒に環境問題に取り組んでいくことが重要視されます。具体的な経営戦略を策定し、必要な準備を整えるためにも、CDPの基準が役立つでしょう。CDPの基準を参考にすることで、企業として十分にカバーできている部分と、改善点が多い部分を明確にできます。

情報をまとめたうえで経営戦略を立てられれば、より効果的な活動につなげることも可能です。CDPの基準を参照して経営戦略を立てることが大切です。

環境問題への具体的な行動を考えられる

CDPの存在は、環境問題に対する具体的な行動を考えられるというメリットがあります。自社の事業が環境に与えている影響を把握し、問題になり得る点を改善していくことは、リスクマネジメントにもつながります。事前に将来直面するリスクについて考えることが出来るため、環境に対する責任を果たすための具体的な行動を計画し、実行に移すことが促進されます。

また、CO2の削減が社会問題になっている現代において、CDPの活動に対して積極的な姿勢を見せることが、レピュテーションリスクを回避するためのリスクマネジメントの一環になるとも考えられます。

TCFDの準備も同時に行える

CDPへの対応は、TCFDの準備にもつながる点もメリットです。TCFDとは「気候関連財務情報開示タスクフォース」のことで、各社の気候変動に関する取り組みを具体的に開示する国際組織のことです。例えばプライム市場に上場するためには、TCFDに基づく情報開示が義務付けられています。

CDPの気候変動質問書には、TCFDについての質問項目も含まれています。そのため、CDPの質問書への回答を作成しながらTCFDの準備を進めることも可能となります。

企業がCDPに参加するデメリット・注意点

企業がCDPに参加する際には、いくつかのデメリット・注意点もあります。以下では、企業がCDPに参加する場合のデメリット・注意点を解説します。

質問書への回答にはコストがかかる

CDPからの質問書に回答する際には、「回答事務費用」と呼ばれるコストを支払う必要があります。2023年5年時点では、標準価格が295,000円で、企業規模を考慮して、106,000円と702,000円の2つのプランが追加されおり、合計3プランがあります。回答に対してコストがかかる点は、特に中小企業にとってはデメリットになり得るでしょう。

回答に手間がかかる

CDPの質問書への回答には多くの準備が必要です。正確な自社状況を把握したうえで、必要な情報を全てまとめることが求められます。また、質問書への回答は英語の文章にしなければならないため、翻訳に時間がかかる可能性もあります。

本来の仕事をしつつ質問書に回答する時間を作らなければならない点は、デメリットになるでしょう。

CDPに参加している企業事例

CDPに参加している企業は、2024年時点で多数存在します。以下では、CDPの参加企業を紹介します。また、CDPに参加している企業の詳細な情報は、「CDPの公式サイト」から確認可能です。

花王株式会社

花王株式会社(社長・長谷部佳宏)は、このたび、国際NGOであるCDPが実施し、世界の調査対象企業が回答した「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」対応に関する調査において、すべての分野で最高評価である「Aリスト企業」に選定されました。トリプルA企業は、CDP質問書への回答をもとに評価された21,000社以上の中から、10社選定されています。花王は4年連続での4回目のトリプルA獲得となり、「気候変動」分野は5回目、「フォレスト」分野は4回目、「水セキュリティ」分野は7回目の選定です。

引用:花王、4年連続でCDPから「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」の分野で最高評価を獲得

積水ハウス株式会社

積水ハウス株式会社は、グローバルに企業の環境分野におけるサステナビリティの評価を行うCDPにより、気候変動、フォレスト、および水セキュリティ分野の透明性とパフォーマンスにおけるリーダーシップが認められ、2023年度のAリスト企業に選定されました。なお、トリプルAに選定されたのは、国内住宅・建設業界で初めてとなります。

引用:CDP「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」全分野最高の「Aリスト」国内住宅・建設業界初のトリプルAに選定、先駆的な取り組みと情報開示が評価

中外製薬株式会社

中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、国際的な非営利団体であるCDP(Carbon Disclosure Project)により、気候変動および水セキュリティの透明性とパフォーマンスにおけるリーダーシップが認められ、2023年度のAリスト企業に選定されましたので、お知らせいたします。

引用:中外製薬、気候変動・水セキュリティ分野において、CDPより最高評価であるAリスト企業に選定

まとめ

CDPは国際的な環境非営利団体として、世界規模でさまざまな役割を担っています。将来的にはCDPの役割はより重要なものとなり、企業の環境活動の軸になる可能性もあります。CDPの取り組みには企業にとって多くのメリットがありますが、同時にデメリットになり得る要素もあります。

そのためまずは基本的な概要や必要性を把握し、CDPについての情報収集から始めることが大切です。この機会にCDPの基本や役割について理解を深めて、自社も積極的に取り組みに参加できる準備を整えてみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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