基礎情報

時計 2024/6/25 アップデート 2024/10/2

GX建機とは?認定機種や制度の概要について解説

GX建機_サムネイル

2050年の達成が目標となっているカーボンニュートラル実現に向けて、国はさまざまな制度を実行に移しています。「GX建機(GX建設機械認定制度)」もその1つであり、今後多くの建設事業に影響を与えると考えられます。早くから制度の特徴を確認し、環境改善を進めることも検討されるでしょう。

本記事では、GX建機(GX建設機械認定制度)の基本について解説します。

バナー

こんなお悩みを持つ 建設業界の企業様へ

脱炭素対策をこれから強化したい担当者様

CO2排出量管理の仕方を知りたい担当者様

Scope1,2,3まで正確に管理したい担当者様

GX建機とは何か?

GX建機とは

GX建機は、建設業界で使用する機械に関する新制度です。本制度は建設事業で用いられる各機械を、将来に向けて最新のものに切り替えていくきっかけになるでしょう。以下では、GX建機の基本について解説します。

「GX(グリーントランスフォーメーション)建機」を認定する制度

GX建機とは、国土交通省が令和5年10月7日に立ち上げた新制度です。正式名称は「GX建設機械認定制度」となり、CO2排出量削減につながる建機の認定を行います。建設事業の施工現場で使用される機種を環境にやさしい動力を使用したものに切り替えていき、脱炭素社会の実現を近づけるための制度として期待されています。

建設現場で使用される機械を稼働させることで排出されるCO2は、国内産業部門の1.4%を占めています。2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均等にして実質ゼロにすること)を実現するには、電話・FAX・コンピューターと統合する技術のCTIによる作業効率の向上などに合わせて、さらなる施策が必要になると考えられます。

そこで国土交通省はGX建機による抜本的な動力源の見直しを実施し、動力源に電力などを使用した建機の正式認定を進めています。現在は電動式のみが対象ですが、カーボンニュートラルにつながる可能性のある動力源はほかにも多数あります。

例えば水素(燃料電池、水素エンジン)、バイオマス燃料などが今後の建設現場を支える動力になると考えられます。GX建機の制度が始まった2023年は早期普及支援のために、規程に基準値は設けないかたちを取りました。そのため今後GX建機に認定される機種の増加と、制度の認知度拡大が進むでしょう。

一方で、将来的には電気自動車の燃費である電費基準値の要件化も、GX建機の申請時には必要になるとされています。そのため申請時には、「JCMAS」に基づく電力消費量の測定データの提出が求められます。

参照:JCMA一般社団法人日本建設機械施工協会

建設施工現場における「電動建機」の普及が目的

GX建機は、建設施工現場における「電動建機」の普及が主な目的となる制度です。具体的には、「カーボンニュートラルに資するGX建設機械の普及を促進し、もって建設施工において排出される二酸化炭素の低減を図るとともに、地球環境保全に寄与することを目的」としています。

先の解説通り、建設現場で使用される機械から排出されるCO2量は多いのが現状です。そのため、電気を動力とした機械を導入するきっかけとして、GX建機制度の普及が重要になるでしょう。

型式認定を受けると「認定ラベル」が付けられる

GX建機の型式認定を受けた建設機械は、認定ラベルを付けることが可能となります。認定ラベルを機械に付けることで、地球環境へ配慮していることをステークホルダーなどにアピールできます。結果的に会社の評判が向上し、利益につながる可能性に期待できるでしょう。

そのほか、認定ラベルはGX建機制度の普及促進につなげることも、役割の1つとなっています。認定ラベルを付けている建設機械が増えれば、制度の認知度が高まるきっかけになるでしょう。

GX建機の認定を受けるための申請方法

GX建機の認定を受けるには、「国土交通省大臣官房参事官(イノベーション)グループ 施工企画室 環境技術係」に、「電費評価値の算定に係る試験方式による試験結果記録表」など申請に必要な書類を送付する必要があります。

そのほか、規程第十四条に規定する点検整備方式の周知について、使用者に対して講じた措置内容を記載した書面の提出も求められます。申請方法の詳細は「GX建設機械等申請実施要領」など、国土交通省のホームページや資料から確認可能です。

参照:GX建設機械等申請実施要領

GX建機に認定されている機種

GX建機に認定されている機種

GX建機に認定されている機種は、すでに多数あります。以下では、GX建機に認定されている機種について解説します。

バッテリー式・有線式の電動ショベル・電動ホイールローダー・ホイールクレーン

GX建機では、バッテリー式・有線式の電動ショベル・電動ホイールローダー・ホイールクレーンが認定されています。令和5年10月17日(火)~令和5年12月12日(火)の期間に申請を受け付けた初回認定では、以下の4社の機種が選ばれています。

  • コベルコ建機 株式会社
  • 株式会社 小松製作所
  • 株式会社 竹内製作所
  • 山﨑マシーナリー 株式会社

電動ショベル15型式が認定され、実際に建設現場で使用されています。また、この建設機械施工協会(JCMAS)による「電力消費試験」の方法が規格化された結果、2024年3月25日には「電動ホイールクレーン」も認定対象になりました。同年4月4日に申請が始まり、タダノの「eGR-250N-1」のホイールクレーンが初めて認定されました。

eGR-250N-1は、バッテリ式と有線式の両方で使える特徴を持ち、走行などすべての動作を電気でまかなえる25tのラフテレーンクレーンです。充電方式は急速(CHAdeMO)と、普通(AC200V(三相)商用電源接続)に対応しています。

急速充電であれば出力70kW以上で約2.5時間、普通充電なら夜間充電・現場でのクレーン作業・補充電で約8時間となっています。稼働時間に関しては、機器の種類や用途によって異なりますが、電動ホイールローダ「L25」の場合は最大8時間です。

GX建機のメリットとは?

GX建機には、さまざまなメリットがあります。今後制度が普及していくことで、企業もさまざまな利益を得られる可能性があるでしょう。以下では、GX建機の主なメリットを解説します。

CO2排出量の削減につながる

GX建機は、CO2排出量を削減するメリットがあります。燃料に軽油を使用している従来のディーゼルエンジンから電動式に切り替えることで、CO2排出量の削減に期待されています。実際に建設現場の機械の動力源が化石燃料から電力に切り替われば、排出されるCO2は大きく削減されます。

GX建機に認定される機種が増え、実際の現場で使用されることが当たり前になれば、環境問題の対策として期待できるでしょう。

建設現場における騒音問題を解決する

GX建機は、電力を使用するため従来のエンジンよりも静音性が高くなるため、工事の最中に発生する騒音問題を解消し、スムーズな施工が可能となる点もメリットです。機械の駆動音が抑えられれば、住宅街での工事や夜間工事なども行いやすくなります。

排気ガスが少なく自然環境が豊かな場所でも作業がしやすい

GX建機は電気を使って動く機械を認定するため、排気ガスが少なくなる点も特徴です。排気ガスは樹木などに悪影響を与えるため、建設現場によっては慎重な作業が必要とされてきました。

しかし、GX建機に認定された建機を使用することで、自然環境に配慮しつつ工事が実行できます。植樹帯や樹木のなかで工事する場合にも、大きなメリットがあるでしょう。

企業ブランディングに活用できる

GX建機には、環境問題によい影響を与えると期待されています。認定された機械を導入することで、環境問題について具体的に対応している企業であることをアピールできます。これにより、企業ブランディングにつながることが期待できるでしょう。

国の補助金対象になる

環境省は、GX建機の導入におけるコストをカバーするための補助金制度を設立しました。民間事業者・団体などが認定建機を購入するときに、標準的な燃費水準の同種建機の価格と比較して、差額の2/3を補助します。機械本体だけでなく充電設備も補助対象となり、価格の1/2が補助されます。

補助金制度は、環境省の「産業車両等の脱炭素化促進事業」の一環に含まれており、導入補助を通じ建設業界に電動建機を導入させることが目的となっています。

また、制度を通じてGX建機を使用する事業者などにヒアリングを行い、情報収集やCO2削減効果の確認などにつなげて、普及拡大に向けた準備を進める狙いもあります。

参照:令和6年度予算 及び 令和5年度補正予算 脱炭素化事業一覧 – エネ特ポータル|環境省

GX建機のデメリットとは?

GX建機のデメリットとは?

GX建機には、メリットだけでなくデメリット・懸念点があります。GX建機を導入する前にデメリットの部分をチェックし、対策を考えておくこともポイントです。以下では、GX建機のデメリットについて解説します。

使用時間や場所が制限されるケースがある

GX建機はバッテリー式もしくは有線式となるため、使用時間や場所が制限される可能性があります。充電式のバッテリーは稼働時間が10時間未満となっているため、長時間の作業を連続して行う場合には充電方法を検討する必要があるでしょう。

有線式の機械を使う場合には、ケーブルの長さが移動できる距離の限界となるので、作業方法の工夫が必要になるというデメリットがあります。

低温環境での利用が難しい

GX建機はバッテリーを使用するため、低温環境では性能が低下する可能性があります。そのため寒冷地での使用時には、駆動時間が短くなったり放電効率が下がったりするデメリットが考えられます。また、低温環境ではバッテリーの充電スピードも落ちます。バッテリーの性能低下により作業時間と充電にかかる時間が増えると、作業効率が低下する点もデメリットになります。

コスト面の問題がある

GX建機を導入する場合、コスト面もデメリットになります。新たに建機を購入する際には、決して安くはないコストが発生します。このため、GX建機ではなく、安く済ませようとして従来の建機を導入してしまうケースもあるでしょう。コスト軽減のためには、先に紹介した補助金の活用が考えられます。

ガイドラインなどが十分でない

GX建機は2023年にスタートしたばかりの制度であるため、ガイドラインなどが整えられていません。本格的に導入・申請を検討していても、具体的に何をすればいいのかわからないこともあるでしょう。GX建機は制度の普及を最優先して始まったため、内容をの整備はこれからになると考えられます。

今後の新情報をチェックし、新規のガイドライン策定など動向を注視することがポイントです。

制度が始まったばかりで情報が少ない

GX建機は上記のガイドラインの問題も含めて、情報の少なさがデメリットになっていると考えられます。公開されている情報が少なく、詳細の確認が難しいため、導入・利用を諦めてしまうケースも懸念されます。そのため普及促進に向けて、国土交通省から情報が積極的に提供されると予想されます。

GX建機に関する事例

GX建機で認定された機種は、2024年時点でさまざまな工事に使用されています。以下では、GX建機に関する事例を紹介します。

国土交通省 総合政策局

公共交通・物流分野では、再エネ活用や公共交通利用
促進、モーダルシフト推進等によるGXを推進。
・公共交通のGXの推進に向けた支援(例:
EVバス・タクシー、省エネ鉄道車両導入、
充電設備、エネルギーマネジメントシス
テムの導入等)

引用:GXの実現に向けた国土交通省の取組について

まとめ

カーボンニュートラルの実現に向けて、さまざまな施策・制度が実施されています。GX建機もその1つとして、今後も注目を集めると予想されています。この機会にGX建機を確認し、導入・申請に向けた準備を進めることを検討してみてはいかがでしょうか。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

タンソミル

お問合せはこちら

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

本ウェブサイトを利用される方は、必ず下記に規定する免責事項をご確認ください。

本サイトご利用の場合には、本免責事項に同意されたものとみなさせていただきます。当社は、当サイトに情報を掲載するにあたり、その内容につき細心の注意を払っておりますが、情報の内容が正確であるかどうか、最新のものであるかどうか、安全なものであるか等について保証をするものではなく、何らの責任を負うものではありません。

また、当サイト並びに当サイトからのリンク等で移動したサイトのご利用により、万一、ご利用者様に何らかの不都合や損害が発生したとしても、当社は何らの責任を負うものではありません。

TansoMiru製品サイトはこちら