基礎情報

時計 2024/10/1 アップデート 2024/10/1

サステナブルファイナンスとは?具体的な仕組みや取り組みのポイントを解説

サステナブルファイナンスとは?具体的な仕組みや取り組みのポイントを解説

環境問題や社会問題への取り組みは、企業単位でも必要とされています。それぞれの企業が各問題を解決するために、専門的な施策を積極的に実行し続けることが重要です。しかし、環境問題や社会問題の解決につながる施策の実現には、大きなコストがかかります。

そこで企業への負担を低減させる1つの方法として、「サステナブルファイナンス」に注目が集まっています。本記事ではサステナブルファイナンスの基本や仕組み、取り組み時のポイントなどを解説します。

バナー

こんなお悩みを持つ 建設業界の企業様へ

脱炭素対策をこれから強化したい担当者様

CO2排出量管理の仕方を知りたい担当者様

Scope1,2,3まで正確に管理したい担当者様

サステナブルファイナンスの基本について

サステナブルファイナンスの基本について

企業は環境問題や社会問題の解決につながる役割を担うために、さまざまな施策を実行する必要があります。その際「サステナブルファイナンス」の基本を理解し、適切に活用することが重要です。以下では、サステナブルファイナンスの基本について解説します。

サステナブルファイナンスとは何か

サステナブルファイナンスとは、企業が環境問題や社会問題につながる施策を実現するために、投資や融資などを受ける方法です。SDGsへの取り組みなどが広まっている現代社会では、企業が環境・社会に対してどのような取り組みをしているのかも、重要な情報として扱われています。

つまり、企業はステークホルダーからの信頼を得るために、積極的に環境問題や社会問題を解決するための取り組みを行う必要があります。しかし、問題解決への取り組みにかかるすべてのコストを企業のみで担うのは難しいのが現状です。

特に中小企業は、新しい施策を打ち出せるだけの資金力がなく、課題の解決ができないケース想定されます。そこでサステナブルファイナンスを利用することで低コストで問題解決への取り組みを進めることが可能になるのです。サステナブルファイナンスを活用することによって多くの企業は環境問題や社会問題解決に向けて動き出せるようになるでしょう

サステナブルファイナンス3つの定義について

サステナブルファイナンスに3つの定義があります。欧州委員会は2016年12月にサステナブルファイナンスに関するハイレベルな専門家グループ(HLEG: High-Level Expert Group)」を立ち上げました。

HLEGは2018年1月には最終提言書を公表し、欧州委員会は同年3月にアクションプラン「Action Plan: Financing Sustainable Growth」を公表しています。このアクションプランでは、サステナブルファイナンスに対して以下の通り3つの定義が提案されています。

  1. 金融の意思決定にESG要素を統合
  2. 持続可能な経済・社会・環境開発を促進する金融
  3. 持続可能な雇用、退職後の資金調達、技術革新、インフラ建設、気候変動緩和など、長期的な教育、経済、社会、環境問題に取り組む安定した金融システム

この3つの定義に基づいてサステナブルファイナンスが実施されています。

サステナブルファイナンスは「持続可能な経済社会システムを支えるインフラ」を指す

金融庁ではサステナブルファイナンスを、「持続可能な経済社会システムを支えるインフラ」として位置付けています。つまり、企業が積極的に環境問題や社会問題に取り組んでいくためには、サステナブルファイナンスに関する制度を整備し、制度促進に向けた動きを進めていくことが必要です。

金融庁におけるサステナブルファイナンスへの議論は広く実施され、2021年6月には、「サステナブルファイナンス有識者会議報告書 持続可能な社会を支える金融システムの構築」が第一次報告書として公開されました。

その後、 2022年7月にも「金融庁サステナブルファイナンス有識者会議 持続可能な新しい社会を切り拓く金融システム」が、第二次報告書として発表されています。これらの報告書によって、持続可能な新しい社会を切り拓く金融システムが提言されました。このようにサステナブルファイナンスに関するシステムの地盤は、少しずつ整いつつあります。

サステナブルファイナンスとESGの違いについて

サステナブルファイナンスを理解する際には、「ESG」について知っておくことも重要です。ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(統治・管理)」を意味する3つの単語を合わせた言葉です。この3つの要素を意識して持続可能な社会を実現する取り組みを、「ESG」と呼称することもあります。

ESGは企業がどのように環境問題や社会問題に取り組んでいるのか、また、リスクへの対応策やガバナンスをきちんと整備しているのかを図る指標です。つまり、ESGはサステナブルファイナンスを実施する際の参考となり、企業への投資や融資を決定する要素になり得ます。そのためサステナブルファイナンスを受ける際には、ESGを意識した活動が求められるでしょう。

サステナブルファイナンスの仕組みについて

サステナブルファイナンスの仕組みについて

以下では、サステナブルファイナンスの仕組みを解説します。サステナブルファイナンス仕組みを理解し、持続可能な社会の実現を目指していきましょう

投資家や金融機関が社会問題の解決を目指す企業に投資する

サステナブルファイナンスは、さまざまな社会問題の解決を目指す企業に対し、投資家や金融機関が金銭的な支援をする仕組みです。投資家や金融機関が、企業の姿勢や具体的な施策を判断材料にし、支援をするかどうかを決定します。

サステナブルファイナンスの開示規制・名称規則について

サステナブルファイナンスには、開示規制・名称規則と呼ばれるルールが制定されています。そうしたなかで、米証券取引委員会は2022年5月に、制度の透明性を高めるための開示規制を提案しています。

本開示規制提案では、実態が伴っていない企業へのサステナブルファイナンスを防止するために、「サステナブル」「ESG」「グリーン」といった名称を使っているファンドは、「関連する投資先を含み、それらの企業に資金の80%以上を集中させる」ことを義務付けました。

こういった規制・規則はまだ制定され始めたばかりなので、今後も新しい条件が採用されたり、現在の内容が修正されたりする可能性があるでしょう。

サステナブルファイナンスが注目されている理由

サステナブルファイナンスが注目されている理由

サステナブルファイナンスは、近年になってますます注目度を高めています。その背景には多くの理由があり、それらを知ることもサステナブルファイナンス利用を検討するうえで重要す。以下では、サステナブルファイナンスが注目を集めている理由を解説します。

世界的にESG投資の割合が増えている

サステナブルファイナンスは、国内だけでなく世界規模で注目を集めています。世界的にESG投資(ESGを評価軸にして投資する方法)の割合が増加傾向にあるため、企業は積極的に環境や社会への問題解決に協力し、ステークホルダーへのアピールを行うようになりました。

2018年には、世界の市場投資額における1/3を占めるまでにESG投資が成長しています。その結果、ESG投資の一環であるサステナブルファイナンスに関する情報も広まり、積極的に活用する企業が増加しているのが現状です。

サステナブルファイナンスを含んだESG投資は将来的によりメジャーな投資方法になる可能性が高いため、企業はさらに持続可能な社会の実現に力を入れていく必要があるでしょう。

SDGsの実現には多くの資金が必要になる

SDGs(持続可能な開発目標)として定義されているさまざまな取り組みを実現するには、多くの資金が必要になります。そのため、金銭的な余裕がない状態で環境問題や社会問題への取り組みを進めると、企業の経営状態を傾けるという事態になりかねません。

中小企業は事業継続と同時にSDGsの施策に取り込めるほど、潤沢な資金を持っていないケースも多いです。しかし、SDGsなどへの取り組みができていないと、逆にステークホルダーから低く評価され、投資額が減少する恐れもあります。

そういった八方塞がり状況を打破するための施策として、サステナブルファイナンスに注目が集まっているのです。SDGs実現に必要な資金面の問題を解決する1つの手段として、サステナブルファイナンスは今後も重要視されるでしょう。

サステナブルファイナンスにつながる手法

サステナブルファイナンスにつながる手法

サステナブルファイナンスを活用するには、企業側もさまざまな手法を実行する必要があります。以下では、サステナブルファイナンスにつながる手法について解説します。

企業による投資家への情報開示

サステナブルファイナンスを受けるには、企業が投資家に向けてさまざまな情報を開示する必要があります。例えば事業活動の計画、リスクと対応策、環境問題や社会問題への取り組み方法、企業としての社会的責任などを、明確にすることが重要です。

従来のように財務情報を提示するのではなく、持続可能な施策に関するデータ提供が求められるでしょう。

ESG投資における透明性と公平性の向上

サステナブルファイナンスにおけるESG投資を受けるには、温室効果ガス排出量や従業員の労働環境改善、適切な資本金の配分といった客観的に評価できる透明性と公平性を満たしたデータが必要です。投資家がESG投資を行う理由を明確にするためにも、透明性と公平性を満たしたデータを準備しておきましょう

金融庁は、データ収集や分析、そこからの評価や情報提供を行う機関の評価基準および手法規準を明確化しています。ESG投資はまだはじまったばかりのシステムであるため、企業は投資家からの支援を受けられるように評価規準などをこまめにチェックしていく体制が求められます。

まずはサステナブルファイナンスに必要な情報開示の方法を確立し、透明性と公平性の向上に努める必要があるでしょう。

個人投資家への情報提供

日本国内では、個人投資家の存在も年々大きくなっています。機関投資家ではなく個人投資家も含めて、自社へのESG投資を考えてもらうことが、サステナブルファイナンスにつながる取り組みの1つです。サステナブルファイナンスの知識を得るための教育を実践するなど、金融業界も積極的な介入を行っています。

企業はそういった背景を理解したうえで、個人投資家に向けて適切な情報を提供していくことも求められます。

サステナブルファイナンスの主な種類を解説

サステナブルファイナンスの主な種類を解説

以下では、サステナブルファイナンスの主な種類を解説します。基本的な投資の種類を把握することで、よりサステナブルファイナンスについての理解が深まるでしょう。

グリーンファイナンスについて

グリーンファイナンスとは、環境分野への取り組みを実施して信頼を獲得し、資金調達を行う方法です。グリーンファイナンスでの投資・融資はグリーンプロジェクトと呼ばれる事業に限定され、例えば太陽光発電所の建設や省エネにつながる設備投資、建築物の省エネ化などの取り組みが挙げられます

グリーンファイナンスとしては、「グリーンボンド」という公債・債券の発行や、「グリーンローン」と呼ばれる金融機関からの融資が実施されます。

サステナブル海外直接投資について

サステナブル海外直接投資とは、国境を越えて実施される直接投資です。多くのケースでは先進国から開発途上国に向けて実施され、SDGsの達成を後押しする施策となっています。

社会的責任投資について

社会的責任投資とは、企業が社会的な責任を果たしているかを指標に行われる投資のことを指します。「ステークホルダーや環境問題に配慮できているか」といった点が、社会的責任投資の判断基準になります。

インパクト投資について

インパクト投資とは、収益を求めながら、同時に環境や社会へのインパクト創出を目的とした投資手法のことです。金銭的な利益を確保しつつ、温室効果ガス削減や脱炭素、労働環境の改善などに取り組むことで、環境や社会問題の解決を促進できます。

サステナブルファイナンスの問題点

サステナブルファイナンスの問題点

サステナブルファイナンスには多くのメリットがある一方で、同時に問題点も浮き彫りになっています。以下では、サステナブルファイナンスにおける主な問題点を解説します。

グリーンウォッシュの問題

グリーンウォッシュとは、環境問題や社会問題に取り組んでいるふりをして、サステナブルファイナンスを受けている企業、およびその行動を指します。グリーンウォッシュを行う企業がいる限り、投資家や金融機関は慎重にならざるを得ず、スピーディーな投資・融資が難しくなる点が問題となっています。

事業の利益が低下する可能性がある

サステナブルファイナンスにつながる各種施策には、多くのコストがかかります。資金だけでなく、人や時間といったリソースも必要になるため、現在の事業にネガティブな影響をおよぼす可能性るのです。

サステナブルファイナンスはまだ浸透していない?

サステナブルファイナンスという言葉や仕組みは、まだ浸透し切っていません。そのため投資に興味がある人も、ESG投資をはじめとした基本から学ぶ必要があるのです。サステナブルファイナンスに向けた施策を実行しても、すぐに投資・融資に結びつかない可能性も考えておくべきでしょう

まとめ

サステナブルファイナンスは、持続可能な社会の実現において重要な役割を担います。企業が環境・社会に対する責任を果たすためには、多くのコストが必要です。そのコストを賄う1つの手段として、今後はサステナブルファイナンスにさらなる注目が集まるでしょう。

この機会にサステナブルファイナンスの基本や仕組みを把握し、必要な対策について考えておくことが重要です。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

タンソミル

お問合せはこちら

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

本ウェブサイトを利用される方は、必ず下記に規定する免責事項をご確認ください。

本サイトご利用の場合には、本免責事項に同意されたものとみなさせていただきます。当社は、当サイトに情報を掲載するにあたり、その内容につき細心の注意を払っておりますが、情報の内容が正確であるかどうか、最新のものであるかどうか、安全なものであるか等について保証をするものではなく、何らの責任を負うものではありません。

また、当サイト並びに当サイトからのリンク等で移動したサイトのご利用により、万一、ご利用者様に何らかの不都合や損害が発生したとしても、当社は何らの責任を負うものではありません。

TansoMiru製品サイトはこちら