基礎情報
2024/9/29 2024/10/2
サステナブル建築とは?メリットや事例を紹介
持続可能な社会の実現を目指して、多くの企業がさまざまな施策を実行しています。その業界ならではの手法や解決策があるため、企業は自社の立ち位置を明確にしたうえで、適切な対応をしていくことが重要です。
例えば建設業界では、持続可能な社会に適合する建物を造り出す「サステナブル建築」による施策に注目が集まっています。本記事ではサステナブル建築の基本やメリット・デメリット、具体例について解説します。
サステナブル建築の概要
建設業界がサステナブルな社会の実現に貢献する際には、「サステナブル建築」による方法が考えられます。サステナブル建築だからこそ実現できるメリットが多数あるため、今後も業界独自の手法として注目を集めるでしょう。以下では、サステナブル建築の基本について解説します。
そもそもサステナブルとは
サステナブル建築を理解するには、まず「サステナブル」の意味を知らなければなりません。サステナブルには「持続可能な」「継続していける」といった意味があります。持続可能な開発目標であるSDGsをはじめとした数々の目標を実現することでサステナブル社会を構築し、現在の地球が抱える環境問題や社会問題の解決を目指します。
サステナブル建築とは自然環境に配慮して人の生活を持続して支える建築物のこと
持続可能な社会を実現するためのサステナブルを意識した建築方法、および建築物のことをサステナブル建築と呼びます。サステナブルに関する問題は、あらゆる業界に影響をおよぼしています。それは建設業界も例外ではなく、建築業界ではサステナブルを考慮した新しい建築方法や考え方が取り入れられつつあります。
その1つとして注目されているのが、サステナブル建築です。サステナブル建築の導入によって、ただ機能性やデザイン性の高い建築物ではなく、建築物と自然をいかに共存させるかという点が評価され始める可能性があります。建設業界に属する企業は、この機会にサステナブル建築への理解を深めて、具体的な施策の立案に着手するのがおすすめです。
サステナブル建築の基本について
サステナブル建築は、前提として自然に配慮した建築物である必要があります。環境問題の解決につながる一歩になり、人の生活を維持して向上させられる建築物こそが、サステナブル建築として認められるでしょう。サステナブル建築では、必要なエネルギーを最小限に抑えつつ、資源を無駄にしないことが求められます。
これらの基準を守ることで、環境に優しい建築物の構築が可能となるでしょう。長期利用が可能で、かつ安全性の高い建築物を造ることにもなるため、多くのメリットを得られます。また、長期的に存在し続ける建築物の存在は、周辺の文化や伝統を引き継いだり、災害などに対する備えになったりもします。
このサステナブル建築を導入することによってさまざまな課題が解決し、より充実した社会の実現につながる可能性もあるでしょう。
サステナブル建築の基準
サステナブル建築への理解を深めるには、建築基準を把握することも大切です。サステナブル建築における基準を明確にし、どのような要件を満たすべきなのか考えるのがポイントです。以下では、サステナブル建築における基準を解説します。
地球の視点での環境設計に配慮する
サステナブル建築では、まず地球視点で環境設計に配慮する必要があります。つまり、地球の有限性・許容限界などを考慮することで地球の環境負担を減らし持続可能な建築を目指すことが重要です。例えばエネルギー消費を最小限に抑えるための設計や運用を実施し、CO2や電力の削減につなげます。
同時に再生可能エネルギーの積極的な利用にも着手しつつ、エコマテリアル(CO2排出量や環境負荷の少ないリサイクル材)の利用を推進することも重要です。地球環境を考慮するのなら、設計から施工・運用はもちろん、改修や廃棄といったすべてのプロセスを意識したマネジメントも必要です。
また、「LEED」や「Energy Star」といった、グローバルな性能評価基準への対応も地球視点での環境設計に影響します。
LEED:最高クラスのビルト・エンバイロメントを作るための戦略やそれらをどう実現させるかを評価するグリーンビルディングの認証プログラム
Energy Star:オフィス機器の国際的省エネルギー制度
地域の視点での環境設計に配慮する
サステナブル建築は、地域での視点を考慮した環境設計も重要です。地域の環境やネットワークを意識して、地域における持続可能な社会の実現に貢献する必要があります。例えば外構や壁面を緑化してヒートアイランド現象を抑制したり、地域の生態系を考慮して自然を守る建築を心がけたりといったことがポイントです。
また、歴史・文化・景観などに配慮し、地域に馴染める建築物の構築もサステナブル建築の基本です。そのほか、土壌汚染や大気汚染への配慮に加えて、最適なエネルギーネットワーク化の促進、防災や事業継続性計画の考慮などもサステナブル建築では検討されます。
生活の視点での環境設計に配慮する
生活の視点で環境設計を実施することも、サステナブル建築における基準の1つとなります。従来のように我慢することで省エネを実現するのではなく、快適さを追求しつつ省エネにつなげることが、サステナブル建築の基本です。また、安全性を確保し、感染症や化学汚染物質などを考慮した健康への配慮がポイントです。
そのほか、音や温熱など環境を意識した快適な設計を実現し、IT環境などを整えて利便性を追求します。生活を豊かにする色彩や建物の広さ、コミュニティの充実などもサステナブル建築の要件となるでしょう。さらに、サステナブル建築では長く使い続けることを意識し、可変性や拡張性を考慮した更新できる建築物を目指します。
サステナブル建築における設計指針
サステナブル建築を実現するためには、設計指針を理解することも大切です。さまざまな対象に向けての設計指針を確立することが、サステナブル建築の実現を後押しするでしょう。以下では、サステナブル建築における設計指針を解説します。
建物に対する設計指針
サステナブル建築では、まず建物に対する設計指針を明確にします。建築は設計・施工・運用・更新・改修・解体といった、さまざまな段階によって構成されています。これらの段階ごとに「建物ライフサイクル・マネジメントの視点」を一貫して保ち、1つの指針として確立させる必要があります。
サステナブル建築の設計者および企業は、「設計責任」を持つことが求められます。同時に、設計性能や施工性、メンテナンス性などの性能面についての、「説明責任」も重要視されるでしょう。これらの内容を正確に把握する設計指針を立てることが、サステナブル建築の第一歩です。
事業に対する設計指針
サステナブル建築では事業という面からも、設計指針を考える必要があります。例えば省エネを実現するために、「最大事業価値」に寄与する「設計責任」が設計者および企業にはあります。つまり、その建築物が事業として最大どれだけの価値を与えるのかを設計する責任があるということです。事業の詳細なデータは可能な限り数値化・指標化して、地域住民などに説明できるように備えましょう。
人に対する設計指針
建築物とそれを利用する人との共存を表す「人に対する設計指針」も、サステナブル建築において重要なポイントです。サステナブル建築に居住する人たちのことを考慮する際には、「最低限生きていくことは可能」という最低基準を軸にするのではなく、より快適で長く使える環境整備が求められます。住み続けたいと人が思えない建物は、持続可能性を実現するというサステナブルの目的から逸脱してしまいます。
快適な暮らしや自然との共存など、居住者となる人への優しさを指針にして、長期的な利用が当たり前となる建物の構築が重要視されるでしょう。
社会に対する設計指針
サステナブル建築では、社会に対する設計指針を明確にする必要があります。建築は私的財産であると同時に、その社会に属する社会的財産の側面も持ちます。そのため周辺の歴史や文化を壊さず、社会的に認められ続ける建築物を設計することも、責任の一環となります。
社会は時間によって変化し、求められるものや排除されるものも変わります。そのなかでも長く存在できる建築物を構築することが、サステナブル建築における指針の1つになるでしょう。
造り方に対する設計指針
サステナブル建築を実行するのなら、造り方に対する設計指針も欠かせません。建築時はもちろん、建築後の維持も考慮して設計を進めることが求められます。そのためには建築物を構成する材料の生産段階から関わり、サステナブル建築を実現できる施工につなげることが重要です。
サステナブル建築のメリットについて
サステナブル建築の実現には、さまざまなメリットがあります。独自のメリットを正確に把握してそれを活かすことが、持続可能な社会の実現につながるでしょう。以下では、サステナブル建築における基本的なメリットを解説します。
地球の環境改善に貢献できる
サステナブル建築の実現は、地球環境の改善に貢献できる点で大きなメリットがあります。建物を建てるとき、多くのエネルギーが必要とされ、大量のCO2を排出しています。これは環境を悪化させ、将来の地球に影響を与えることも懸念されます。
そこで持続可能性を考慮したサステナブル建築を導入し、環境改善への具体的な施策とすることにメリットがあると考えられます。人々が生活していくために、新しい建物の建築は不可欠です。しかし、これまでと同じ方法では、サステナブルな社会を目指す各業界との間に軋轢が生じる恐れもあるでしょう。
このため、地球環境を考慮した事業展開をはじめるきっかけとして、サステナブル建築を導入することが考えられます。
社会的な信用を得られる
サステナブル建築の実施は、建築関係の事業者として社会的な信用を得られるメリットがあります。先に解説した通り、サステナブル建築は地球環境の改善につながります。そのためサステナブル建築で環境問題に取り組んでいるという姿勢が、ステークホルダーから高い評価を得るきっかけになります。
昨今はサステナブルを意識した取り組みをしているかを指標とする「ESG投資」の市場規模も広がっているため、サステナブル建築による社会的な信用の獲得には大きなメリットがあります。資金調達の手段としても、サステナブル建築が施策の軸になり得るでしょう。
ランニングコストの削減につながる
サステナブル建築は結果的に、ランニングコストの削減につながります。地球環境への貢献において、必要なエネルギーの削減は重要なプロセスです。それは建築時にかかる電力などの削減にもなり、省エネを実現するきっかけになります。
また、サステナブル建築によって自然環境を利用した最新の建物を構築することで、自然採光や熱効率の向上などを実現でき、建築後のランニングコストも抑えられます。
サステナブル建築のデメリットについて
サステナブル建築には多くのメリットがある一方で、デメリットにつながる要素もあります。事前にデメリットを把握し、対処法を考えるのも重要です。以下では、サステナブル建築におけるデメリットを解説します。
建築にかかるコストが増大する
サステナブル建築を実行する場合、従来よりも建築にかかるコストが増大すると予想されます。これまで使っていた材料よりも高価なものが必要になったり、設備投資による費用がかかったりするケースが多いため、結果的にコストが割高となる可能性があります。
コストが増えればそれだけ利益も減るため、企業経営に影響する可能性も否定できません。
建築の手間・時間もかかる
サステナブル建築の実行には、手間や時間が従来よりも必要になることが予想されます。過去に使用事例の少ない材料を導入する場合、設計書や図面を見直す必要に迫られる可能性もあります。施工時にも予期せぬトラブルが発生し、対処方法に苦心するケースも想定されることから、時間的なコストも増える点が問題視されます。
サステナブル建築の事例
サステナブル建築として公開されている建物は、すでに多数あります。過去の事例を参考にすることで、サステナブル建築をイメージしやすくなるでしょう。以下では、サステナブル建築の事例を2件紹介します。
箱根ラリック美術館
箱根ラリック美術館は、庭園型リゾートミュージアムです。
敷地内の自然環境への配慮を考え抜いたサステナブル建築になっています。
動植物への配慮として外構照明はLED照明を使用し、必要最小限の数と明るさしか設置されていません。
LED照明なら発熱量や眩しさが抑えられるため、動植物への影響を軽減できます。
また、美術館の高さは既存樹木を超えない高さに設計することで、目立たないように景観に配慮されています。
さらに、川沿いの風と重力換気を利用した「自然換気システム」を採用することで空調機能の使用量を抑えることが可能です。
他にも、深い軒で日射を制御して紫外線や熱によるダメージを軽減することにより、長期的に使用できるサステナブル建築になっています。
みなとみらいセンタービル
新しい構造システムとそれによるゆとり、環境ファサード、エコボイド、高効率機器の採用などでCASBEE横浜において横浜市よりSランクの認証を受けた。またCASBEE基準では運用時CO2排出量32%減となっている。
まとめ
サステナブル建築は、建設業界における今後の施策として、注目を集める可能性があります。SDGsをはじめとした具体的な目標が立てられている昨今、建築部門も積極的に新しい技術や考え方を導入し、サステナブルな社会の実現に貢献していく必要があるでしょう。
この機会にサステナブル建築の基本を確認し、その必要性を把握してみてはいかがでしょうか。
建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。
リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。
この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
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