基礎情報
2024/9/30 2024/10/1
LCCO2が建設業にもたらす影響とは?基本となるポイントや今後の取り組みについて解説
環境問題への取り組みが重要視される昨今、建設業でもさまざまな基準を参考にCO2の削減などを進めることが求められています。そのため企業は必要な情報を収集し、未来の環境保護に向けた具体的な施策を進めることが重要です。本記事ではCO2の削減につながり得る「LCCO2」について、その詳細を解説します。
建設業に関係している方々にはこの機会にLCCO2への理解を深めることをお勧めいたします。
そもそもLCCO2とは?
LCCO2を建設業の事業で活かすには、基本的な内容を理解する必要があります。なぜならば、LCCO2の意味や概要を正確に理解できてはじめて、具体的な施策の実現が可能となるからです。以下では、LCCO2の基本を解説します。
建物のライフサイクルで発生するCO2の総排出量
LCCO2とは「ライフサイクルCO2」の略称で、建設業における建築業務全体で発生するCO2排出量を算出し、評価する指標として用いられています。ライフサイクルを通してCO2排出量を評価するため、建設時だけでなく建物の利用時も含めてCO2を算出できる点がLCCO2の特徴です。
そのため、LCCO2を算出することで、建設時における環境負荷を把握することができます。建設業におけるライフサイクルには、あらゆる業務が含まれます。具体的には企画・施工・運営・解体といった全体のサイクルを通して、CO2がどの程度排出されるのかを計算します。そして、算出した内容を軸にCO2の排出量を削減する方法を考え、具体的なアクションを起こします。
LCCO2はISO14000シリーズの1つとして国際標準化機構(ISO)に公に認められている基準です。そのため、LCCO2を意識した施策を実行しているとステークホルダーや国などへのアピールにつながります。今後はLCCO2を軸に補助金などの支給が実施される可能性もあるため、早くから取り組んでおくことにメリットがあるでしょう。
LCCO2以外の基準
LCCO2は、「LCA(ライフサイクルアセスメント)」に含まれる手法の1つです。LCAには他にも「LCE(ライフサイクルエネルギー)」「LCC(ライフサイクルコスト)」といった手法があり、それぞれが役割を担っています。LCEはライフサイクルのなかで、消費エネルギーについての数値を算出します。
建設業において消費エネルギーは、建設時だけでなく使用中も発生します。その点を考慮して、必要な省エネ施策を取り入れることが大切です。LCCは建物などに生涯発生するあらゆるコストを算出する手法のことです。例えば建物の保全・修繕・維持など、あらゆるシーンでかかるコストを計算します。
このように建設業は、LCCO2以外にも注目すべき基準が多数あります。そのためLCCO2に関する知識を身につけつつ、LCAに含まれるそのほかの手法にも目を向ける必要があるでしょう。
LCCO2の算出方法について
LCCO2の算出時には、専用ツールを用いるのが基本です。例えば日本建築学会のLCA指針策定小委員会が提供する「建物のLCA指針」や、一般社団法人日本サステナブル建築協会のCASBEE(建築環境総合性能評価システム)などを使い、評価を確認する方法があります。
いずれもLCCO2の知識と各ツールの基本を抑えることで、スムーズな算出が可能となるでしょう。
LCCO2と建設業の関係性について
建設業にとってLCCO2は、重要な指標となります。そのため建設業者は早めにLCCO2についての基本を把握し、具体的な関係性を理解することが求められます。以下では、LCCO2と建設業の関係性について解説します。
LCCO2を軸にした施策が求められる
建設業が対応する業務は、今後LCCO2が軸になる可能性があります。CO2の削減は国際的な問題であり、企業単位でもCO2削減が求められています。
また、脱炭素社会が進むにつれ、様々な分野で環境対策を盛り込んだ新しい基準ができつつあります。建設業界ではLCCO2が新しい基準として重要度を増しており、LCCO2を適切に使用することで社会の変化にいち早く適応できるようになるでしょう。
将来を見据えた事業のためにLCCO2の評価が重要視される
LCCO2は、将来を見据えた事業にとって重要な評価指標となり得ます。LCCO2の評価を軸に課題とその解決法を考えていくことで、長期に渡って活用できる建物が施工可能です。今後はより環境に配慮した建物の建設が必要になることが予想されるため、LCCO2について考える機会が増えるでしょう。
そのため、事業全体でLCCO2についての理解を深め、環境に配慮した運営や計画を策定できるようにすることが求められます。
最新技術の発展などにつながる可能性がある
LCCO2は、環境保全などにつながる最新技術の開発につながる可能性も秘めています。現在の技術ではLCCO2の評価には限界があります。このため、より評価を上げるために技術開発が促されることが期待されます。新技術が応用されると、より高効率な環境対策が可能になります。
結果的により安全で高い評価を得られる建物を構築でき、会社の評判アップも期待できます。
日本におけるLCCO2の現状は?
日本国内ではLCCO2を軸にして、さまざまな事業・施策を展開しています。その結果、さまざまな成果を引き出し、将来につながる展望を見出しつつあります。以下では、日本国内におけるLCCO2の現状について解説します。
2030年度までの省エネルギー対策について
日本は2030年度までに省エネルギー政策を実行し、エネルギーの削減を目標としています。具体的には「長期エネルギー需給見通し」「地球温暖化対策計画」などを主軸として、5,030万kl程度の省エネ削減を見込んでいます。例えば国土交通省は、「運輸・民生(業務、家庭)」部門において、省エネルギー政策を実行します。
そこには公共交通の利用促進や物流の効率化にプラスして、建築物や住宅の省エネ化の実現も方針に含まれていることが特徴です。つまり、建設業は建物建築時のみではなく、建物使用時の省エネルギー対策にも力を入れるために、LCCO2の活用が求められています。
政府も積極的な取り組みを進めている
LCCO2に関する取り組みは、政府主導でも進められています。LCCO2および環境に関する問題の解決は、国際的に重要視されています。そのため国は、住宅における一次エネルギーの収支を実質的にゼロ以下になるよう目指すZEHや建設から廃棄にかけて省CO₂を目指すLCCM※(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス )などの施策を通して企業に現状を伝え、問題の本質と課題の解決を促しています。LCCO2とそれを評価するツールの導入は、施策の一環となるでしょう。
現在、CO2削減などの環境対策が急務となっています。そのためこれからも、政府から企業への積極的な働きかけが増えると予想されます。建設業はそういった政府からの指導・要望に柔軟に対応できるようにしなければなりません。
※ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅の略称。 LCCM住宅では、建設・運用・廃棄時のCO2排出量を最小限に抑えます。
LCCO2に関する認知が広まっている
LCCO2の認知度は徐々に広まりつつありますが、「言葉は知っているけれど、具体的にどんな施策なのかはわからない」「存在そのものを知らない」といったケースも、まだまだ多いです。
そのため国は率先してLCCO2の存在を広めて、少しでも多くの企業が関連する施策に携われるようにサポートすることが求められています。企業もLCCO2についての理解を深めつつ、それを取引先や従業員に伝えていく努力が必要です。LCCO2を理解して取り組む人が増えれば、より多彩な対応が取れるようになるでしょう。
LCCO2を軸にした具体策の考案・実践が進んでいる
昨今はLCCO2を主軸にした、具体策の考案と実践も進んでいます。LCCO2の普及率にはまだまだ課題がある一方で、すでにCO2削減技術の開発など新しい方法を確立している企業も増えています。そのため今後はLCCO2を軸にした施策の事例が増加し、参考にできる情報が増えると予想されます。
次にご紹介する具体例はLCCO2の採用を予定している企業にとって参考になるでしょう。また、LCCO2の取り組みが広まることでメリットも広まり、より大きな結果が期待できます。
建設業におけるLCCO2の取り組みについて
建設業ではすでに、LCCO2を軸にした多数の取り組みが進められています。 以下では、建設業におけるLCCO2の取り組みについて解説します。
建設分野におけるカーボンニュートラルの推進
2050年のカーボンニュートラル達成に向け、建築物においては、使用時の省エネや創エネだけでなく、製造・建設から解体・廃棄に至るまでのライフサイクル全体を通じた二酸化炭素排出量(=LCCO2)削減への取り組みが、欧米を中心に進んでいます。
例えば都市のコンパクト化を通して人口減少や少子高齢化に対応したり、スマートシティを実装して省エネな街づくりを進めたりする計画が検討されています。実際にカーボンニュートラルがどの程度の成果を出すのかは未知数ですが、建設業にとっては目指すべきゴールの1つになるでしょう。
ZEHやLCCMの普及促進
ZEHやLCCMの普及・促進も、建設業におけるLCCO2の取り組みに含まれます。ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、高断熱化や高効率設備の利用、および太陽光発電など活用した創エネ環境を構築する住宅です。
電力の創出や省エネルギー設備の働きにより1年間で消費するエネルギーをほぼ0以下にすることができ、将来的な普及が期待されています。LCCMとは、長寿命化によって長くなる建物のライフサイクルを考慮し、その全体で排出されるCO2の量をマイナスにする住宅を指します。また、使用している最中のCO2排出量だけでなく、資材の製造や建設の段階におけるCO2排出量の削減を目指します。
ZEHやLCCMの存在は、建設業において重要となりつつあります。将来的に個人の消費者単位でもCO2の削減が重視されるようになれば、ZEHやLCCMを建設できる業者の価値がより高まるでしょう。
断熱強化によるCO2排出量の削減
建設業では断熱材の変更・強化によってCO2の排出量削減がなされています。例えばグラスウール断熱材を使用して、廃棄等に伴うCO2排出量と運用時に発生するCO2の削減を目指します。
グラスウールは住宅にかかるエネルギー消費量の削減や、原料の85%以上にリサイクルガラスを使用している性質から「繰り返し再利用できる素材」であることが特徴です。
このように、断熱材の種類によってCO2排出量の削減を目指すことができるため、断熱材は性能だけではなくLCCO2削減効果にも配慮して選定する必要があります。
建設業が今後環境問題で意識すべきこと
建設業は今後、LCCO2をはじめとしたさまざまな環境問題への対策が必要になります。将来に備えて今のうちに対策を考案し、実行に移していくことが望ましいでしょう。以下では、建設業が環境問題に対して今後意識すべきことを解説します。
LCCO2をはじめとした各制度の詳細を把握する
建設業は、まずLCCO2に関する各制度の詳細を把握することが大切です。LCCO2の基本的な概要を把握しつつ、それを取り巻く制度や具体的な施策を理解することで、自社が何をすべきなのか、何ができるのかを明確にできます。
LCCO2への理解を深めつつ、具体的なアクションにつなげていくことが、建設業の役割になるでしょう。
社内で環境問題に関する知識獲得の機会をつくる
LCCO2を軸に社内で環境問題に関する知識を得る機会を設けることも、建設業にとって大切です。そこで改めてLCCO2や環境問題について学ぶ時間をつくって、認識を深めることも1つの方法です。
自社の課題を明確にする
環境問題やLCCO2に関するアクションを決める際には、自社の課題を明確にすることも重要です。具体的に現時点でどのような課題を抱えているのか、どんな方法で解決に導けるのかを考えることも、1つの施策として機能します。まずは社内の状況や課題を見つめ直し、優先して何をすべきか検討するとよいでしょう。
最新の技術・テクノロジーを積極的に導入する
環境問題やLCCO2について考える際には、最新の技術・テクノロジーに目を向けることもポイントです。昨今の環境問題に対して、多くの企業が新しいテクノロジーの開発・導入を目指しています。それらのテクノロジーは、業務効率化や生産性向上にもつながるため、積極的な導入にメリットがあります。
この機会に関連するテクノロジーをチェックして、本格的な利用を検討してみることもおすすめです。
まとめ
LCCO2は建設業界にとって年々重要度を増しており、重要な指標として認識されつつあります。このため、将来的にはCO2の排出削減や建物の長期的な利用を行ううえで、LCCO2の存在は欠かせない評価基準となるでしょう。この機会に建設業とLCCO2の関係性や、今後の取り組み方について、ぜひ確認してみてください。
建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。
リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。
この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
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