今話題のGX人材とは？注目の理由や育成方法も解説

近年、環境保護と経済成長を両立させるために、新たな人材が求められています。その一つが「GX人材」です。GX（Green Transformation）人材は、脱炭素などGXの推進を担う人材のことを表します。

本記事では建設業界の方に向けて、GX人材とは何か、なぜ注目されているのか、そしてどのように育成すればよいのかを詳しく解説します。

GX人材とは？

GX人材とは、より具体的には企業や社会全体が環境負荷を減らしながら成長するために必要な知識とスキルセットを持つ専門家のことを指しています。企業が環境に配慮した経営を行い、脱炭素を推進しながら持続可能な発展を主導することがGX人材の役割と言えます。

環境問題やその解決方法に深い理解があるため、企業の戦略や業務プロセスに低炭素やグリーンエネルギーの導入など、グリーンな視点を組み込んだ企業戦略の立案および実行を通してGXを推進することがGX人材の目的です。

GX人材の定義

現在は明確な定義がなく、GXを推進している部署で活躍する人材のことを指すケースや、専門知識を学んだ人材を指すケースなどがあります。

脱炭素などに関する知識を持っており、持続可能な経済活動を推進する人材全般をGX人材と呼ぶことが多く、特定の職種や技術を表してはいません。

GX人材の特徴と資格・スキルセット

GX人材に求められるスキルセットには、次のようなスキルや知識の組み合わせが挙げられます。

・環境知識：気候変動、再生可能エネルギー、資源管理などに関する深い知識。

・技術スキル：エネルギー効率化技術、環境管理システム、グリーンITなどの最新技術に精通。

・ビジネススキル：持続可能なビジネスモデルの構築、サプライチェーンのグリーン化、CSR（企業の社会的責任）活動の推進。

・リーダーシップ：変革を推進するリーダーシップと、チームを統率するコミュニケーション能力。

代表的な資格にGX検定があります。下で詳しく説明していますが、GX検定には専門性の高さに応じてベーシックからアドバンスト、スペシャリスト、BIZの4種類があります。

従来の人材との違い

従来の人材とGX人材の違いは、主に以下の3つが挙げられます。

・スキルセットの違い

一般的に業務遂行に必要な専門知識や技術を持っているのが従来の人材です。例えば、営業担当者なら営業スキル、エンジニアならプログラミングスキルが求められます。

一方、GX人材にはこれに加えて環境問題に関する知識やスキルが必要です。具体的には、再生可能エネルギーの利用、環境負荷の低減策、サステナビリティに関する法律や規制の理解などが求められます。

・視点の違い

企業の利益や効率性を重視する傾向があるのが従来の人材であり、その目標は、売上の向上やコスト削減、業務の効率化といった経済的な側面に集中しています。

対して、GX人材は経済的な利益と同時に環境への影響も考慮する視点を持ち合わせています。企業活動が環境に与える影響を最小限に抑えつつ、持続可能な成長を目指します。

・目的の違い

従来の人材の目的は、企業の短期的な成功や利益の最大化にあります。これに対して、GX人材の目的は、企業が環境対策を行いながら長期的に持続可能な成長を遂げることです。

このため、環境保護と経済成長を両立させるための戦略を立案し、実行します。再生可能エネルギーの導入や資源の循環利用、エコフレンドリーな製品開発などを通して環境価値を高めることが目的です。

GX人材が注目・必要とされる理由

近年では、積極的な環境対策による企業のイメージアップや規制への対応など、環境対策の需要の高まりにより注目されていることがGX人材が必要とされている大きな理由です。

年々世間や政府からの脱炭素実現への動きが強くなり、温室効果ガスの排出規制や炭素税など課税がなされるようにシフトしています。このため、カーボンニュートラルに伴う様々な変化に対応できる人材が企業の成長に不可欠になりつつあります。

持続可能な経済成長の推進

環境問題が重要視される場面でも、経済活動を続ける必要があります。そのため、各企業はビジネスと環境配慮を両立した持続可能な経済活動になるよう努力する必要があります。

このような活動を支援することができるのがGX人材であり、GX人材が必要とされている理由です。

環境問題への対応

気候変動や森林伐採、水質汚染などの環境問題は、今や世界的な課題となっています。GX人材はこれらの問題に対する具体的な解決策を提供し、企業が環境規制に対応できるよう支援します。

例えば、CO2排出量の測定および算出をし、その結果に即した脱炭素やカーボンニュートラルの達成に向けた戦略の策定や、それに向けたシステムの最適化などを行います。

企業の競争力向上

環境に配慮した経営は、脱炭素社会の中では企業の競争力を高めると考えられます。消費者や投資家はますます環境意識を高めており、このため、気候変動や環境対策を取り入れた経営を行っている持続可能な企業に対する支持は強まっています。

企業の競争力向上という観点では、GX人材は企業が環境に優しい製品やサービスを提供することで、ブランドイメージを向上させ、新たな市場機会を創出する役割を果たします。

さらに、GX人材の役割はブランドイメージや環境意識といった数字として目に見えにくいものだけではありません。

例えば、エアコンの温度設定を弱くするという、誰にとっても簡単でイメージのしやすい環境配慮であっても、電気代と共にCO2排出量を削減することができます。このようなエネルギーコストの削減もGX人材の大切な役割と言えます。

イノベーションの促進

GX人材は、環境問題に対応するための新たな技術やビジネスモデルの開発を推進します。これにより、企業は競争力を増し、さらなる成長を遂げることができます。

例えば、エネルギー効率化技術の開発や製造プロセスの低炭素化など、製品にこれらの技術を取り込むことでイノベーションを起こすと共に、消費者や投資家のエコ意識に訴求することができます。

市場やニーズの変化が早い昨今、イノベーションの促進力は企業として大きな力を持つきっかけになると言えるでしょう。

GX人材の育成方法

では、実際にGX人材を育成するにはどのようにしていくのが効果的でしょうか？

現在はまだGX人材やGXそのものが注目され始めて間もないため、ほとんどの企業ではGX人材は少ない状況です。また、少数のGX人材を採用できたとしても、社員全体にGXの意識を浸透させることは難しいでしょう。

この観点から自社だけでGX人材を育成することは難易度が高いのが現状と言えます。そこで、以下では自社でできることと、自社だけでは対応できず社外での研修を必要とすることについて解説します。

教育プログラムの設計

社内でできることに、教育プログラムの設計および実施があります。教育プログラムを成功させるためには、全社員が積極的に参加できる環境を整えることが重要です。

まず、役職に縛られず全社員が受講可能なプログラムを提供することで、組織全体に学習の意識を浸透させることができます。全員が同じ教育を受けることで、共通の基礎知識やスキルを持つことができ、社内コミュニケーションや業務の効率化にもつながります。

次に、教育を受け損ねる社員が出ないようにすることが不可欠です。教育プログラムを受け損ねる社員が出てしまうと、知識や学びを共有することが難しくなってしまいます。全員が平等に教育を受けられる環境をつくることで、組織内の一体感が強まり、一枚岩となったチームを形成できます。

さらに、研修実施後も学習した内容を忘れないようにするフォローが必要です。教育プログラムが終わった後も、定期的な復習や実践の機会を設けることで、学んだ知識やスキルを持続的に活用できるよう支援します。

フォローの一環としては、社内での情報共有や勉強会の開催、オンラインでのリソース提供などです。これにより、社員は研修で得た知識を日常業務に活かし続けることができ、組織全体の成長と発展に寄与するでしょう。

このような教育プログラムを通じて、企業は全社員が成長し続ける環境を提供し、組織の競争力を高めることができます。役職や職務内容に関わらず、全員が平等に学び続ける姿勢を持つことで、企業全体が一体となって前進することが可能です。

企業内研修とスキルアップ

企業内で研修をする場合、社外の講師に比べてどうしても専門性が劣ってしまいます。一方で、企業内研修にも様々なメリットがありますので、以下に比較をしてそれぞれ解説します。

・カスタマイズ性

社外の講師は標準化された教材を使用することが多く、社風や普段の業務内容を加味した教育をしたい場合には企業内研修の方が適していると言えます。

・専門知識と経験

専門性については社外の講師に劣ってしまう可能性があります。一方で、業務内での経験などを話すことができるのは社内の講師が適しています。

・コスト

社外の講師に講義を行ってもらう場合は、出張費を含めて高額な報酬が必要になる可能性もあります。このため、社員を講師にした方がコストは安くなる場合が一般的です。

・スケジュール

社外で研修を行う場合、研修のために業務を止める必要がある上、社員の出張費もかかります。しかし、企業内研修であれば一般業務に支障の無い範囲で研修日時を設定することができます。

専門資格と認証制度

GXにおける専門資格は主にGX検定のことを指します。この検定には4つの種類があるので以下にそれぞれの違いを記載します。

• GX検定 ベーシック：GX検定の中で一番基本的な知識を身に着ける検定
• GX検定 アドバンスト：規制や要請に応じて脱炭素やカーボンニュートラルを推進することができる検定
• GX検定 スペシャリスト：GX検定アドバンストと同じ方向性で、より専門性の高い検定
• GX検定 BIZ：脱炭素需要を取り込みビジネスとすることに特化した検定

この4つのうち、GX検定 BIZ以外は環境省認定の制度であり、脱炭素アドバイザーと呼ばれます。(GX検定 ベーシック所持者は脱炭素アドバイザーベーシック、GX検定 アドバンスト所持者は脱炭素アドバイザーアドバンスト、GX検定 スペシャリスト所持者は脱炭素シニアアドバイザー)

社員に資格取得支援をする際には、まずはベーシックを取得するのがおすすめです。

実践的なプロジェクト参加

基礎的な知識が身についた後は、実際のプロジェクトに参加することでその知見を深めていくことが考えられます。

これはGXに関する育成に限った話ではありませんが、実際の仕事に関わることでモチベーションを維持しやすく、より実践的な学習ができます。

まとめ

GX人材は、持続可能な経済成長と環境保護を両立させるために企業に不可欠な人材であり、深い環境知識とスキルセットを持ち、企業がグリーンな経営を実現するための戦略を策定し、実行します。

GX人材の育成には、体系的な教育プログラムの設計や、企業内研修、専門資格の取得、実践的なプロジェクト参加などが重要です。これにより、企業は持続可能な成長を遂げるとともに、競争力を高めることができる可能性が高まります。

今後はGX人材の需要はますます高まっていくと考えられています。建設業界や各企業はこのニーズに応えるために効果的なGX人材の育成を行い、持続可能な社会の実現に向けて貢献していくことが求められます。