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CO2排出量管理の仕方を知りたい担当者様

Scope1,2,3まで正確に管理したい担当者様

脱炭素の基本情報

温室効果ガス(GHG)

温室効果ガスとは赤外線を吸収しやすいガスのことです。通常、地表から放出される赤外線は宇宙空間へと逃げていきますが、大気中に温室効果ガスがあるとこの赤外線を吸収してしまいます。吸収された赤外線は熱となるので、その分だけ大気が加熱されます。この温室効果により、大気中の温室効果ガスの量が増加すると地球の気温が上昇してしまいます。この温室効果ガスはGreen House Gasの頭文字を取ってGHGと略されています。

温室効果ガスは大気中にも含まれており、この温室効果ガスの温室効果により地球の平均気温は約15℃に保たれています。仮にこの温室効果ガスが大気中から無くなると、地表から放出される赤外線が大気中で吸収されずに、宇宙空間へと放出されてしまいます。地球の大気はその分冷たくなるので、温室効果ガスが無い場合だと地球の平均温度は-19℃程度になると言われています。

国内では地球温暖化対策の推進に関する法律で温室効果ガスとして、以下の5種類及び2カテゴリの物質が定義されています。

【温室効果ガスとして定義されている物質】

  • 二酸化炭素
  • メタン
  • 一酸化二窒素
  • ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
  • パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
  • 六ふっ化硫黄
  • 三ふっ化窒素

18世紀半ばの産業革命以降、地球全体の二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量は増加し続けており、大気中の二酸化炭素濃度は上昇し続けています。

そして、地球の平均気温の上昇が報告されるようになると、大気中の温室効果ガス増加との関連を指摘されるようになりました。

二酸化炭素及び温室効果ガスが増え続けると平均気温が上昇し続け、地球環境に大規模な影響を与えてしまう恐れがあるために、地球温暖化が国際的な問題になりました。このため、現在では世界各国で脱炭素化に向けた積極的な取り組みが行われています。

排出係数/原単位

排出係数とは事業者の活動の規模である「活動量」あたりの二酸化炭素排出量のことで、排出原単位とも呼ばれています。

活動量とは、例えば年間の電気の使用量やトラックの運送距離など生産や運送活動を行った量のことを指します。

これらの排出係数と活動量を用いると、二酸化炭素の排出量は「排出係数×活動量」で算出されます。

この排出係数は産業ごとに細かく定められており、環境省はサプライチェーン全体の二酸化炭素排出量の算定に活用できる排出係数を取りまとめたデータベースを公表しています。

低炭素(低炭素社会)

低炭素とは二酸化炭素の排出量を抑えた状態のことです。脱炭素が「二酸化炭素の排出量実質ゼロ」であるのに対し、低炭素は「二酸化炭素の排出量が低い」ことを指します。

低炭素の基準は公的に定義づけされていませんが、環境省は低炭素社会に関して3つの基本理念を設定しています。

【低炭素社会の基本理念】

  1. カーボン・ミニマムの実現
  2. 豊かさを実感できる簡素な暮らしへの志向
  3. 自然との共生

低炭素社会への取り組みは、再生可能エネルギーなど低炭素なエネルギー源を用いることや、低炭素となる建築資材を使用して低炭素住宅を推進すること等を通して行われています。

※参照:環境省「低炭素社会づくりに向けて

脱炭素(脱炭素化、脱炭素社会)

脱炭素とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出を実質ゼロに抑えることを指します。脱炭素は気候変動問題の解決に向けた世界各国共通の長期目標となっており、日本政府は「2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す」ことを宣言しています。

脱炭素を実現するために、再生可能エネルギーの活用などによって温室効果ガスの排出量を抑えながら、人為的な「森林の整備」「干潟や藻場などの維持管理」などによって温室効果ガスの吸収を促すことが計画されています。

脱炭素化に向けた取り組みの例として「EVのシェアリングサービス」や「鉄道への再生可能エネルギー由来の電力活用」など省エネを配慮したサービス等が挙げられます。また、エネルギー収支をゼロにする家、と言う意味の「ZEH」、エネルギー収支をゼロにするビル、と言う意味の「ZEB」など、住宅の省エネ化のみではなく住宅からエネルギーを生み出す創エネ化により消費エネルギー量実質ゼロを実現する建築物等も挙げられます。

カーボンニュートラル

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることです。実際に排出される温室効果ガスの「排出量」 から、人為的な植林や森林管理などによる「吸収量」を差し引いて算出され、排出量の実質ゼロの実現を目指します。

日本政府は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことを表明しています。

カーボンニュートラルと脱炭素の違いに関して省庁などによって公式には定義されていませんが、環境省ではカーボンニュートラル実現の手段として脱炭素への移行を提唱しています。カーボンニュートラルを実現する取り組みが脱炭素であると捉えることもできますが、両者がほぼ同じ意味で使用されている場合もあります。

※参照:環境省  脱炭素ポータル「カーボンニュートラルとは

パリ協定

パリ協定とは2020年に運用が開始された、温暖化対策に関する国際的な枠組みです。パリ協定は「京都議定書」の後継として、2015年の「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で合意されました。

パリ協定では世界共通の長期目標として、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」ことを掲げています。

パリ協定の発効に際して、「55カ国以上の参加」「世界における総排出量のうち55%以上をカバーする国の批准」という2つの条件がありました。この2つの条件はCOP後にすぐに満たされ、2015年のCOPでの合意から約1年後の2016年にパリ協定が発効されました。パリ協定は排出量削減の義務を先進国にのみ課した「京都議定書」と異なり、途上国を含む全ての参加国に温室効果ガス排出削減の努力を求めています。

※参照:資源エネルギー庁「今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~

 ESG経営、ESG投資

ESG経営とは、環境や社会に配慮した適切な経営のことです。ESGはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字をとったもので、2006年当時の国連事務総長による「責任投資原則」において提唱されました。

ESG投資とはESG経営を行っている企業に投資することです。環境や社会に配慮した経営を行う企業は持続可能性が高いと評価され、市場において重視される傾向があります。

ESGは2015年のSDGs(持続可能な開発目標)の採択以降、特に広がりを見せています。ESG経営を行う企業の目的は、投資家からポジティブな評価を得て投資を受けやすくすることにあります。この投資家から集めた資金でESGを行うことで、結果的に持続可能な開発目標であるSDGsに沿った取り組みに繋がることが背景にあるといえます。

ISSB

ISSBとは「International Sustainability Standards Board」の略称で、国際サステナビリティ基準審議会のことです。ISSBは2021年、非営利組織である国際会計基準(IFRS)財団によって設立が発表され、企業のESGに関する情報開示に関する国際基準を策定しています。

ISSBは乱立していたESG関連の情報開示基準の統一化を図り、投資家の意思決定を支援することを目的としています。

ISSBが設立した国際基準は「IFRSサステナビリティ開示基準」といわれています。国内では「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案において「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」に関して言及されています。

参照:金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について

COP

COPとは「Conference of the Parties(締約国会議)」の略称で、様々な締約国会議が存在しています。特に気候変動関係に関するCOPは「国連気候変動枠組条約締約国会議」と呼ばれています。

この気候変動に関するCOPは、大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を究極の目標に採択された「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」に賛同した国が参加しています。

国連気候変動枠組条約に基づき、COPは1995年以降毎年開催されており、「京都議定書」や「パリ協定」など気候変動に関するさまざまな枠組みが決定されています。

※参照:外務省「気候変動に関する国際枠組み

ロケーション基準

ロケーション基準は電力を使用する地域の送電網の平均排出係数を用いて計算することを指します。様々な方法で発電された排出係数の平均値を用いますので計算が容易な一方、カーボンクレジットを購入しても排出量にクレジットは反映できません。

マーケット基準

マーケット基準は契約している電力プランの排出係数を使用して計算することを指します。マーケット基準では再エネ由来の電力など電力プランごとの排出係数を用いることができるので、排出係数の小さい電力を購入することが可能になります。また、購入したカーボンクレジットを反映させることも可能ですので、排出量の削減がやりやすくなります。

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)

TNFDは、2015年に設立されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の生物多様性版と呼ばれており、事業会社や金融機関が自然環境や生物多様性に関連するリスクと機会について、情報開示するフレームワークを作る取り組みのことを指しています。

「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの開示項目から成り立っています。

気候変動イニシアティブ関連

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とは、金融安定理事会(FSB)が設置した組織であり、企業に対して気候変動によるリスクや機会を認識し、経営戦略に盛り込むことを提言しています。ここで言う機会とは、気候変動によるビジネスチャンスのことを指しています。

企業がTCFDの提言に賛同の意を表明することで、気候変動をはじめとする環境問題やSDGs関連の取り組みを行う企業としてESG投融資において優位になる可能性が高まります。

なお、日本では環境省がTCFDに対する正式な賛同を表明し、民間企業の取り組みをサポートしていく姿勢を明らかにしています。

※参照:環境省「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)

SBT(Science Based Targets)

SBTとは、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のことです。企業はパリ協定の基準に基づき削減目標となるSBTを設定します。SBTを設定する場合、毎年2.5%以上の温室効果ガスの削減を目安に、5~15年先まで削減目標を設定します。

パリ協定では『世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力』を基準としているために、企業にはSBTを通してサプライチェーン排出量の削減が求められています。

SBTを設定することにより、その企業は環境に配慮しており将来にわたって持続可能であることをステークホルダーにアピールできます。企業の持続可能性をアピールすると評価の向上や、気候変動による製品の多様化、様々な面での効率化と言った機会獲得などのメリットを得られる可能性が高まります。

※参照:環境省「SBT(Science Based Targets)について

RE100(Renewable Energy100%)

RE100(Renewable Energy100%)とは企業が使用する電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す国際的なイニシアティブです。RE100はイギリスの非営利組織によって2014年に設立されました。

RE100に参加するためには企業が使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄い、さらに消費電力量が年間100GWh以上(日本企業は50GWh)であることなど、RE100が提示する3つの要件を満たす必要があります。RE100への参加企業は2023年6月現在世界全体で400以上、このうち日本企業は80社です。

RE100への参加は、環境保全への取り組みが重視されるESG投資や、再生可能エネルギーへの移行に関する政策において優位に働く可能性が高まります。日本では「非化石証書」として非化石による電源を売買する制度が生まれており、企業のRE100への参加を後押ししています。

※参照:環境省「はじめての再エネ活用ガイド(企業向け)

EP100

EP100とは100% Energy Productivityの略称で、事業におけるエネルギー効率を倍にすることを目標に掲げる企業が参加する国際的なイニシアティブです。EP100はエネルギー効率を倍増させる取り組みとして、省エネ効率の50%改善などを提唱しています。

EP100は2030年までに参加企業が100社になることを目指していましたが、2023年6月現在すでに125社の企業が参加しており目標を達成しています。125社の参加企業のうち日本企業は7社です。

EP100を経営戦略に取り入ることは、他社との差別化を図りESG投資における優位性を確保できる可能性があります。また、エネルギー効率を高めることで、環境保全に取り組みながら様々なコストを削減できる可能性があります。

※参照:JCLP 「RE100・EP100・EV100

EV100

EV100とは100% Electric Vehiclesの略称で、事業活動における移動手段を100%電気自動車にすることを目標とする企業が参加する国際的なイニシアティブです。EV100に参加する企業は世界各国合わせて130社で、うち日本企業は2023年6月現在、7社です。

EV100は社用車のEV化及び専用の充電器の設置を推進していることが参加条件となっており、再生可能エネルギーにより発電された電気の使用が推奨されています。

EV100への参加によってエネルギーコストの削減を図りながら環境保全に取り組めるだけでなく、「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」などの補助金制度や税金の減免の対象となる場合があります。

※参照:

JCLP 「RE100・EP100・EV100

総務省「車体課税(地方税)の現状

 CDP(Carbon Disclosure Project)

CDP(Carbon Disclosure Project)は気候変動に関する国際的なNGOです。CDPは「人々と地球にとって、健全で豊かな経済を保つ」ことを活動目的とし、投資家や企業、自治体に対して温室効果ガス排出削減への取り組みなどに関する情報開示を促しています。

CDPは「気候変動質問書」「水セキュリティ質問書」「フォレスト質問書」を作成し、企業からの回答を収集、開示しています。また、CDPでは質問書への回答に基づき「CDPスコア」を作成し、8段階の格付けを行っています。

なお、CDPは環境省と共催で「サプライチェーン・アジア・サミット」を開催したこともあり、投資対象やサプライヤーの取り組みを知りたい投資家や企業のみならず日本政府とも関わりがあります。

GHGプロトコル

GHG(Greenhouse Gas)プロトコルとは温室効果ガスの排出量の算定及び報告における国際的な基準です。持続可能な発展のための世界経済人会議と世界資源研究所によって1998年に共同開発されました。

GHGプロトコルでは、温室効果ガスをScope 1 2 3に区分して算定します。Scope 1~3を合算したものが「サプライチェーン排出量」となります。

【GHGプロトコルの分類】

  • Scope 1 事業者による排出
  • Scope 2 電気や燃料の燃焼など間接的な排出
  • Scope 3 1、2以外の間接的な排出

また、GHGプロトコルによって温室効果ガスの排出量を算定および報告する場合、「GHGプロトコルの報告原則」に基づいて行われます。GHGプロトコルの報告原則には「妥当性」「完全性」「一貫性」「透明性」「正確性」があり、全てを満たす必要があります。

※参照:環境省「参考資料

CCS・CCUS

CCS・CCUSは化石燃料の燃焼により大気中に放出される二酸化炭素排出量をおさえるための取り組みです。例えば、天候に左右されない火力発電は安定的なエネルギー供給源のもとになる発電方法ですが、化石燃料をエネルギー源とするため多くの二酸化炭素を排出することが課題となっています。

CCSは「Carbon dioxide Capture and Storage」の略称で二酸化炭素回収・貯留のことです。化石燃料の燃焼により排出された二酸化炭素を回収し、地中に貯留する技術を指します。

CCUSは「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略称で、二酸化炭素回収・貯蓄および活用のことです。排出された二酸化炭素を回収し、貯留するだけでなく、有効活用する点がCCSと異なります。

※参照:資源エネルギー庁「エネルギーの基礎用語~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」

制度・法令関連

ゼロエミッション

ゼロエミッションとは「廃棄物の排出(エミッション)をゼロにする」という考え方です。1994年に国際連合大学によって提唱され、脱炭素を実現する手段として企業や自治体、国が取り組みを進めています。

経済産業省は脱炭素に取り組む企業をリスト化し公表しており、この取り組みはゼロエミ・チャレンジと呼ばれています。また東京都によるゼロエミッション東京戦略のように自治体によるゼロエミッションへの取り組みもみられます。

他にもバイオマス発電やプラスチックリサイクル、住宅メーカーでの廃棄物のリサイクル活用などさまざまな業種の企業がゼロエミッションに取り組んでいます。

※参照:国連大学「Zero Emissions Forumについて

ゼロカーボン 

ゼロカーボンとは、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることです。脱炭素やカーボンニュートラル、ネットゼロの同義語として使用されており、人為的な温室効果ガスの排出量をCCS/CCUSや植物などによる吸収によってプラスマイナスゼロにした状態やその取り組みを指しています。

ゼロカーボンは地球温暖化への対策として社会全体で取り組みが進められつつあります。特に企業がゼロカーボンに取り組むことは、企業の持続可能性や企業価値の向上などに繋がる可能性があるため、参加のモチベーションとなっています。

環境省では個人や企業単位で行えるゼロカーボン実現に向けた取り組みを8種類に分類し、ゼロカーボンアクション30として具体的な30個のアクションを示しています。

カーボン・オフセット 

 カーボン・オフセットとは、個人や企業、自治体や政府などが温室効果ガスの排出量削減目標値を上回った超過排出量を、他の場所で目標値を下回った排出削減量および吸収量で埋め合わせ(オフセット)をすることです。

カーボン・オフセットの例として、組織が事業活動に伴う温室効果ガス量に見合った投資によって排出した分を代替えする方法があります。カーボン・オフセットにおける投資としては「省エネ設備の購入」「再生可能エネルギーの導入」「森林管理」などが挙げられます。

また、製品の製造および販売者、サービスを提供する者が製品やサービスのライフサイクルによって排出される温室効果ガスをクレジット(排出できる権利)として購入することで埋め合わせる方法や、クレジットを付帯したサービスやチケットを販売して購入者や来場者の日常生活に伴う温室効果ガス排出量を埋め合わせる方法もあります。

なお、「クレジット」に関しては「J-クレジット制度」をご確認ください。

※参照:農林水産省「カーボン・オフセット

J-クレジット制度

J-クレジット制度とは、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用によって削減した二酸化炭素排出量や、森林管理による二酸化炭素吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。クレジットとは二酸化炭素を排出できる権利を指しており、この権利の売買を通して企業間等で排出量の調整が行われます。

J-クレジットの創出者である企業や森林所有者などは、制度の活用によって環境保全を行う組織としてのPR効果や、温室効果ガスを排出する企業や自治体などへのクレジット売却による収益が期待できます。

J-クレジットの購入者となる企業や自治体は、環境保全への取り組みを行う企業としてのPR効果や他社との差別化が期待できるほか、企業評価の向上やビジネスチャンスの獲得につなげられる可能性があります。

※参照:J-クレジット制度ホームページ

カーボン会計(炭素会計)  

カーボン会計(炭素会計)はカーボンアカウンティングとも呼ばれており、企業などが事業活動における温室効果ガス排出量の算出および集計などを行うことです。カーボン会計は物理的なカーボン会計と財務的なカーボン会計の2つに分類して考えることができます。

物理的なカーボン会計では、事業活動によって排出している温室効果ガスの排出量を計測し、定量化できます。物理的なカーボン会計の実施により具体的な削減目標を立てることができ、削減活動を通して目標達成への取り組みが行われます。

財務的なカーボン会計では、企業が排出および削減した温室効果ガスに市場価値を与えることができます。つまり、削減目標を上回った分はクレジットとして売却し、利益を上げることができます。逆に目標値を下回った場合はクレジットを購入することで補填が出来ます。企業が財務的なカーボン会計を公開することは、投資や融資における企業価値の指標となります。

カーボンプライシング

カーボンプライシングとは、企業などが排出する二酸化炭素に価格を付けることで、排出者の行動を変容させる政策手法のことです。カーボンプライシングは主に政府が行うものと企業内で行うもの、民間セクターによるクレジット取引の3種類に分類されます。

カーボンプライシングは国や地域によって手法や水準などが異なりますが、日本政府をはじめ、各国が取り入れているカーボンプライシングの例として「炭素税」と「排出量取引制度」が挙げられます。

「炭素税」は、企業などが電気や燃料などの使用によって排出した二酸化炭素に対する課税です。また、「排出量取引制度」はあらかじめ定めた二酸化炭素排出量の上限を超過する企業と下回る企業間において、二酸化炭素排出量を取引する手法です。

※参照:資源エネルギー庁「脱炭素に向けて各国が取り組む「カーボンプライシング」とは?

カーボンアカウンティング

カーボンアカウンティングとは、企業などの組織が事業活動における温室効果ガス排出量を算出、集計、情報開示することを指しており、カーボン会計とも呼ばれています。

カーボンアカウンティングを行う場合、「GHG プロトコル」で定められた1~3のScopeごとに温室効果ガス排出量を測定します。カーボンアカウンティングの報告義務対象となるのはScope1および2です。

企業がカーボンアカウンティングに取り組むことで、サプライチェーン全体を通して温室効果ガス排出量の削減につなげられるケースや、環境保全に取り組みながらエネルギーのコスト削減や企業イメージの向上につなげられる場合があります。

エコ・ファースト制度/エコ・ファースト企業

エコ・ファースト制度とは、企業が環境大臣に自社における環境保全への取り組みを約束することにより、環境大臣が環境先進企業であることを認定する制度のことです。環境大臣から認定を受けた企業は「エコ・ファーストマーク」を使用できます。

また、エコ・ファースト企業とはエコ・ファーストマークを取得した企業のことです。エコ・ファースト企業は2023年4月時点で66社に上ります。

エコ・ファースト制度において、企業はサプライチェーン排出量の把握や地球温暖化対策、廃棄物やリサイクルの対策など個別の取り組みを設定し、エコ・ファーストの認定を受けた企業は環境省のホームページで開示されています。

低炭素建築物

低炭素建築物とは、省エネ設備や再生可能エネルギーによる発電システムの導入など二酸化炭素排出抑制の措置が行われている建築物のことです。

低炭素建築物に認定されるためには、都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)に基づく要件を満たす必要があります。建築物が低炭素建築物の認定を受けるためには以下の3つの要件を満たす必要があります。

【低炭素建築物の認定要件】

  1. 省エネ基準を超える省エネ性能を持ち、かつ低炭素化に資する措置が講じられている
  2. 都市の低炭素化促進に関する基本的な方針に照らし合わせて適切である
  3. 資金計画が適切である

 建築物の着工前に所管の市区町村に低炭素建築物の認定申請を行い、これら3つの要件を満たしていると判断された場合、低炭素建築物として認定を受けます。

低炭素建築物の認定対象となる建築物は住宅および非住宅です。低炭素建築物に認定された建築物は「税制および融資の優遇措置」を受けることができます。さらに、住宅は「1/20を限度に容積率算定時の延べ面積が非参入」となり、非住宅は「1/20を限度に容積率算定時の延べ面積が非参入」となる容積率の特例も設けられています。

※参照:国土交通省「エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要

ZEB

ZEB(ゼブ)とは、Net Zero Energy Buildingの略称で、自然エネルギーの積極的な活用及び高効率な設備システムの導入等により消費電力を抑えると共に、再生可能エネルギーにより発電を行い、消費電力と発電電力の収支がゼロになる建築物を指しています。延べ面積10,000平方メートル以上の建築物が該当します。ZEBはカーボンニュートラルや脱炭素社会に向けた取り組みのひとつとして推進されています。

ZEBの認証を取得するためには、外皮断熱や日射遮蔽、自然採光といった「省エネ」によって消費するエネルギー量を減らしながら、再生可能エネルギーを生み出す「創エネ」によって消費分のエネルギーを賄うことで、年間のエネルギー消費量を相殺します。

ZEBの定量的及び定性的な定義が環境省により公開されており、その建物の消費電力量と発電量に応じて「ZEB」「Nearly ZEB」「ZEB Ready」「ZEB Oriented」の4種類に区分されています。

※参照:環境省「ZEBの定義

ZEH

ZEH(ゼッチ)とはNet Zero Energy Houseの略称で、断熱と再生可能エネルギーによって消費電力をゼロに抑える住宅のことです。化石燃料由来の消費電力を抑え、二酸化炭素削減につなげることを目的に推進されています。

ZEHの基準を満たすためには「太陽光発電設備」「省エネ設備」「断熱設備」など、消費電力を抑える設備に加えて、創出する電力が消費電力と同等以上の発電設備を導入する必要があります。

ZEHは、エネルギー消費量の削減割合に応じて「ZEH」「Nearly ZEH」「ZEB Oriented」の3種類に分類されます。さらにZEHとNearly ZEHには上位モデルとしてそれぞれ「ZEH+」「Nearly ZEH+」があります。

建築物省エネ法

建築物省エネ法とは、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」のことです。建築物省エネ法は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みのひとつとして、建築物のエネルギー消費性能の向上を図ることを目的に2015年に制定されました。

建築省エネ法は300平方メートル以上の非住宅建築物の新築および増改築において、用途や規模等に応じて定められた省エネ基準への適合が義務となっています。省エネ基準に適合しない場合、建築基準法の確認済証を受けられません。

なお、建築物省エネ法は2022年に改正されており、改正により省エネ基準適合義務の対象が拡大されたほか、ZEH/ZEBの基準を上回る省エネ性能を確保することや、建築士による情報提供など建築物の省エネを強化する変更が加えられています。

温対法

温対法とは、1998年に制定された「地球温暖化対策の推進に関する法律」の略称で、地球温暖化に取り組むための枠組みを定めています。温対法は条件を満たす事業者のみを対象としている点で、省エネ法と異なります。

温対法では、特定排出者(温室効果ガスを多量に排出する者)に対して、「温室効果ガスの排出量の算定」及び「国への報告」を義務付けています。

また、国は地球温暖化対策を行う事業者が自らの状況と対比や対策を行ったり、国民が温暖化対策への理解の増進につなげたりできるよう、温対法によって報告された情報を集計および公表しています。

燃費法/燃料法

燃費法および燃料法とは、いずれも貨物の輸送に関するエネルギー使用量の算定方法です。

燃料法は車両の燃料使用量が把握できる場合に用いる方法で、エネルギー使用量(GJ)を「燃料使用量(kl)×単位発熱量(GJ/kl)」で算出します。

燃費法は燃費と輸送距離からエネルギー使用量を算定する方法で、「輸送距離(㎞)÷燃費(㎞/リットル)」から燃料使用量を割り出し、「燃料使用量(kl)×単位発熱量(GJ/kl)」でエネルギー使用量(GJ)を算出します。

※参照:資源エネルギー庁「法制度・ガイドライン等

GX(グリーントランスフォーメーション)

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、Green Transformationの略称で、脱炭素社会を実現するために、温室効果ガス排出量を削減しながら経済や社会のシステム全体の変革を目指すことです。

GXは、経済産業省が提唱する脱炭素社会に向けた取り組みのひとつです。GXの取り組み例として、燃焼する際に温室効果ガスを多く排出する化石燃料から環境への負担が少ない再生可能エネルギーへの転換が挙げられます。

GXを実行するために、日本政府は「クリーンエネルギー戦略」において、さまざま産業分野における省エネや燃料転換を推し進めており、脱炭素化を経済成長の機会として捉えた政策を展開しています。

 LCA(ライフサイクルアセスメント)

LCA(ライフサイクルアセスメント)とはLife Cycle Assessmentの略称で、製品やサービスのライフサイクル(企画や計画から廃棄・リサイクルまで)、もしくは特定の段階における環境負荷を評価することです。

LCAの目的は、製品やサービスの環境負担を把握して改善に活用すること及びLCAの評価結果を公開し、標品やサービスの比較や消費者に対する公平な情報提供を行うことにあります。

LCAの評価には国際規格であるISOにおいてルールが定められており、ISO規格に基づき「評価目的の設定」「インベントリ分析」「影響評価」「解釈」などのプロセスを実施します。

※参照:国立研究開発法人 国立環境研究所「ライフサイクルアセスメント(LCA) – 環境技術解説

LCCO2(ライフサイクルCO2)

LCCO2(ライフサイクルCO2)とは、建築物や製品などの建設・製造において材料を集める段階から廃棄に至るまでの二酸化炭素を算出および評価する手法のことです。LCCO2は、国際規格「ISO14000シリーズ」のひとつとなっています。

例えば、建築物の場合は「資材消費量」「物資輸送距離」、「照明器具や冷暖房設備によるエネルギー消費」などによるエネルギー消費量や、二酸化炭素排出量などを考慮して評価されます。

日用品などと比較してライフサイクルが長期にわたる建築物のLCCO2を削減するためには、運用時の二酸化炭素排出量を削減できるよう省エネ設備を導入し、LCCO2 削減効果を考慮した建築材を選ぶ必要があります。

※参照:資源エネルギー庁「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点

 LCE(ライフサイクルエネルギー)

LCE(ライフサイクルエネルギー)とは製品などが製造・販売され、廃棄されるまでに消費されるエネルギーのことです。

建築物のLCEは建築物の寿命が延びるとその分増加し、建設期間より運用期間の消費エネルギーが上回る傾向があります。LCEを低減するためには、廃棄時の二酸化炭素排出量が少ない断熱材の導入や、省エネ機器を導入した空調・照明設備の利用が効果的です。

LCEは主に建築物の建築及び運用の際の消費エネルギーに対して使用されており、国土交通省では公共施設の地球温暖化対策に有効な「LCEM(ライフサイクルエネルギーマネジメント)手法」や「LCEMツール」などを公開しています。

※参照:国土交通省「ライフサイクルエネルギーマネジメント(LCEM)

 LCC(ライフサイクルコスト)

LCC(ライフサイクルコスト)とは、建築物や製品などの建設および製造計画から維持管理、廃棄までに要する費用の総額のことです。

建築や製造の計画段階でLCCを把握するとLCCの低減化を図れる場合があります。それは、建築材の耐久性や断熱性能を考慮し、省エネ機器を導入することで用水光熱費や維持費を削減できるためです。

建築物の場合、LCCのウエイトを占める割合が多いといわれているのが維持費です。建築物を運営する場合、事前にLCCのシミュレーションや算出によって削減できるコストを把握し、的確なメンテナンスを行うことでLCCを最適化できます。

CASBEE(建築環境総合性能評価システム)

CASBEE(建築環境総合性能評価システム)とは、建築物の環境性能を評価するシステムです。建築物の省エネ性や環境負荷を考慮した各種資材の使用だけでなく、室内の快適性や景観など周辺環境への配慮などを含めた総合的な評価手法となっています。

CASBEEは、建築物の環境への影響を客観的に評価することを目的に、2001年国土交通省と一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センターの産官学共同プロジェクトによって開発されました。CASBEEは3つの理念に基づき、建築物を5段階で評価します。

【CASBEEの理念】

  1. 建築物のライフサイクルを通じた評価ができること
  2. 「建築物の環境品質(Q)」と「建築物の環境負荷(L)」の両側面から評価すること
  3. 「環境効率」の考え方を用いて新たに開発された評価指標「BEE(建築物の環境性能効率、Built Environment Efficiency)」で評価すること

また、CASBEEには建築物のデザインプロセスにおいて活用できる評価ツールがあり、建築物のライフサイクルに対応しており、「企画」「新築」「既存」「改修」の4つツールで構成されています。

※出典:一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター「CASBEEの概要

LEED(リード)

LEED(リード)とは、グリーンビルディング(環境を配慮した建物)を評価する国際的な認証制度のことです。LEED認証は、ビルやインテリアの設計及び建築やビルの運用管理など5つの対象別に分類されます。

LEEDでは建物の環境負荷と利用者に対する健康の観点から、以下の9つのカテゴリにおいて評価されます。評価項目は、建物に付随する環境負担に関する項目以外にもデザインや立地なども対象です。

【LEED認証の評価項目】

  • 統合的なプロセス
  • 立地と交通
  • 持続可能な敷地
  • 水利用効率
  • エネルギーと大気
  • 材料と資源
  • 室内環境品質
  • 革新性
  • 地域的な優先事項

さらに、LEED認証は評価カテゴリごとの獲得ポイントに応じて4つのレベルに分類されます。最もポイントが少ない「標準認証」から、ポイントが増えるに従い「シルバー」「ゴールド」「プラチナ」の順に格付けされます。

※参照:Green Building Japan 「LEEDとは

グリーン電力証書

グリーン電力証書は再生可能エネルギーにより発電された電力であることを証明する証書で、一般財団法人日本品質保証機構(JQA)により認証審査が行われています。JQAにより公平な立場から、実際に再生可能エネルギーから発電されていることが審査され、認証されるとグリーン電力証書が発行されます。

再エネ電⼒証書

化石燃料を使用した火力発電は発電時にCO2を発生しますが、再生可能エネルギーを使って発電した電気はCO2を排出していません。

このため、地球温暖化の観点から再エネ由来の電気には地球温暖化防止の価値があると考えられます。
この価値を取引できるように証書にしたものが再エネ電力証書です。

この証書を購入することで再エネ由来の電気を使用したとみなされます。日本国内にはグリーン電力証書や非化石証書があります。

バーチャルPPA

バーチャルPPAは英語でVirtual Power Purchase Agreementで仮想電力購入契約と訳されます。

バーチャルPPAでは再エネ発電事業者と電気購入者が長期的に売買契約を結び、電力使用者に再エネによる発電で得られた再エネ電力証書を売買します。
この時、契約金額と市場価格の差金を相互に補填し合うため、契約期間においては価格変動のリスクをシェアすることが出来ます。

実際の電力を売買せずに再エネ電力証書を売買しており、電気購入者は再エネ電力証書を購入することにより電力市場で購入した電力も再エネ由来の電力を使用していることとみなすことが出来ます。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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