業界事例

時計 2024/5/21 アップデート 2024/7/11

三井不動産グループのカーボンニュートラルな街づくりと脱炭素計画実現への取り組み

この記事では、持続可能な環境社会を実現する方法として、三井不動産グループが掲げるカーボンニュートラルな街づくりと、「脱炭素社会の実現に向けた行動計画」実現への取り組みを紹介します。

三井不動産グループはサプライチェーン全体で脱炭素に取り組んでおり、カーボンニュートラルの先進事例となります。脱炭素の取り組みを企業全体で行いたい場合、三井不動産グループの事例が参考になるでしょう。これから脱炭素の対策を検討されている企業や担当者は、ぜひこの機会に脱炭素社会の実現に向けたデベロッパーの視点を参考にしてみてはいかがでしょうか。

はじめに

サプライチェーン全体でCO2排出量削減をするには「カーボンニュートラル」の取り組みが必要です。全世界で実質CO2排出量のゼロを目指しており、各国産業界の重要課題となっています。

画像出典:https://www.mitsuifudosan.co.jp/esg_csr/news/2024/SDG_vol16/

グローバル企業のカーボンニュートラル取り組み事例を見ると、SCOPE1・2・3のCO2排出量を開示しています。三井不動産グループでは「街づくりのプラットフォーマー」として、上記図で解説している川上・川下に働きかけ、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを推進している国内での先進事例となっています。国内の中小企業のみならず大企業でも脱炭素やカーボンニュートラルに取り組んでいる組織は少数であり、中でもSCOPE3まで取り組んでいる企業は少数となっています。

また、「2050年までにグループ全体の温室効果ガス排出量をネットゼロにする」グループ目標達成に向けて排出量が90%を占めるSCOPE3を削減することが、大手デベロッパーやゼネコンなどの重要課題となるのです。

画像出典:https://www.mitsuifudosan.co.jp/esg_csr/news/2024/SDG_vol16/

三井不動産グループの脱炭素実現に向けた計画

三井不動産グループの脱炭素社会に向けた計画の一部を紹介します。

グループ全体の9割を占めるSCOPE3(他者排出分の温室効果ガス)への対処

脱炭素計画の実現を握るカギは、三井不動産グループで排出量する温室効果ガス全体(総量550.3万トン)の9割を占めるSCOPE3(他者排出分の温室効果ガス排出量)への対処です。

SCOPE3とは、2011年に策定された国際的な温室効果ガスの算定基準である「GHG(Greenhouse Gas)プロトコル」分類の1つです。SCOPE3は、事業活動に関係するあらゆるサプライヤーからのGHG排出量を指します。

三井不動産グループの事例におけるSOCPE3に関わるサプライチェーンは、建築物建設に伴う多種多様な協力会社や、部材などの「川上」と呼ばれる部分と「オフィステナント」「商業施設テナント」「住宅」の川下部分です。

この二つの領域に対する削減計画の立案と対処が、カーボンニュートラル実現に必要不可欠となっています。

グループ内排出量ネットゼロに向けた5つの脱炭素計画とは

2050年度までに温室効果ガス排出量をネットゼロにするため、三井不動産グループでは脱炭素計画における次の5つの重点施策(2021年度策定)が実施されているため、それぞれ紹介します。

1.新築・既存物件における環境性能向上

既存物件に対しては、省エネ性能向上のリニューアルや再生可能エネルギー創出をおこない、新規物件ではZEB(Net Zero Energy Building)やZEH(Net Zero Energy House)など、高い環境性能を誇る物件で省エネを実現した事例です。「東京ミッドタウン八重洲」や「三田ガーデンヒルズ」を含め、2021年の脱炭素行動計画策定後の着工物件は、原則全物件でZEB・ZEH水準を達成しています。

2.物件共用部・自社利用部の電力グリーン化

現在、再生可能エネルギーの非化石証書を利用し、系統電力からの通常電力とセットで購入する電力グリーン化を推進しています。

現状、日本三大都市圏(首都・中部・関西)で、自社保有約180施設を対象にグリーン電力化を拡大し、2022年度までに首都圏25棟の電力グリーン化が完了しており、再生可能エネルギー供給体制を整備しています。

3.入居企業・購入者の皆様へのグリーン化メニューの提供

電力グリーン化サービスを入居企業や住宅購入者に提供し、2022年度までに62件の入居企業がグリーン電力を導入した結果となっています。

4.再生可能エネルギーの安定的な確保

苫小牧や八戸など現在全国5か所(総面積約94ha)にある太陽光発電所に加え、2022年度には、年間2,300万キロワットを発電可能なメガソーラー開発用地を確保しました。

これにより、年間1万トンのCO2が削減可能で、発電した電力は東京ミッドタウン日比谷をはじめ、北海道や中国地方の保有施設への送電を想定しています。2030年度には、2019年度の発電量のおよそ5倍にあたる、年間3.8億キロワットの電力を賄う計画となっており国内最大級のプロジェクトとなっています。

5.建築時のCO2排出量削減に向けた取り組み

サプライチェーンの川下領域だけの努力では、温室効果ガス排出量の低減に限界があります。そこで、サプライチェーンの川上領域である、原材料の製造施工などの「モノづくり」の工程から排出されるCO2を削減し、脱炭素化に向けた適切な指標づくりにも着手しています。

その指標の1つが「建設時GHG排出量算出マニュアル」です。これにより、工種や資材別にCO2排出量の見える化が可能となりました。今後もGHG排出の見える化ルールの形成と普及に取組んでいきます。

SCOPE3(他者排出分の温室効果ガス)に必要な4つのアプローチ

SCOPE3(他者排出分の温室効果ガス)に必要な4つのアプローチと、その進捗状況を解説します。

画像出典:https://www.mitsuifudosan.co.jp/esg_csr/news/2024/SDG_vol16/

具体的なアプローチは次のとおりです。

【サプライチェーン川上領域へのアプローチ】

  • 1.街づくりのサプライチェーンに関わる企業への働きかけと、GHG排出の見える化
  • 2.脱炭素時代の旗印となる「新しい建築物のあり方」の提案

【サプライチェーン川下領域へのアプローチ】

  • 3.入居テナントや生活者の意識への働きかけと行動変容の促進
  • 4.脱炭素イノベーション創出支援

1.街づくりのサプライチェーンに関わる企業への働きかけと、GHG排出の見える化

GHG排出量を削減するため、GHG排出量の見える化に取り組んでいます。サプライチェーンの川上領域におけるSCOPE3の排出量割合は65%(SCOPE3に相当する割合(90%)のうち)に及んでおり、主に建設会社や資材メーカーなどから排出されています。その第一歩として、2023年10月以降に着工する全物件に対し、先述の「建設時GHG排出量算定マニュアル」を活用したCO2排出量算定を義務化しています。

2.脱炭素時代の旗印となる「新しい建築物のあり方」の提案

木材活用や木材が吸収する炭素固定化を促進する技術を採用し、脱炭素時代における木造賃貸オフィスビルをはじめとした、イノベーティブな建物作りを提案しています。

その代表例が、日本橋本町にて着工した木造賃貸オフィスビルです。竣工時期は2026年9月予定で、高さ84m、地上18階、延べ床面積はおよそ2万8千平方メートルと、木造高層建築物としては国内最大・最高層であり、国内最大級の事例となっています。

3.入居テナントや生活者の意識への働きかけと行動変容の促進

サプライチェーンの川下領域における、SCOPE3の排出量割合は約20%(SCOPE3に相当する割合(90%)のうち)ですが、販売住宅からの長期的なCO2排出量を考えると、削減優先度の高い領域でしょう。

家庭からのCO2排出量の高精度な把握は難しいことが通説ですが、「くらしのサス活」サービスを通じて得たデータの有効活用で、削減ポテンシャルの把握や効果的対策の立案が可能です。

4.脱炭素イノベーション創出支援

脱炭素イノベーション創出支援の具体的事例として「ペロブスカイト太陽電池」の開発を京都大学と連携しておこなっています。この太陽電池は日本で発明され、世界中で実用化に向け開発が進んでいます。

他にも東京大学と連携し、木造木質建築に関する下記の取り組みもおこなっています。

  • 木材の香や木材の床が睡眠の質を改善する仮説研究
  • 木の匂いによる刺激で認知症の原因となる脳内の異常タンパクの削減に関する仮説研究

大学とも研究開発を積極的に行い、業界を推進している企業事例となります。

 ※本記事中の単語等の表記は、三井不動産グループの表記に合わせています。

まとめ

今回は三井不動産グループのカーボンニュートラル実現への取り組みを紹介しました。

SCOPE1からSCOPE3までサプライチェーン全体で排出削減が進む、グローバルスタンダードに対して、日本国内では三井不動産グループが脱炭素に関するリーディングカンパニーとなっています。また、建設業界においては大手ゼネコンなども時代の潮流である脱炭素の取り組みを重要視しており、国や自治体の動きや方針に対応しつつあります。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO₂排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO₂排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるディベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO₂排出量の管理・削減は喫緊の課題です。
リバスタでは、建設業界のCO₂対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業界に特化したCO₂排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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