業界事例
2024/10/22 2024/11/14
鹿島建設のCO2サプライチェーン排出の長期削減計画策定と低炭素コンクリート技術
鹿島建設株式会社(以下、鹿島建設)は2050年までにサプライチェーン排出(Scope3)をゼロにする計画を同社の長期環境目標である「鹿島建設ビジョン2050plus」に盛り込みました。これにより、鹿島建設では将来的なカーボンニュートラル(100%削減)を目指して、サプライチェーン排出量がこの計画に従い削減されていくことになります。
本記事では、そのほか、鹿島建設の低炭素コンクリート技術に関するニュースについてまとめました。ご参考ください。
鹿島、スコープ3を30年度25%削減
鹿島は2021年度を基準年として、スコープ1,2は2030年度▲42%、スコープ3は2030年度25%の目標を設定し、2023年にSBTを取得しました。
引用:鹿島建設株式会社
・編集部の解説
建設業界のサプライチェーン排出では、Scope3のカテゴリ1、つまり購入した建築資材等からの排出が多く、計画達成のためには建築資材製造時の排出を減らす必要があります。よく使用される建築資材にコンクリートがありますが、コンクリートは原料の一つであるセメントの製造時に多量のCO2を排出するために、コンクリート製造時の排出量が多くなっています。
鹿島建設では製造時にCO2を吸収・固定する環境配慮型のコンクリートや再生セメントを開発しており、従来のコンクリートからの代替えが進んでいます。このコンクリート製造時の排出削減には様々な新技術が投入されていますので、最近報じられたニュースを通して鹿島建設の低炭素コンクリートに関する技術を見てみましょう。
環境配慮型コンクリートの採用により、施工時のCO₂排出量を31トン削減
鹿島(社長:天野裕正)は、グループ社員用の実務体験型研修施設「鹿島テクニカルセンター」(横浜市鶴見区)の建設にあたり、自社開発した2種類の環境配慮型コンクリートを採用し、建設時におけるCO₂排出量を約31トン削減しました。
これは高さ20mの杉の木2,200本が1年間に吸収する量に相当します。採用したコンクリートは、戻りコン(※1) を原材料として再利用した「エコクリート®R3(アールスリー)」(※2)と、製造時にCO₂を吸収・固定する「CO₂ -SUICOM®(シーオーツースイコム)」(※3)です。
今回、それぞれのコンクリートを新たな用途に採用したことで、環境配慮型コンクリートの実用化の幅が広がりました。今後当社は、環境配慮型コンクリートのさらなる高度化および用途拡大を図ることで、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
※1 受け入れ検査に使用したものなど、やむを得ない理由から使用されずに工場に戻される生コンクリート
※2 2012年度から環境省環境研究総合推進費(3J153001)研究助成による、鹿島、三和石産株式会社、東海大学の3者共同開発
※3 鹿島、中国電力株式会社、デンカ株式会社、ランデス株式会社の4社共同開発
引用:鹿島建設株式会社 2023年7月4日「環境配慮型コンクリートの採用により、施工時のCO₂排出量を31トン削減」
・編集部の解説
環境配慮型コンクリート「CO₂-SUICOM®」(以下、SUICOM)は鹿島建設が低炭素コンクリートの主力として開発が行われており、すでに実用フェーズに入っている段階です。
このSUICOMにはバリエーションが出来つつあり、3Dプリンターと組み合わせ、設計通りの形状のコンクリートの製造やテトラポッドの製造などを行っています。これはSUICOMが様々なアプリケーションに対応できることを示しているといっていいでしょう。
カーボンネガティブコンクリートを横浜市立元街小学校に導入~日本初、都市ガス機器利用時の排気を利用した「CO₂-SUICOM🄬」の実用化~
東京ガス株式会社(社長:笹山 晋一、以下「東京ガス」)、鹿島建設株式会社(社長:天野 裕正、以下「鹿島」)、日本コンクリート工業株式会社(社長:塚本 博、以下「日コン」)及び横浜市は、このたび、都市ガス機器利用時の排気に含まれる低濃度のCO₂を吸収・固定化して製造したカーボンネガティブコンクリート「CO₂-SUICOM🄬」(以下「本製品」)を横浜市立元街小学校(以下「元街小学校」)に設置した太陽光発電設備の基礎ブロックの一部として導入しました。
今回の導入は、東京ガスが受託した横浜市の「市有施設への再生可能エネルギー導入事業」において実施したものです。本製品は、東京ガス、鹿島及び日コンが製造し、実用化は日本初となります。
引用:鹿島建設株式会社 2023年4月13日「カーボンネガティブコンクリートを横浜市立元街小学校に導入~日本初、都市ガス機器利用時の排気を利用した「CO₂-SUICOM🄬」の実用化~」
・編集部の解説
横浜の小学校に設置されている太陽光発電設備の基礎ブロックの一部にSUICOMを使って施工したことがリリースされており、実用化が進んでいることがわかります。
複数の生コン工場で発生した戻りコンから再生セメント「Cem R³®」を製造する体制を構築「Cem R³」を用いた環境配慮型コンクリート「エコクリート®R³」を共同住宅の躯体に初採用
鹿島(社長:天野裕正)は、神奈川県内の複数のレディーミクストコンクリート工場(以下、生コン工場)で発生した戻りコンから、スラッジ再生セメント「Cem R³」(セムアールスリー)を製造する体制を構築しました。
さらに、その「Cem R³」を用いた環境配慮型コンクリート「エコクリートR³」(アールスリー)を、当社が神奈川県横浜市内で建設を進めている共同住宅の柱・梁・床に採用しました。
「エコクリートR³」は資源循環を図りながらCO₂排出量を抑えることができる環境配慮型コンクリートで、住宅用途建物への採用は初めてです。鹿島は今後、「エコクリートR³」の採用先の拡大と既開発の環境配慮型コンクリートの環境性能向上をさらに進め、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
引用:鹿島建設株式会社 2023年12月6日「複数の生コン工場で発生した戻りコンから再生セメント「Cem R3®」を製造する体制を構築」
・編集部の解説
「戻りコン」とは、生コンを製造、販売した際に使用されず工場に戻ってきた余ったコンクリートです。この戻りコンは時間が経っているのですでに固化が始まっています。固まった場合、粉砕して廃棄すると多額の費用がかかってしまうため頭を悩ませているのが、事業者たちの現状です。
鹿島建設はこの問題を解決するために、戻りコンを再利用して再生セメント「Cem R³®」を製造しています。そして、このCem R³®を製造する体制が整ったと言うリリースがありました。Cem R³®の製造時にはCO2が用いられているので、大気中のCO2を利用することでカーボンネガティブとなります。これらのカーボンネガティブのコンクリートが使用されることで、鹿島のサプライチェーン排出量は低下する可能性があります。
まとめ
鹿島建設では、大気中のCO2をセメントに吸収させることでCO2排出量を削減する商品の開発に力を入れていることが分かりました。
これらの製品は開発段階を終え、実用段階に来ており将来的に鹿島建設のサプライチェーン排出量を大きく低下させるポテンシャルを秘めているといえます。
※2024年5月時点の情報で作成しております
建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO₂排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO₂排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO₂排出量の管理・削減は喫緊の課題です。
リバスタでは建設業界のCO₂対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO₂排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。
この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
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