業界事例
2024/8/23 2024/8/21
企業ブランディングと従業員エンゲージメント向上!古郡建設の脱炭素社会へ向けた企業姿勢
はじめに
大正3年(1914年)、埼玉県深谷市で創業した古郡建設は2024年に創業110周年を迎えました。建築・土木・リニューアル事業を中心に、建設と不動産のトータルプランニングやコンサルティング事業を展開しています。近年は、企業ブランディング活動の中に脱炭素社会実現に向けた施策を取り込むことで、社員の意識を高めるとともに、リクルート活動にも好影響を与えています。企業ブランディング活動を始めたきっかけ、脱炭素への取り組み、環境問題への意識改革がリクルート活動にどのような影響を及ぼしているか。
代表取締役社長の古郡栄一氏をはじめ、SDGs・ブランディング活動を推進するデザインマネジメント部の渡辺文昭氏、関矢祐葵氏、福島千紘氏、若手社員代表として土木部の三ツ井瑠星氏にお話を伺いました。
建設業として環境のために何ができるか
古郡氏が、SDGsや脱炭素に取り組むようになったきっかけは、コロナ禍で外出もままならない時期に今後の会社のあり方について模索したことでした。「業界的に少し閉塞感があった時期に、採用面も含め社員のモチベーション向上を考えてSDGsに注力し始めました。その中で、本当にやりたいことは何かを自問自答する機会があり、社会や人々に対して意味のあることに取り組みたいという気持ちに行きつきました」(古郡氏)
代表取締役社長 |
折しも業界内ではCO2排出量削減が喫緊の課題ともなっており、脱炭素社会に向けた施策をブランディング活動と一体化して推進する方針を打ち出しました。SDGsとブランディングの両方を担うのがデザインマネジメント部(DM部)です。
DM部の渡辺氏は「『経営者の頭の中の見える化』がミッション。ブランディングにはインナーとアウターの2種類があり、両者のバランスを常に意識しています。ブランディング=ファンづくりと考えているので、自社スタッフはもちろんのこと、ステークホルダーも含め、古郡という会社を好きになってもらう仕組みづくりを念頭に活動しています」と話します。
象徴的な取り組みが2021年4月からスタートしたSDGs CARAVANです。DM部の社員が各現場を回り、現場が発案した環境配慮の取り組みなどをSDGsの17の目標に分けて評価し社員の意識を高める活動です。とりわけSDGsや脱炭素はブランディングと非常に親和性が高いと感じています。「それぞれを分けて考えるのではなく、全てを組み合わせて展開・発信することで、環境意識の高い企業・団体や、社会貢献に積極的で優秀な学生など感度の高いステークホルダーに響くと思います」(渡辺氏)
2022年には、取り組み目標を11項目にまとめた「FURUGORI SDGs Action」を公表し、ポスターや横断幕にして各部署に掲げています。その中では、2050年にCO2実質排出量ゼロを目指すことを示し、具体策として、ハイブリッド重機の使用やアイドリングストップの推進、植樹などの施策を挙げています。
現場を回るSDGsキャラバン
出典:古郡建設Webサイト http://www.furugori.co.jp/column/album/sdgs-caravan%E5%A0%B1%E5%91%8A-12/
脱炭素の取り組みがリクルート活動への好影響に
脱炭素などへの取り組みを前面に押し出すようになると、会社の姿勢に共感した学生からの応募が増え始めました。入社2年目の三ツ井氏もそうした若手世代の1人です。
「太陽光発電事業などの脱炭素社会実現に向けた積極的な取り組みをインターンシップで知りました。Z世代の次、概ね2010年代以降に生まれた世代のα世代(今の小中学生)は授業の中でカーボンニュートラルなどについて学ぶことが当たり前になっています。そんな彼らが企業選びをする際に、施策のない企業は選ばれないと思います」会社の積極姿勢は、働く上でのモチベーションにもつながっているようです。
「お客様や取引先の方から『古郡さんいろいろ取り組んでいて素晴らしいね!』などとお声がけいただく。社会に貢献できていることを実感できるので楽しく仕事ができます」(三ツ井氏)
土木部 |
DM部の関矢氏もリクルート活動への好影響を肌で感じています。「採用の現場では、人が入ってこない、入ってきても辞めてしまうという点が悩みの種でした。脱炭素など環境に配慮した企業というブランディングを進める中で、働き方の見直しや改革にもつながり、弊社のPRポイントを、自信を持ってアピールできるようになりました」
福島氏も「採用現場で学生さんと接すると、学校の授業などを通して脱炭素などの言葉が身近になっている世代なので、弊社の取り組みに魅力を感じました、と感想をいただく機会が増えています」と話します。
リクルート活動の変化は離職率の低下にもつながっています。「会社の情報を学生にきちんと発信しないまま採用すると、入社後にギャップが生じて辞めてしまう。ブランディングを始めて会社の中身をフルオープンで見せることによって、ギャップを感じて辞める人が少なくなりました」(渡辺氏)
現場でのインターンシップの模様
採用数と離職率の推移
デザインマネジメント部長 渡辺 文昭 氏【写真右】 |
地域に、街に好影響を与えられる会社に
こうした取り組みは、社内にも少しずつ浸透しています。年に一度の社員アンケートでは、「会社全体で社会貢献活動を行っていることがモチベーションにつながる」「会社の強みになってきている」「建設業という環境や社会と直接関わりがある立場だからこそもっと意識を上げていかなければならない」といったポジティブな意見が目立ちます。
渡辺氏は「脱炭素への取り組みに当初は戸惑っていたスタッフも、業務だけでなくプライベートな部分まで含めて意識が上がっていると感じます。ただ正直、スタッフの中で熱量の差があるのは事実で、それを引き上げるのが今後の課題です」と指摘します。
古郡氏は「弊社の中だけにとどまらず、地域や街づくりなどにもいい影響を与えられる、インパクトを与えられるような会社にしていきたいと考えています。今は、環境への配慮を考えたり、未来を考えたりできない会社は地域社会にも必要とされない時代になっていると思います。建設会社の仕事は、もの作りや開発などプラスの側面はもちろんありますが、一方で自然環境への影響は否めない。これからの建設業のあり方としては、環境と向き合い、次の世代に良い形でバトンタッチしていく役割を担っていると考えていますので、そのためにできることを少しずつ進めていきたいと思います」と話していました。
古郡建設のSDGsの取り組みを紹介するポスター
終わりに
「人が集まらない」「離職率が高い」―地方の建設業関係の会社の中には、同じ悩みを抱えているところが多いのではないでしょうか。古郡建設では、企業ブランディングを進めるなかで、自社の強みを整理し、情報をオープンにすることで、マッチする人材を確保することに成功しています。その一つの要素として、脱炭素社会実現への取り組みをアピールしています。
脱炭素というと、現場への負担にならないかという懸念がつきまといますが、古郡建設はそこを自社のアピールポイントにすることで、リクルート活動だけでなく、社員のモチベーション向上にもつなげています。
CO2排出量削減を単なる数値目標とするのではなく、自社のブランディングに取り込むという戦略は、今後のカーボンニュートラル推進を考える企業にとって参考になる事例ではないでしょうか。
※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年6月)のものです。
この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
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