基礎情報
2023/8/16 2023/11/13
脱炭素社会に向けて企業が取り組むべきことは?必要な理由や事例も解説
日本は2050年カーボンニュートラルの達成を目標としており、脱炭素社会に向けた様々な取り組みが進んでいます。
そんな中、企業として取り組むべきことは何か、確認しておきたい方もいることでしょう。
この記事では脱炭素社会に向けた企業の取り組みに関して解説します。
脱炭素社会に向けた取り組みが必要とされる理由や事例なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
脱炭素社会に向けて取り組む企業は増加している
企業は脱炭素に向けた取り組みを行うことで、環境保全に貢献しながらエネルギーコストの削減や企業価値を向上させることができます。
そのため、脱炭素社会に向けて取り組む企業は増加しています。
たとえば、経済産業省が公表している脱炭素社会の実現に向けて取り組む「ゼロエミ・チャレンジ企業」は2020年の第一弾は325社でしたが、2021年の第二弾では624社でした。
「ゼロエミ・チャレンジ企業」は、投資家等への情報提供を目的としたプロジェクトです。
また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同する国内企業は2023年3月27日現在、1,211社です。
前年の2022年9月22日時点は1,062社と、気候変動に対応した経営戦略の必要性などTCFDによる提言を支持する企業が増加しています。
なお、TCFDの提言に賛同する国内企業数の最新データを知りたい方は経済産業省の「日本のTCFD賛同企業・機関」を確認してみてください。
脱炭素社会に向けて企業が取り組む理由
脱炭素社会に向けた取り組みは、環境保全や企業活動に有益です。企業が取り組む理由は複数あります。
【企業が脱炭素に取り組む理由】
- エネルギーコストを削減できる
- ESG投資の指標になる
- 環境保全に貢献できる
エネルギーコストを削減できる
脱炭素に企業が取り組むことでエネルギーコストを削減できます。脱炭素技術は従来技術よりもコスト優位なものが多いからです。
たとえば、経済産業省の資料によると企業がエネルギーコストを削減する方法として、「バッテリー電気自動車(BEV)の活用」「商業ビルや産業中および低温熱需要におけるヒートポンプの活用」「再生可能エネルギーの活用による電力の脱炭素」が挙げられます。
また、エネルギーコストの削減においては、事業における設備やプロセスの改善も必要となります。
既存設備を省エネ効果のある設備に交換したり、再生可能エネルギーを導入したりし、生産プロセスを改善する方法があります。
なお、再生可能エネルギーや省エネ設備の導入には初期コストがかかる点がデメリットとなる場合もあります。
ただし、脱炭素によって消費エネルギー量を削減できるため、長期的にはコスト減を図れるでしょう。
ESG投資の指標になる
脱炭素社会に向けて企業が取り組む理由として、脱炭素がESG投資の指標になることも挙げられます。
ESG投資とはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)を考慮した企業への投資活動のことです。
企業は社会関心度の高い脱炭素の取り組みによって、企業の将来性や持続性を評価されることとなり、ESG投資家の投資対象となることで企業価値が向上すると考えられます。
なお、脱炭素経営を表明し、地球温暖化防止に貢献することによって、脱炭素銘柄としての成長も期待できるでしょう。
脱炭素銘柄とは脱炭素に関連する事業を行う上場企業の株を指し、脱炭素銘柄への投資はESG投資に含まれます。
環境保全に貢献できる
脱炭素社会に向けて企業が取り組む理由として、環境保全に貢献できる点が挙げられます。
脱炭素に向けた取り組みは世界的に行われており、国や自治体だけのものではなく、企業として取り組むことで地域社会だけでなく地球温暖化防止にも貢献できるからです。
また、環境保全に貢献できることで企業価値を高めることにもつながります。
脱炭素を通じた環境保全を行う企業は投資家や消費者から評価される傾向にあり、ビジネスチャンスの創出や経営の維持においても有利であるといえます。
なお、2020年度の消費者庁の調査では、環境保全に関心を持っている消費者は60.6%でした。
2016年度には37.2%だったことからも、消費者の環境保全に対する関心は高まっており、脱炭素を進めることで消費者の関心を意識した企業活動を行えるでしょう。
参照:倫理的消費(エシカル消費)」に関する 消費者意識調査報告書|消費者庁
脱炭素に向けて企業が行うべき取り組み
脱炭素を実現するために企業が行うべき取り組みは複数あります。
また、企業規模や業種によっても脱炭素に向けた取り組みの内容は異なります。
【企業が行うべき脱炭素への取り組み例】
- 再生可能エネルギーの活用
- サプライチェーン排出量の把握
- カーボンオフセットの強化
再生可能エネルギーの活用
脱炭素に向けて企業が行うべき取り組みの1つが太陽光・風力・バイオマス発電など再生可能エネルギーを活用する方法です。
再生可能エネルギーは、発電時に温室効果ガスを排出しないため、脱炭素社会において必要とされています。
たとえば、使用する電力を太陽光発電システムによって発電した電力に置き換えることで消費エネルギー量や温室効果ガスの排出量を削減できます。
なお、使用電力を100%再生可能エネルギーに置き換えた企業はRE100への加盟が可能です。
国際的なイニシアティブであるRE100参加することによって環境先進企業として認められ、投資家からの評価が一層高まる可能性があります。
建築業界では再生可能エネルギーと省エネ設備を活用して、住宅や建築物の年間消費エネルギー量を実質ゼロにするZEBやZEHに取り組んでいます。
ZEBに関して知りたい方は「ZEBとは?知らないと乗り遅れるZEBの基礎知識」「ZEHとはどんな住宅?いま知るべき、ZEHの基礎知識」を参考にしてください。
サプライチェーン排出量の把握
企業が行うべき取り組みとしてサプライチェーン排出量の把握があげられます。
サプライチェーン排出量とは、事業者のみならず事業活動に関係するあらゆる温室効果ガス排出量を合計したものです。
たとえば、建設業においてプレハブ住宅を建築する場合、サプライチェーン排出量の対象となるのは住宅建設の原材料調達から生産および施工、アフターサービス、リフォーム、使用後の解体で発生する温室効果ガスです。
サプライチェーン排出量を把握することで優先的に削減するべき作業工程を明確化できます。
削減対象を明確にして把握することによって、企業における環境負荷削減戦略や事業戦略など長期的な計画につなげられるでしょう。
なお、サプライチェーン排出量の算定は、CO2排出量計測管理サービスを活用することで作業コストを削減できます。
事業活動に関係する温室効果ガス排出量の算定を行う際は、CO2排出量計測管理サービスの活用を検討してみてください。
建設業界のCO2管理にはリバスタも取り組んでおります、お気軽にご相談ください。
カーボンオフセットの強化
企業が行うべき取り組みとしてカーボンオフセットの強化があげられます。
カーボンオフセットとは、事業活動に関連する温室効果ガスを削減したうえで、削減しきれない分をオフセット(埋め合わせ)することです。
【カーボンオフセットの種類】
種類 | 取り組み内容 |
オフセット製品・サービス | <取り組みを行う者> 製品の製造および販売者、サービスを提供する者 <取り組み内容> 販売及び提供する製品やサービスのライフサイクルによって排出される温室効果ガス排出量をクレジットで埋め合わせる |
クレジット付製品・サービス | <取り組みを行う者> 製品の製造および販売者、サービスを提供する者、イベントの主催者等 <取り組み内容> 製品やサービス、チケットなどにクレジットを付帯して販売し、購入者や来場者の日常生活に伴う温室効果ガス排出量を埋め合わせる |
自己活動オフセット | <取り組みを行う者> 組織など <取り組み内容> 事業活動に伴う温室効果ガス量を自らがクレジットで埋め合わせる |
会議・イベントのオフセット | <取り組みを行う者> イベントの主催者等 <取り組み内容> コンサートやスポーツ大会、国際会議等の開催に伴う温室効果ガス量をクレジットで埋め合わせる |
寄付型オフセット | <取り組みを行う者> 製品の製造および販売者、サービスを提供する者、イベントの主催者等 <取り組み内容> 消費者に対し、地球温暖化防止活動への貢献・資金提供等を目的としたキャンペーンなどを通じて参加者を募り、クレジットを購入・無効化する |
参照:カーボン・オフセット:農林水産省
たとえば、企業が強化できるカーボンオフセットの方法として、温室効果ガスの排出削減量の購入や植林や環境保護への寄付が挙げられます。
ほかにも、製品やサービスの提供やイベント開催時に行えるカーボンオフセットの取り組みがあります。
製品のライフサイクルやイベント開催にともなう温室効果ガス排出量をクレジットで埋め合わせたり、キャンペーンへの参加を募ったりして埋め合わせる方法です。
なお、企業が強化できるカーボンオフセットの種類は業種によって異なります。
事例を含めて興味がある方は、農林水産省「カーボン・オフセット」から取り組み事例を確認してみてください。
脱炭素社会に向けた企業の取り組み事例
脱炭素社会に向けてさまざまな企業が取り組みを進めています。
【企業の取り組み事例】
事業者名 | 取り組み内容 |
八洲建設株式会社 | <取り組み内容>
|
鹿島建設 | <取り組み内容>
|
参照:
中小規模事業者向けの脱炭素経営導入事例集|環境省
グリーン・バリューチェーンプラットフォーム 取組事例 2017年度 鹿島建設株式会社|環境省
たとえば、八洲建設株式会社では、建設現場におけるCO2排出量の算定方法を確立しました。
自社が行うCO2排出量削減への取り組みを、外部に積極的に公開することで、企業の知名度と認知度を向上させ、人材獲得につなげています。
また、鹿島建設では独自のCO2排出量削減管理システムを開発しました。
独自のシステムで施工時のCO2排出量や水の使用量を月単位で把握し、CO2削減目標との乖離や削減策の効果を確認しながら脱炭素を進めています。
なお、ここでは主に建築業界における取り組みを紹介しましたが、脱炭素への取り組みは業種を問わず国内の様々な企業で行われています。
その他事例に関しては環境省が公開している「取組事例」や「中小規模事業者向けの脱炭素経営導入事例集」を参考にしてください。
まとめ
脱炭素社会に向けて取り組む企業は増加しています。
脱炭素社会に向けて企業が取り組む理由として、エネルギーコストを削減できること、ESG投資の指標になること、環境保全できることが挙げられます。
脱炭素を実現するために企業が行うべき取り組みは複数あり、サプライチェーン排出量の把握やカーボンオフセットの強化などがあります。企業ができる脱炭素社会に向けた取り組みの内容は、企業規模や業種によっても異なります。
脱炭素社会に向けて様々な企業が取り組みを進めています。
紹介している事例などを参考に、脱炭素社会に向けた取り組みを検討してみてください。
建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。
リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。
この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
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