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中小企業の脱炭素における課題とは?業種別の現状も解説

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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企業や国での脱炭素が推進されているなか、中小企業が脱炭素を実現するためにはどのようなことが課題になるのか参考にしたい方もいるのではないでしょうか。

当記事では中小企業の脱炭素における課題と解決策を解説します。業種別の現状も紹介するのでぜひ参考にしてください。

中小企業の脱炭素における課題と解決策

多くの中小企業が脱炭素を進める場合、何らかの課題を抱えています。
日本政策金融公庫が公表している中小企業の脱炭素への取り組みに関する調査によると、脱炭素を進めるうえで何らかの課題を抱えている企業は6割強でした。

【中小企業が抱える脱炭素の主な課題】

脱炭素に取り組む上での課題 課題を抱える企業の割合
コスト増 23.0%
手間 15.0%
資金不足 14.1%

中小企業の脱炭素において、「コスト増」「資金不足」といった資金に関する課題が全体の3割強を占めています。

脱炭素を図る際の人員コストや、省エネ設備や再生エネルギーシステムなど設備投資などが中小企業にとっての負担となっています。

設備投資などコスト増と資金不足

中小企業の脱炭素における課題として省エネ設備や再生可能エネルギーシステムなどの設備投資にかかるコスト増やカーボンクレジットの購入などに必要な資金不足が挙げられます。

中小企業の脱炭素への取り組みに関する調査では「資金不足」を課題としている企業は14.1%でした。

脱炭素を進める場合、省エネ設備や再生可能エネルギーシステムの導入によって温室効果ガスの排出量を実質ゼロに近づけられます。
しかし、脱炭素に必要な設備を導入するためには、場合によっては億単位の資金捻出が必要となります。

初期費用を抑えて設備を導入したい企業は、初期投資0円で発電設備を導入できるPPAモデルの活用を検討する方法もあります。
電力販売契約という意味をもつPPAモデルの設備で発電した電気を利用することで、CO2排出量を削減できます。

また、脱炭素に関わる人材の充足など、設備導入以外の目的で資金不足が足かせとなる場合は補助金制度を活用する方法もあります。

自社に活用できる補助金制度があるかを調べたい場合は、環境省の脱炭素化事業支援情報サイト(エネ特ポータル)を確認してみてください。

脱炭素を推進する手間

脱炭素に取り組んでいない企業にとって、脱炭素を推進する手間が課題となっている場合もあります。
中小企業の脱炭素への取り組みに関する調査で「手間」を課題として挙げている企業は15%でした。

たとえば企業が脱炭素に取り組む際には、温対法や炭素税など法律の確認や、自社やサプライチェーン全体におけるCO2排出量などを把握することから始める必要があります。

CO2排出量の計測が負担に感じる場合は、計測や管理を自動化するシステムの導入によって解決できる場合があります。

また、「脱炭素に伴う手間と比較したリスクの大きさ」「脱炭素に取り組むメリット」を従業員全体が理解できるよう、周知する必要があります。
その場合、脱炭素に関する説明会や社内勉強会を行うためのリソースを外部委託することで、社内の手間を省ける場合もあります。

なお、経営層や従業員への説明に際して、脱炭素経営の必要性やメリットを確認したい方は「脱炭素経営とは?企業のメリットやデメリットを解説」を参考にしてください。

脱炭素に対応できる人材やノウハウの不足

企業が脱炭素を進める場合、対応できる人材やノウハウの確保も課題となっています。
中小企業の脱炭素への取り組みに関する調査では「人材やノウハウの不足」を課題としている企業は9.8%でした。

地球温暖化の深刻化とともに脱炭素の必要性が叫ばれていますが、いざ企業で対応する場合に具体的に何から始めればよいのかわからない場合もあります。

また、従業員数が少ない中小企業の場合、限られた人員で通常の業務と脱炭素に特化したプロジェクトを兼務するのは困難です。

人材不足への対処策としては、専門的な知識を有する外部人員のアウトソーシングを活用する方法が挙げられます。
アウトソーシングを活用することで、脱炭素に関する専門知識を有する人材の採用や、社内教育を行うより効率的に脱炭素に対応できます。

また、ノウハウ不足への対処策として、他社の具体的な取り組み事例を参考にする方法や脱炭素に関するセミナーを受講する方法があります。
成功事例を参考にして検討やセミナーで得た情報を元に社内のナレッジ構築につなげられる可能性もあります。

なお、脱炭素に向けて企業が行うべき取り組みを知りたい方は「脱炭素社会に向けて企業が取り組むべきことは?必要な理由や事例も解説」を確認してみてください。

脱炭素に関する相談先がわからない

脱炭素を推進したくても何から始めればよいのか、また脱炭素を計画するうえで疑問が生じてしまう企業もあります。
さらに脱炭素に関する疑問点をどこに相談したらよいのかわからない場合もあるかもしれません。

脱炭素の計画において具体的な疑問点がある場合、自治体が開催している説明会や独立行政法人の相談サービスを活用する方法があります。
また、脱炭素に関する相談先がわからない場合の解決策としては、脱炭素経営に関するセミナーを受講して理解を深めることから始める方法もあります。

なお、全国どこからでも利用可能なオンライン窓口もあります。事業所の所在する自治体に相談窓口がない場合や、相談先に迷う方は、中小機構のカーボンニュートラル相談窓口の活用も検討してみてください。

取引先や消費者からの理解

中小企業のサプライチェーンにおけるCO2排出量のなかで、取引先や消費者によるものが多い場合は取引先や消費者に脱炭素の協力を得る必要があります。
その際に、取引先や消費者からの理解を得るのが困難となることも考えられます。

取引先や消費者からの協力を得るためには、取引先で使用している原材料や物流の工程および運輸方法の見直しを依頼することや、使用後の容器などをリサイクルできるように消費者に適切な廃棄をお願いするよう商品に明記するなどの方法が有効です。

取引先からの理解を得ることが課題となっている場合には、脱炭素に取り組まないことによるリスクを説明し、協力を促す方法があります。
それでも理解を得られない場合には、取引先の変更を視野に入れることも解決策のひとつです。

また、消費者に対しては不要になった商品の回収に対する独自のポイント付与を行うなど、参加したくなる仕組みづくりをマーケティングの観点で検討する方法もあります。

なお、脱炭素に向けて消費者の行動を変容させる方法については、国土交通省が公表している資料「脱炭素化に向けて消費者の行動変容に必要なことも参考にしてください。

中小企業が脱炭素に着手するべき理由

中小企業が脱炭素に着手するべき理由は複数あります。

【中小企業が脱炭素に着手するべき理由】

  • 地球温暖化への対策
  • 企業イメージの向上
  • ESG投資における優位性の確保
  • 社員のモチベーション向上

脱炭素に取り組むことで化石燃料の使用を抑えつつ、企業イメージ向上にも繋がります。また、ESG投資の指標となるなど企業の優位性を確保できる場合もあります。

なお、企業が脱炭素に取り組む理由を把握したうえで、行うべき取り組みを参考にしたい方は、「脱炭素社会に向けて企業が取り組むべきことは?必要な理由や事例も解説」も確認してみてください。

業種別の脱炭素における現状と課題

企業の脱炭素における課題は業種によっても異なります。

たとえば2021年度の部門別CO2排出量は、産業部門が全体の35.1%を占めていました。産業部門の約94%は製造業で構成されています。

製造業における脱炭素への対策として、高効率機器や省エネ機器、製造工程を最適化するためのIoT技術が導入されています。
高効率機器や省エネ機器の使用によってエネルギー消費を抑えながら、IoT技術を活用してエネルギーの需給バランスを適切に管理しています。

また、日本の部門別二酸化炭素(CO2)排出量のうち、19.5%を占める運輸部門は燃料の使用によるCO2排出量が課題となっており、解決策としてハイブリッド自動車や電気自動車の普及が進められています。

いずれの業種においても、省エネ機器の導入やエネルギー源の置き換えが脱炭素における課題解決策となっています。

参照:環境省「2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値) 概要」p.5

建設業の脱炭素

脱炭素の取り組みは建設業界にも及びます。建設業における脱炭素の課題として建設機械によるCO2排出があげられており、解決策として、低燃料型建設機械を導入する方法があります。

また、プレキャスト工法やICT施工による工数短縮、低炭低炭素型コンクリートの活用など、サプライチェーン全体で低炭素化を行う方法もあります

なお、建設業で行われている脱炭素への取り組みを知りたい人は「建設業界が抱える脱炭素の課題は?解決策になる取り組みも解説」を参考にしてください。

まとめ

日本政策金融公庫総合研究所が2022年に実施した「中小企業の脱炭素への取り組みに関する調査」によると、脱炭素を進めるうえで何らかの課題を抱えている中小企業は6割強に上りました。中小企業の脱炭素における課題は「コスト増」「手間」「資金不足」などが挙げられます。

「コスト増」「資金不足」の解決策として初期投資0円で発電設備を導入できるPPAモデルや国の補助金制度の活用が挙げられます。
また、「手間」が課題となっている場合、CO2排出量の計測が負担に感じる場合は、計測や管理を自動化するシステムの導入によって解決できる場合があります。

地球温暖化対策の推進に関する法律で一定量の温室効果ガスを排出する企業に温室効果ガス排出量の算出および報告が義務付けられていますが、中小企業が脱炭素に着手するべき理由として、「エネルギーコストの削減につながる」「ESG投資の指標となる」が挙げられます。

企業の脱炭素における課題は業種によっても異なりますが、脱炭素を検討している中小企業は、企業が脱炭素に取り組むべき理由を理解するとともに取り組みの事例などを確認してみましょう。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO₂排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。

また、建設会社からCO₂排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるディベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO₂排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

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