業界事例

時計 2023/9/11 アップデート 2023/11/13

「緩和と適応」―建設会社が環境へ与えるインパクトにどう向き合うのか。りんかい日産建設が取り組むCO2削減とサステナビリティ経営(後編)

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

前編では、りんかい日産建設がCO2測定サービスを導入したきっかけや、サステナビリティ経営への取り組み、CO2排出量削減に向けた数値測定の重要性などについて伺いました。

後編では、2026年の創業100周年に向け、2022年に策定した「RN THE FUTURE PROJECT」や、サステナビリティに対する社員の意識改革などについてお伺いします。 

前編はこちら:「緩和と適応」―建設会社が環境へ与えるインパクトにどう向き合うのか。りんかい日産建設が取り組むCO2削減とサステナビリティ経営(前編)

持続可能な未来に向けた部門横断プロジェクト

―2022年に策定された「RN THE FUTURE PROJECT」について教えてください。

当社では2022年を「サステナビリティ経営元年」と位置付け、中期経営計画での重要課題として取り上げ、サステナビリティへの取り組みを示すものとして「RN THE FUTURE PROJECT」を策定しました。

“RN THE FUTURE PROJECT”は、2030 年のSDGs目標達成期限や2050年の国が掲げるカーボンニュートラルの実現目標年を目標として、持続可能な未来に向けてより実践的な取り組みを推進するための部門横断プロジェクトです。

スローガンは「ともにつなぐ 人と社会と環境」。
当社の企業メッセージ「人・社会・環境との共生へ」の理念のもとでシンプルかつ明快な目標を共有することで、社員のみならずステークホルダー全体の「行動力」になるよう本プロジェクトを推進しています。

取り組みの一つとして各部門の社員が参加する「SDGs 勉強会」を2021 年7 月から2023年1月までに15回実施しました。

(画像出典:「RNサステナビリティ・レポート2023」)

目標を掲げることで将来の数値を把握

―2030年、2050年脱炭素社会への取り組みとして、2024年度までのCO2排出量の削減目標として2020年度比で6.2%減という数値を設定されていますね。

これはScope1と2を考えて、本社ビルと支店の電力使用量から算出した数値なのですが、単に目標を掲げるだけでなく、仮にこのペースで削減した場合、2050年にはどのくらいの数値が残るか知りたかったのです。

毎年2%ずつ減らしていって2050年にゼロに間に合うのかという逆算的な発想でした。残った分に関しては、カーボンプライシングしなければならないとしたら、それが経営にどのくらいのインパクトを与えるのかも知りたかったのです。

さらにScope3まで考えるとどうなるのか。こういう算段をしていくには、やはり具体的な排出量をいかに測定して数値化できるかという話になるわけです。

※カーボンプライシングについては「これは助かる、担当者必見!環境関連 用語集<五十音別>」の記事で詳しく解説しています。

 

―「RN THE FUTURE PROJECT」部門を横断したプロジェクトですが、どのように始まったのですか。

土木、建築、環境・再生エネルギーの3部門からメンバーを集めて、月に1回の勉強会から始めました。
最初は3人くらいからスタートして、いろいろなチームから人が入ってきて徐々にメンバーが増えていきました。

勉強会をやっていると、みんなが気づくわけですよ、「自分は何も知らなかったんだな」と。
それは地球環境という大きなテーマについてだけでなく、実は別の階で働いている人がどんなことを考えているか知らなかったと言うんですね。

やはり部門が違うと考えていることが全然違うので、こんな考えがあるのかというところから、新たに気づかされる部分があるのです。
会社組織のガバナンスはどうあるべきか、社内の規程はどうなっているか、役員会はどう動いているのか。これを皆で考えられたのは思わぬ収穫でした。

現場を巻き込み「自分ごと」に

―勉強会で社員の意識は変わっていきましたか。

東京都市大学の岸和幸先生を招いて始めたのですが、最初の2、3回は低調でしたね。4回目くらいからだんだん盛り上がってくるわけです。

脱炭素にしろ生物多様性にしろ、自分ごとになってない限りは盛り上がらない。
日々の業務と直結して考えられるように現場を巻き込んでいく必要があります。

会社自身は地球環境やサステナビリティという大きな考えを踏まえて行動しますが、現場はまず目の前のことにどう取り組むかが一番影響してくると思います。

例えば、廃棄物の減少は現場にとっては利益につながる。
要は、ゴミを減らせばゴミの処分代が浮く、燃料を減らせば燃料代が浮く。利益を考えて取り組むことが結果として廃棄物や電力消費の削減につながるわけです。

(画像出典:「RNサステナビリティ・レポート2023」P1)

これからの100年に向けた布石

―御社の掲げるサステナビリティ経営の方針は、どのような価値創造につながるとお考えなのか、また今後の展望をお聞かせいただけますか

バタフライエフェクトではないですが、例えばコンクリートを作るには砂利が必要だし、鉄を作るのにも、鉄鉱石を取るために山を削らなければならないわけです。

これから企業として存続していくには、気候変動や自然へのインパクトといった要素を考えざるを得ない
当社は2026年に創業100周年を迎えますが、今までの100年と、ここからの100年は圧倒的に違うわけです。

建築土木業界として、CO2削減もその一つですが、いわゆるサスティナリビティというものは避けては通れない
下手をすると、会社が取り組みをしなかったために社員が路頭に迷うということにもなりかねないわけです。

しかも国が掲げるカーボンニュートラルの実現目標年である2050年は目の前に迫っています。
今年の新入社員が50歳になる頃にどうあるべきかを、先輩である我々も真剣に考える必要があると思います。

社員みんなが意識して「自分ごと」として取り組めるというのが一番理想の形でしょう。
そのためにやはりダッシュボードが必要で、そこに自分が努力した成果が見えるようにインジケーターのようなものがあるといいと思います。

CO2の排出量や電気の使用量、産業廃棄物の量などがそれぞれ減ったらどんな効果があるのか、その辺りの情報開示にもこれからもっと取り組んでいきたいと思います。

終わりに

CO2削減に取り組むためには、まずどのくらいの排出量があるのかを把握することが不可欠です。
りんかい日産建設では、「産廃CO2サービス」を導入することで、まずは産廃輸送に関わるCO2の排出量を測定し、Scope3の把握に向けた足がかりとしています。

それは、まずは物事を数値化して問題解決に取り組もうとする姿勢の一つの現れと言えるでしょう。

自然に大きなインパクトを与える建設会社だからこそ、環境問題に関して責任を持って取り組むべきという大下氏の言葉も印象に残りました。

土木や建築による環境への「適応」の重要性は言うまでもありませんが、同時に環境に与えるインパクトをどう「緩和」していくのか。
この先100年を生きていく企業にとっては避けては通れない課題です。

写真 向かって右側から)
安全環境品質室 德田勇貴彦 氏
安全環境品質室 シニアマネージャー 小柴和彦 氏
安全環境品質室 室長 阿部英之 氏
管理本部執行役員 CSR担当 大下英治 氏
管理本部経営企画部 CSR推進課 松藤旭 氏
管理本部経営企画部 CSR推進課 課長 磯野博志 氏

 

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