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時計 2023/6/27 アップデート 2024/7/22

脱炭素の取り組み入門編~仕組みからはじめの一歩まで~ 計算事例を通してScope3を学ぼう!CO2排出量は一体どれくらいになる?

現在、多くの企業が企業活動で排出される温室効果ガス(GHG)の削減に努めていますが、その中で特にCO2削減にあたっての指標としてサプライチェーン排出量がよく用いられています。

このサプライチェーン排出量はScope1、2、3に分かれており、特にScope3に分類される排出量の削減に注目が集まっています。
Scope3はGHGプロトコルイニシアチブにより提唱され、現在はCO2排出量の算定と報告に広く用いられています。

今回は脱炭素の取り組みにおける、Scope3について、計算事例とサプライチェーン排出量に基づいて排出削減目標を定めている企業の取り組みをご紹介します。

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脱炭素対策をこれから強化したい担当者様

CO2排出量管理の仕方を知りたい担当者様

Scope1,2,3まで正確に管理したい担当者様

サプライチェーン排出量とScopeとは?

サプライチェーンとは、ある製品を製造する際に使用する素材、部品の製造から輸送、工場での製造、製品の使用、廃棄までの一連の繋がりを言います。
それぞれの工程でCO2が発生しており、このサプライチェーンにおける様々な活動を排出源により分類したものがScopeです。

Scopeは1から3まであり、Scope1は化石燃料の燃焼させた場合など、自社で直接排出することを、Scope2はエネルギー起源の間接排出、つまり自社が購入した電気や熱、電気による排出を、Scope3がScope2以外の間接排出をそれぞれ指しています。

サプライチェーン排出量は、このScopeごとに算出された排出量を全て足し合わせることで計算されます。

Scope3 15のカテゴリ分類について

Scope3は上流と下流に分類されており、15のカテゴリが設定されています。
自社のサプライチェーン排出量を計算する際には、それぞれの企業活動が15のカテゴリの内のどれに属しているか確認する必要があります。

このため、自社の排出量を算定するときに最も複雑な計算が必要になるのがこのScope3であり、建設業など業種によってはScope3がサプライチェーン排出量の大部分を占めますので注目されています。

(画像出典:環境省「SBT等の達成に向けた GHG排出削減計画策定ガイドブック」)

一方で、ある活動がどのScopeに分類されるか判断が難しい場合があります。
例えば、社有車を運転した際の排出はどれにあたるでしょうか?これはScope3のカテゴリ4の輸送や9の配送にあたりそうですが、実はこちらはScope1の直接排出に分類されます。

さらに、A社がB社に商品を配送した場合、配送の際に排出された分はA社とB社それぞれで計上されることになります。
なぜなら、サプライチェーン排出量はA社とB社がそれぞれ算出するからです。

つまり、複数の企業間で排出が重複する場合が出てきますが、このような場合は重複したままそれぞれの企業が計上していきます。
一見すると誤りがありそうですが、実は問題ありません。

これは、あくまで自社のサプライチェーン排出量を知り、どのカテゴリの排出が多いかを見える化し、自社のサプライチェーン全体の排出量を把握し管理し、削減目標を設定し実行するという目的で使用されるので、他社と重複してもこの目的には支障が出ないからです。

この他にも、バイオマス燃料を購入して自社で発電した場合は排出のカウントはなされないことや、カーボンオフセットを行った場合はScopeの排出削減には組み込まずScopeとは別に報告するなど、細かいガイドラインが環境省によって定められていますので、サプライチェーン排出量の算出の際には注意が必要です。

Scope3の排出量の計算方法

それぞれの活動における排出量の計算方法は掛け算のみでできます。

このため、数字さえわかれば個別の排出量の計算は難しくありませんが、サプライチェーン全体で考えるとカテゴリ別の項目が沢山出てきますので、計算よりも分類や必要な数字を全て集めることに労力が必要になります。

サプライチェーン排出量を算出する際にはまずは自社のサプライチェーンの規模を把握し、どの範囲までを算出するのか対象範囲を確認します。
そして、それぞれの活動がScope3の1から15までのどのカテゴリにあたるか確認します。

それぞれの活動には排出原単位と言う数字が設定されており、活動量に排出原単位を掛けることでその活動で排出されたCO2の量が算出されます。
排出原単位は環境省によりデータベース化されていますので、その数字を使用して排出量を実際に計算してみます。

計算事例1 ガソリンの燃焼のCO2排出量

ガソリン10Lを燃焼させた場合の排出量の計算を行ってみます。環境省のデータベースでは、ガソリンの排出量原単位は2.322tCO2/kLとなっています。

これは、1kLつまり1000Lのガソリンを燃焼させた際、2.322tのCO2が発生することを示しています。これを1L辺りに直せば2.322kCO2/Lとなります。

つまり、ガソリン1Lを燃焼させると2.322kgのCO2が発生することになります。
10Lのガソリンを燃焼させる場合は、原単位にガソリンの量を掛ければいいので、2.322×10=23.22kgのCO2が発生したことになります。

ガソリン10Lを燃焼させた場合の排出量の計算を行ってみます。

ガソリンの排出量原単位を2.3tCO2/kLとします。
これは、1kLつまり1000Lのガソリンを燃焼させた際、2.3トンの二酸化炭素が発生することを示しています。

これを1L辺りに直せば2.3kCO2/Lとなります。
つまり、ガソリン1Lを燃焼させると2.3kgの二酸化炭素が発生することになります。

10Lのガソリンを燃焼させる場合は、原単位にガソリンの量を掛ければいいので、2.3×10=23kgの二酸化炭素が発生したことになります。

これは車を運転した際にも適用でき、ガソリンの消費量が分かればCO2排出量が算出できます。
このガソリンを燃焼させた時に発生するCO2排出量の計算は、Scope1及びScope2、Scope3のカテゴリ4の輸送、配送(上流)と9の輸送、配送(下流)で使用されます。

このように、その活動の原単位と重さや体積、時間などの数量が分かればCO2排出量を計算することができます。
因みにハイブリッド車に関しては今のところ原単位は設定されておらず、今後決められる予定となっています。 

計算事例2 発電におけるCO2排出量と電力使用における排出量

発電の場合も同様に、原単位と使用量が分かれば二酸化炭素排出量を計算できます。

ここでは計算しやすいように発電端の排出原単位を0.5kgCO2e/kWhと置きます。
つまり、発電所で1kWhの電力を発電した際に、0.5kgの二酸化炭素が大気中に放出された、と言うことです。

CO2eのeはequivalent(等価)の意味で、二酸化炭素換算値であることを表しています。
この原単位を使用すると、例えば10kWhの電力を発電した場合、二酸化炭素排出量は5kgとなります。

電気のCO2排出量の計算を行う場合に注意すべき点は、発電端や使用端等でそれぞれ原単位が存在することと、小売電気事業者により原単位が異なる点です。

発電端は発電機の出力を表し、使用端は発電端から送電によるロスなどを差し引き、販売される際の電力を示しています。

発電機の発電量については発電端の原単位を、電気事業者の販売電力量に関しては使用端の原単位を使用しますが、この使用端の原単位に再生エネルギーの買い取りやカーボンクレジットによるオフセットの調整が行われますので、電気の最終的な原単位は調整後排出係数とも呼ばれています。

さらに、電気の原単位は電力会社の電源の構成により異なっており、風力や水力、太陽光と言った再生可能エネルギーの電源比率が高いと原単位は低くなります。
このため、小売電気事業者間で原単位が異なっていますので、電気を購入する際には、その小売電気事業者の調整後排出係数を確認する必要があります。

一方で、電気による排出量の削減を行うには、調整後排出係数が低い小売電気事業者から電気を購入することが最も簡単な方法です。

この電力使用における排出量の計算は、Scope2とScope3のカテゴリ10の販売した製品の加工とカテゴリ11の販売した製品の使用の計算に使用されます。

計算事例3 建物の床面積のCO2排出量

建物を使用する際にも電気やガスを使用するためにCO2が発生します。この際の排出量の計算も原単位が分かると計算可能です。

建物の原単位は建物の種類によって異なっており、代表値で学校が0.032tCO2/m2・年、事務所ビルが0.083 tCO2/m2・年、病院が0.132tCO2/m2・年となっています。

代表値とは一般的な値を用いて計算した値と言うことです。
正確な値を算出するためには、その建物で使用する電気を購入している小売電気事業者等の調整後排出係数を使って計算する必要があります。

これは、建物の床面積1平方メートル当たりの1年間のCO2排出量を示しており、この原単位に床面積を掛けることで年間の排出量が求まります。
例えば、学校の床面積が1000平方メートルとすると、1年間のCO2排出量は32tとなります。

この計算はScope3のカテゴリ8のリース資産(上流)とカテゴリ13のリース資産(下流)に使用されます。

企業のサプライチェーン排出量削減事例

現在、建設業界でも大手企業を始めとして様々な企業がサプライチェーン排出量の算出を行うようになっています。
そして、算出された排出量に基づいて、ゼロエミッションに向けた計画を立てていますので、その実施例をご紹介いたします。

鹿島建設の取り組み

鹿島建設株式会社(以下 鹿島建設)では、サプライチェーン排出量の基準年を2021年度に定めており、2030年度には25%の削減を、2050年度には100%の削減、すなわちカーボンニュートラルにする目標を掲げています。

鹿島建設のサプライチェーン排出量は、施工時が4%であるのに対し、建材製造時が56%、建物運用時が29%と、大きなウェイトを占めています。そこで、建材製造時と建物運用時に排出するCO2の削減に注力しています。

具体的には、コンクリートや鉄による排出を削減します。

これらの建材は製造時に大量のCO2を排出しますので、CO2を吸収するコンクリートであるCO2-SUICOM®(シ―オーツースイコム)を使用して排出量を抑え、鉄は、製造時にCO2の排出が少ない低炭素鋼材への置き換えに努めることで、サプライチェーン排出量を削減しています。

また、ZEBの実現に向けた4つのアプローチで環境対策に取り組んでいます。

まとめ

脱炭素を推進するにあたっては、サプライチェーン排出量を用いることで削減目標が立てやすくなります。

排出量の計算自体は原単位が分かればそれほど難しくないですが、カテゴリごとに様々な注釈が存在しているので最初のカテゴリ分けや適切な原単位の選択などで苦労することが予想されます。

一度ひな形を作り、運用できれば後は毎年数字をアップデートすればいいので随分と楽になるでしょう。

入門編①はこちら:脱炭素の取り組み入門編~仕組みからはじめの一歩まで ~カーボンニュートラルの現状と背景
入門編②はこちら:脱炭素の取り組み入門編~仕組みからはじめの一歩まで~ 建設会社がCO2削減に取り組むメリット

 

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

タンソミル

お問合せはこちら

出典まとめ:

環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォームとは

環境省「排出量算定について

環境省
経済産業省
サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する 基本ガイドライン (ver.2.5)

環境省「Q&Aサプライチェーン排出量算定におけるよくある質問と回答集

環境省「サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて

経済産業省産業技術環境局長
資源エネルギー庁長官
環境省地球環境局長
電気事業者ごとの基礎排出係数及び調整後排出係数の算出及び公表について

鹿島建設株式会社「2050年カーボンニュートラルの実現に向け、サプライチェーン排出量削減を加速

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
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時計 2023/6/27 アップデート 2024/7/22

脱炭素の取り組み入門編~仕組みからはじめの一歩まで~ 計算事例を通してScope3を学ぼう!CO2排出量は一体どれくらいになる?

現在、多くの企業が企業活動で排出される温室効果ガス(GHG)の削減に努めていますが、その中で特にCO2削減にあたっての指標としてサプライチェーン排出量がよく用いられています。

このサプライチェーン排出量はScope1、2、3に分かれており、特にScope3に分類される排出量の削減に注目が集まっています。
Scope3はGHGプロトコルイニシアチブにより提唱され、現在はCO2排出量の算定と報告に広く用いられています。

今回は脱炭素の取り組みにおける、Scope3について、計算事例とサプライチェーン排出量に基づいて排出削減目標を定めている企業の取り組みをご紹介します。

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CO2排出量管理の仕方を知りたい担当者様

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サプライチェーン排出量とScopeとは?

サプライチェーンとは、ある製品を製造する際に使用する素材、部品の製造から輸送、工場での製造、製品の使用、廃棄までの一連の繋がりを言います。
それぞれの工程でCO2が発生しており、このサプライチェーンにおける様々な活動を排出源により分類したものがScopeです。

Scopeは1から3まであり、Scope1は化石燃料の燃焼させた場合など、自社で直接排出することを、Scope2はエネルギー起源の間接排出、つまり自社が購入した電気や熱、電気による排出を、Scope3がScope2以外の間接排出をそれぞれ指しています。

サプライチェーン排出量は、このScopeごとに算出された排出量を全て足し合わせることで計算されます。

Scope3 15のカテゴリ分類について

Scope3は上流と下流に分類されており、15のカテゴリが設定されています。
自社のサプライチェーン排出量を計算する際には、それぞれの企業活動が15のカテゴリの内のどれに属しているか確認する必要があります。

このため、自社の排出量を算定するときに最も複雑な計算が必要になるのがこのScope3であり、建設業など業種によってはScope3がサプライチェーン排出量の大部分を占めますので注目されています。

(画像出典:環境省「SBT等の達成に向けた GHG排出削減計画策定ガイドブック」)

一方で、ある活動がどのScopeに分類されるか判断が難しい場合があります。
例えば、社有車を運転した際の排出はどれにあたるでしょうか?これはScope3のカテゴリ4の輸送や9の配送にあたりそうですが、実はこちらはScope1の直接排出に分類されます。

さらに、A社がB社に商品を配送した場合、配送の際に排出された分はA社とB社それぞれで計上されることになります。
なぜなら、サプライチェーン排出量はA社とB社がそれぞれ算出するからです。

つまり、複数の企業間で排出が重複する場合が出てきますが、このような場合は重複したままそれぞれの企業が計上していきます。
一見すると誤りがありそうですが、実は問題ありません。

これは、あくまで自社のサプライチェーン排出量を知り、どのカテゴリの排出が多いかを見える化し、自社のサプライチェーン全体の排出量を把握し管理し、削減目標を設定し実行するという目的で使用されるので、他社と重複してもこの目的には支障が出ないからです。

この他にも、バイオマス燃料を購入して自社で発電した場合は排出のカウントはなされないことや、カーボンオフセットを行った場合はScopeの排出削減には組み込まずScopeとは別に報告するなど、細かいガイドラインが環境省によって定められていますので、サプライチェーン排出量の算出の際には注意が必要です。

Scope3の排出量の計算方法

それぞれの活動における排出量の計算方法は掛け算のみでできます。

このため、数字さえわかれば個別の排出量の計算は難しくありませんが、サプライチェーン全体で考えるとカテゴリ別の項目が沢山出てきますので、計算よりも分類や必要な数字を全て集めることに労力が必要になります。

サプライチェーン排出量を算出する際にはまずは自社のサプライチェーンの規模を把握し、どの範囲までを算出するのか対象範囲を確認します。
そして、それぞれの活動がScope3の1から15までのどのカテゴリにあたるか確認します。

それぞれの活動には排出原単位と言う数字が設定されており、活動量に排出原単位を掛けることでその活動で排出されたCO2の量が算出されます。
排出原単位は環境省によりデータベース化されていますので、その数字を使用して排出量を実際に計算してみます。

計算事例1 ガソリンの燃焼のCO2排出量

ガソリン10Lを燃焼させた場合の排出量の計算を行ってみます。環境省のデータベースでは、ガソリンの排出量原単位は2.322tCO2/kLとなっています。

これは、1kLつまり1000Lのガソリンを燃焼させた際、2.322tのCO2が発生することを示しています。これを1L辺りに直せば2.322kCO2/Lとなります。

つまり、ガソリン1Lを燃焼させると2.322kgのCO2が発生することになります。
10Lのガソリンを燃焼させる場合は、原単位にガソリンの量を掛ければいいので、2.322×10=23.22kgのCO2が発生したことになります。

ガソリン10Lを燃焼させた場合の排出量の計算を行ってみます。

ガソリンの排出量原単位を2.3tCO2/kLとします。
これは、1kLつまり1000Lのガソリンを燃焼させた際、2.3トンの二酸化炭素が発生することを示しています。

これを1L辺りに直せば2.3kCO2/Lとなります。
つまり、ガソリン1Lを燃焼させると2.3kgの二酸化炭素が発生することになります。

10Lのガソリンを燃焼させる場合は、原単位にガソリンの量を掛ければいいので、2.3×10=23kgの二酸化炭素が発生したことになります。

これは車を運転した際にも適用でき、ガソリンの消費量が分かればCO2排出量が算出できます。
このガソリンを燃焼させた時に発生するCO2排出量の計算は、Scope1及びScope2、Scope3のカテゴリ4の輸送、配送(上流)と9の輸送、配送(下流)で使用されます。

このように、その活動の原単位と重さや体積、時間などの数量が分かればCO2排出量を計算することができます。
因みにハイブリッド車に関しては今のところ原単位は設定されておらず、今後決められる予定となっています。 

計算事例2 発電におけるCO2排出量と電力使用における排出量

発電の場合も同様に、原単位と使用量が分かれば二酸化炭素排出量を計算できます。

ここでは計算しやすいように発電端の排出原単位を0.5kgCO2e/kWhと置きます。
つまり、発電所で1kWhの電力を発電した際に、0.5kgの二酸化炭素が大気中に放出された、と言うことです。

CO2eのeはequivalent(等価)の意味で、二酸化炭素換算値であることを表しています。
この原単位を使用すると、例えば10kWhの電力を発電した場合、二酸化炭素排出量は5kgとなります。

電気のCO2排出量の計算を行う場合に注意すべき点は、発電端や使用端等でそれぞれ原単位が存在することと、小売電気事業者により原単位が異なる点です。

発電端は発電機の出力を表し、使用端は発電端から送電によるロスなどを差し引き、販売される際の電力を示しています。

発電機の発電量については発電端の原単位を、電気事業者の販売電力量に関しては使用端の原単位を使用しますが、この使用端の原単位に再生エネルギーの買い取りやカーボンクレジットによるオフセットの調整が行われますので、電気の最終的な原単位は調整後排出係数とも呼ばれています。

さらに、電気の原単位は電力会社の電源の構成により異なっており、風力や水力、太陽光と言った再生可能エネルギーの電源比率が高いと原単位は低くなります。
このため、小売電気事業者間で原単位が異なっていますので、電気を購入する際には、その小売電気事業者の調整後排出係数を確認する必要があります。

一方で、電気による排出量の削減を行うには、調整後排出係数が低い小売電気事業者から電気を購入することが最も簡単な方法です。

この電力使用における排出量の計算は、Scope2とScope3のカテゴリ10の販売した製品の加工とカテゴリ11の販売した製品の使用の計算に使用されます。

計算事例3 建物の床面積のCO2排出量

建物を使用する際にも電気やガスを使用するためにCO2が発生します。この際の排出量の計算も原単位が分かると計算可能です。

建物の原単位は建物の種類によって異なっており、代表値で学校が0.032tCO2/m2・年、事務所ビルが0.083 tCO2/m2・年、病院が0.132tCO2/m2・年となっています。

代表値とは一般的な値を用いて計算した値と言うことです。
正確な値を算出するためには、その建物で使用する電気を購入している小売電気事業者等の調整後排出係数を使って計算する必要があります。

これは、建物の床面積1平方メートル当たりの1年間のCO2排出量を示しており、この原単位に床面積を掛けることで年間の排出量が求まります。
例えば、学校の床面積が1000平方メートルとすると、1年間のCO2排出量は32tとなります。

この計算はScope3のカテゴリ8のリース資産(上流)とカテゴリ13のリース資産(下流)に使用されます。

企業のサプライチェーン排出量削減事例

現在、建設業界でも大手企業を始めとして様々な企業がサプライチェーン排出量の算出を行うようになっています。
そして、算出された排出量に基づいて、ゼロエミッションに向けた計画を立てていますので、その実施例をご紹介いたします。

鹿島建設の取り組み

鹿島建設株式会社(以下 鹿島建設)では、サプライチェーン排出量の基準年を2021年度に定めており、2030年度には25%の削減を、2050年度には100%の削減、すなわちカーボンニュートラルにする目標を掲げています。

鹿島建設のサプライチェーン排出量は、施工時が4%であるのに対し、建材製造時が56%、建物運用時が29%と、大きなウェイトを占めています。そこで、建材製造時と建物運用時に排出するCO2の削減に注力しています。

具体的には、コンクリートや鉄による排出を削減します。

これらの建材は製造時に大量のCO2を排出しますので、CO2を吸収するコンクリートであるCO2-SUICOM®(シ―オーツースイコム)を使用して排出量を抑え、鉄は、製造時にCO2の排出が少ない低炭素鋼材への置き換えに努めることで、サプライチェーン排出量を削減しています。

また、ZEBの実現に向けた4つのアプローチで環境対策に取り組んでいます。

まとめ

脱炭素を推進するにあたっては、サプライチェーン排出量を用いることで削減目標が立てやすくなります。

排出量の計算自体は原単位が分かればそれほど難しくないですが、カテゴリごとに様々な注釈が存在しているので最初のカテゴリ分けや適切な原単位の選択などで苦労することが予想されます。

一度ひな形を作り、運用できれば後は毎年数字をアップデートすればいいので随分と楽になるでしょう。

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建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

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出典まとめ:

環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォームとは

環境省「排出量算定について

環境省
経済産業省
サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する 基本ガイドライン (ver.2.5)

環境省「Q&Aサプライチェーン排出量算定におけるよくある質問と回答集

環境省「サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて

経済産業省産業技術環境局長
資源エネルギー庁長官
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電気事業者ごとの基礎排出係数及び調整後排出係数の算出及び公表について

鹿島建設株式会社「2050年カーボンニュートラルの実現に向け、サプライチェーン排出量削減を加速

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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