業界事例

時計 2023/11/29 アップデート 2023/11/30

高俊興業のリサイクル率90%と資源循環型社会への取り組み 廃棄物処理業界の課題とビジョン(後編)

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

前編では、「非化石証書」導入によるCO2削減への取り組みや排出量の算出方法、高精度選別による再資源化システム、廃棄物の再資源化の重要性などについてお聞きしました。

後編では、廃棄物処理業界と建設業界の連携、高俊興業が目指す資源循環型社会、環境負荷軽減への取り組みなどについてお話しいただきます。

リサイクル率算出のルール化を

業界全体として、環境負荷の少ない廃棄物処理やCO2削減に対する取り組みを進めるのに当たって感じている課題を教えてください。

業界内の各社でリサイクル率を算出しているのですが、そもそも業界共通のリサイクル率を算出するための計算式がないのです。

各社のお任せになっているのが現状なので、そうすると、いくら再資源化率をうたっても、計算式が違えば当然出てくる結果も違う。
実態が数値化されないと、その実態に対して今の課題がどこにあって、その課題を解決するためにはどうしなければならないかという戦略を立てることもできないわけです。

リサイクル率は算出の仕方によって良い結果にも悪い結果にもなり得てしまうので、そこをきちんと業界で統一化していかなければならないと思います。

廃棄物処理一元管理システムを独自開発

―廃棄物処理の管理システムについてはいかがですか。

当社では、廃棄物処理一元管理システムを自社独自で開発して運用しています。特長は、マニフェストの搬入・搬出伝票管理を軸に、受注・配車・台帳作成・請求書発行といった事務処理を一元管理できる点です。

ただ、マニフェストが電子化されていても、請求データを作るときは紙に書いてあるデータが必要なのです。だから、電子データと紙が両方存在する。

業界全体でも、DXに向かう前段として「紙から電子へ」をキャッチフレーズに取り組んでいますが、今の廃棄物の管理は、契約書とマニフェストと帳簿、これが主たるもので、20年近く前にできたシステムなのです。

ここがデジタルの活用で変わっていけば、当然業務効率も上がるでしょうし、より良いトレーサビリティ(※「モノの流通経路を《原材料の生産段階》から《最終消費段階または廃棄段階》まで追跡可能な状態にすること」)にもつながるのではないかと考えています。

全体量の2割を占める建設系廃棄物

―建設業界から出る廃棄物は、全体のどのくらいを占めているのでしょうか。

国内で1年間に排出される産業廃棄物は約4億トンです。皆さんの一般家庭から出る廃棄物が大体5000万トンくらいですから、一般廃棄物に比べると8倍ぐらい排出されています。4億トンのうちの約2割に当たる8300万トンが建設系の廃棄物です。

産業廃棄物に関して言うと、建設業界は廃棄物を排出する側で、これは人間の体の血液の流れに例えると、動脈に当たる。そして、私たち処理業者側は、いわば静脈なわけです。

当然、動脈だけが元気でも静脈が元気でないと人間の体は成り立たない。建設業界にはいろんな知識を持った人たちが集まっているように、私たちも廃棄物を処理するプロ集団としてきちんと力をつけなきゃいけないと思います。

どちらかに力が偏るのではなく、お互いに対等に渡りあえて、対等に連携を図れる状態が、一番総合力を発揮できる状態だと思うので、そういう関係を築くことができればと思っています。

※イメージ写真

資源循環型社会への貢献

―持続可能な「資源循環型社会」「脱炭素社会」実現に向けた貢献を、経営理念の中で打ち出していますね。

当社では、資源循環型社会形成の推進を経営理念として掲げ、「安全と健康」「脱炭素社会に向けた取り組み」「SDGsを意識した仕事への取り組み」「業務効率化を踏まえた生産性向上」「再資源化技術の向上」を5つの柱として事業運営を進めています。

1999年には国際標準規格化機構の環境マネジメントシステム「ISO14001」を取得しました。地域の環境保全のために、自らが設定した環境マネジメントシステムのもと、全社員がより高いレベルを目指して環境保全活動に取り組んでいます

また、廃棄物処理法に基づく「優良産廃処理業者認定制度」の認定、東京都の「産廃エキスパート(中間処理業及び収集運搬業(積替え保管を含む))」の認定に加えて、直近では東京臨海エコ・プラントが公益財団法人産業廃棄物処理振興財団の「資源化等情報適正開示施設」の適合施設として認定されました。

私たちの仕事は、環境分野への貢献とは切っても切れない関係にあります。逆に言えば、本業にきちんと取り組めば、その取り組み自体が必然的に社会貢献につながっていく仕事だと思っています。

廃棄物の選別に関しては、電力をいかに効率的に使うか、どうやったら使用量を削減できるかという部分と、選別精度を上げた品物を作るという部分のバランスをどう取っていくかというところが、まだまだテーマとしては残っています。

オリジナルキャラクター「エコりん」

終わりに

産業廃棄物処理業は、環境分野への貢献とは切っても切れない関係だという高橋社長の言葉が印象的でした。

「資源循環型社会への貢献」を経営理念に掲げる高俊興業にとって、CO2排出量削減への対応も、特別なことではなく、常に本業に真摯に向き合う中から自然に生まれてきた取り組みの一つだと感じました。

国内で排出される産業廃棄物の2割は建設関係が占めています。建設業界にとっても、産廃処理の与える環境への負荷は避けては通れない課題です。

「動脈」と「静脈」のように、建設業界と産業廃棄物処理業界が共に知恵を出し合い、より良い関係性を築くことで、脱炭素社会へ向けた新たな示唆が得られる可能性が生まれるのではないでしょうか。

高俊興業株式会社

代表取締役社長

高橋潤(たかはしめぐむ)

1973年生まれ。96年 建設会社に入社。2000年に高俊興業(株)へ入社し、15年に代表取締役社長に就任した。

現在の社外活動として、(一社)廃棄物処理施設技術管理協会副会長、(一社)東京都産業資源循環協会理事・ 建設廃棄物委員長、(公社)日本産業廃棄物処理振興センター 理事、(公社)全国産業資源循環連合会 業務主任者試験等準備検討委員会委員を務めている。

前編はこちら:建設混合廃棄物リサイクル率90%を実現。廃棄物の高精度選別で高俊興業が目指す資源循環型社会とはー(前編)

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