セミナー情報
2024/5/13 2024/8/2
建設業界で注目のESG投資とは?過去の勉強会から学ぶ
「ESG投資ってよく聞くけど、どんな投資なんだろう?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。ESG投資はさまざまな業界で注目を集めており、建築業界も例外ではありません。しかし、実際は何が評価され、投資されているのかを詳しくはご存知ではない方も多いです。
そこで、本記事では過去に国土交通省が行った勉強会を参考に、ESF投資について解説を行っていきます。ESG投資とはそもそも何なのか、また、それを普及させるためにはどのような取り組みが行われているのか、ESG投資における今後の流れはどうなっていくのかなどの疑問に答えていきます。
ESG投資とは?
ESG投資とは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの観点から投資を行う考え方のことです。この投資の動きは今後ますます強くなると予測されており、不動産市場でもESG投資を取り入れる動きが進められています。
ESG投資(不動産)の基盤整備の取り組み
ESG投資、特に不動産分野においてその基盤整備のためにさまざまな取り組みが行われています。具体的には健康性や快適性などの観点から、優れた不動産を普及させるために有識者が議論を交わしています。
これらの取り組みの中でも特に注目されているのが新たな認証制度の構築です。この認証制度を通じて、不動産の健康性や快適性などの性能を目に見えるようにします。そして、視覚化できた情報を市場に提供することで、ESGに配慮した不動産への投資を呼びかけるとともに、そのような不動産の供給を増やそうとしています。
さらに、不動産の鑑定評価のときにも、健康性や快適性などの性能を反映させる仕組みが進考えられています。具体的には、不動産鑑定士が健康性や快適性などを考慮した評価を行うことが期待されています。
まとめると、今後の不動産市場では、健康性や快適性といった性能を持った不動産が価値を持つと考えられています。そして、そういった不動産の価値を支えるために、新しい認証制度や鑑定評価の方法が検討されているということです。
ESG投資を普及させるための取り組み:新しい認証制度の検討
ESG投資を普及させる取り組みとして新しい認証制度の検討が進められています。この制度は特定の基準や要件を満たした製品、サービス、企業などに対して適合性や優れた性能を公式に認める仕組みのことです。
この認証制度を通じて消費者や投資家、ステークホルダー(事業活動において、利害関係のある人々や組織のこと)たちは製品やサービスの品質や性能、企業の取り組みなどが一定の基準を満たしていることを確認できるようになっています。
ここで、誰が製品・サービス・企業などの適合性や性能を認めるのか、という疑問を抱くかもしれません。多くの場合、認証制度は独立した第三者機関が行います。また、その機関による定期的な監査や評価を通じて認証の更新や維持が行われることも多いです。
新しい認証制度の概要
それでは、具体的にどんな新しい認証制度が検討されているのでしょうか。不動産分野のESG投資においては、不動産が持つ健康性や快適性といった特性や性能を視覚化するための基準設定に関する検討がなされています。
この基準を満たしている不動産に対して認証を与えようとしているわけです。この認証制度が導入されると、消費者や投資家は、どの不動産がESGの考え方に基づいて健康性や快適性に優れているのかを判断できるようになります。
新しい認証制度の対象
新しい認証制度の対象として上がっているのは、新築や既存のオフィスビルです。ビルのオーナーが認証を得るための申請を行うことを原則としていますが、ビルの一部を所有するオーナーやテナントなどの別の関係者も申請が可能となっています。
新しい認証制度の有効期間
新しい認証制度では、一度認証を受けるとその認証は3年から5年程度有効となります。この期間については今後も検討が重ねられていくと考えられます。
新しい認証制度の評価制度
新しい認証制度では、オフィスビルの健康性・快適性、利便性、安全性の3つの大きなカテゴリーで評価されます。評価は基本性能、運営管理、プログラムの3つの観点から行われます。
基本性能
基本性能とはオフィスビルの物理的な部分、つまりハードの要素に関するものです。室内の空間や内装、音の環境、明るさ、空気や空調、リフレッシュや運動のためのスペースなどが挙げられます。
さらに、業務の効率性やコミュニケーションを支える移動空間や情報通信の設備、そして災害時の対応やセキュリティ、有害物質の対策といった安全性に関わる要素も評価の対象となります。
運営管理
運営管理とはその名の通りビルの維持・管理に関わるものです。具体的には、オフィスビルを使用している人の満足度などを参考に評価を行います。
プログラム
プログラムはオフィスビルを使用する人々の健康や快適性を支えるプログラムや、サービスなどのソフトの要素に関するものです。評価は設計図やその他の文書による確認、そして実際の運営の状況や運用計画をもとに行われます。
新しい認証制度の評価要素
新しい認証制度の評価要素について具体的に確認しましょう。評価要素は基本性能、運営管理、プログラムの3つに分類されています。
基本性能
基本性能ではオフィスの空間や内装が働く人の健康と快適さを考慮してデザインされているか、音や光の環境が適切であるか、空調や空気がきれいであるかなどが評価されます。また、職員がリフレッシュするための施設や緑化、運動を促すための措置がなされているかが重要なポイントになっています。
利便性の面ではオフィスビル内の移動やコミュニケーションがしやすい環境がきちんと設計されているか、問題なく情報通信ができるインフラが整っているか、などが評価要素となっています。
安全性の観点からは災害や緊急時への対応策、有害物質の管理、安全な水の確保、そしてビルのセキュリティ体制などが重要な評価ポイントとなります。
運営管理
運営管理については、オフィスビルの維持・管理や働く人の満足度を向上させるための施策が評価要素です。満足度調査や清掃などの結果に応じて評価を行います。
プログラム
プログラムでは、オフィスビルを使用している人々の健康や快適性を向上させるための取り組みの実施状況が評価対象となっています。例えば、メンタルヘルス対策や運動促進の取り組み、そして利用者同士の交流を促進するためのプログラムなど、働く人の健康やコミュニケーションをサポートする取り組みなどが考えられます。
新しい認証制度の評価のタイミング
新しい認証制度の評価のタイミングはオフィスビルの設計段階や運用段階です。特に、設計段階での申請の場合はどのようにビルを運用するか、もの運営計画も評価の対象となります。また、一度認証を受けるとその認証は3年から5年程度有効となります。
高評価を得られる事例
新しいESG投資の認証制度に関する評価要素は、建物や施設の使いやすさ、快適さ、安全性などの基本的な要素です。ここからは高評価を得られる事例についてわかりやすく紹介していきます。
基本性能
健康性・快適性においては、オフィスビルの利用者の心地よさや健康を考慮した空間作りが重視されています。例えば、天井の高さを確保した開放的な空間つくりや、自然を取り入れたリフレッシュできる空間つくりが行えているかどうかが評価されます。
また、適切な遮音設備や自然光の取り入れ及び快適な温度や湿度を保つ空調システムも評価対象です。さらに、リフレッシュするための施設や家具、運動を促進する設備や家具も評価の対象となります。
利便性では、オフィスビルを使う人たちがスムーズに移動・コミュニケーションを行える環境を提供できているかどうかが評価されます。例えば、気軽に打合せができるスペースの設置や、高度な通信インフラの整備が行われているかどうかが注目されます。
安全性の観点からは、地震や災害に備えた対策や入退館のセキュリティの確保が評価される要素として挙げられています。
運営管理
運営管理に関しては、建物や施設の維持・管理の計画や執務者の満足度を確認するための定期的な調査がどれだけ実施されているか、また、その結果に基づいて改善の措置が講じられているかが重要とされています。
プログラム
プログラムでは、執務者の健康や交流を促進するための取り組みやイベントの実施状況が評価されます。メンタルヘルスに関するセミナーや健康促進のためのスポーツジム利用の支援、健康管理のためのウェアラブル端末(スマートウォッチなど)の提供など、さまざまなプログラムが取り組みとして挙げられています。
参照:ESG不動産投資の基盤整備 p.4~6 | 国土交通省
ESG投資(不動産)の基盤制度における今後の流れ
ここまで新しい認証制度に関する概要や評価基準・要素、そして評価される事例について解説してきました。ここからはこの基盤制度の今後の流れについて説明していきます。
認証制度について
新しい認証制度が導入されることによって、健康や快適さを持つ不動産をわかりやすくすることで、その価値を強調できるようになります。このため、日本の不動産における国際的な競争力はより一層高くなる見込みです。また、この認証制度の魅力的な特徴の一つとして、異なるレベルの健康性や快適性を持つ不動産を段階的に評価できる仕組みが考えられている点が挙げられます。
大手の新築ビルだけでなく、既存の中小規模のビルも認証制度の対象となっており、これにより不動産全体の質を向上させようとしています。さらに、オーナーが所有しているビルと賃貸ビルという、異なる形態の不動産にも適用されることが期待されており、その違いを理解し評価できるような制度にすることが求められています。
認証制度への申請はオーナーだけでなくテナントも可能です。特に、オーナーは既に認証を取得しているがテナント側が取得していないときに、テナントが認証を得やすくするための仕組みも考える必要があります。
評価要素について
評価要素には、家具やプログラムといった変更が簡単なものも含まれます。そのため、認証取得後に取り組み内容を変更した場合など、認証の信頼性や透明性を維持するためのさまざまな工夫が必要とされています。
また、認証制度の普及や信頼性を保つためには、制度の透明性や申請者の負担を軽減する工夫が求められます。さらに、国内外のESGに関する不動産投資の動向を考えて評価を行うも欠かせません。
不動産観点の評価について
不動産鑑定の評価についても、健康性や快適性といった要素を正確に反映させる必要があります。このため、不動産鑑定士向けのガイドラインや注意点を整備する取り組みが進められています。また、市場の動向をしっかりと捉えるためには、健康性や快適性に関する最新のトレンドを把握することが求められています。
参照:ESG不動産投資の基盤整備 p.7~8 | 国土交通省
建設業でも脱炭素への取り組みが重要視されてきている
近年、地球温暖化の進行や異常気象の増加といった環境問題が深刻化してきました。そこで、各産業での脱炭素への取り組みが重要視されています。建設業界も例外ではありません。建築業界は多くのエネルギーを消費し、大量のCO2を排出する産業として知られているためです。
このため、CO2を削減できるような建物の設計や、屋根に太陽光パネルを設置するといった再生可能エネルギーの導入などの取り組みが行われています。建物や施設は長期にわたって使用されるため、建設時での環境配慮は、長い目で見れば大きな影響を及ぼします。
つまり、建設業で脱炭素を進めることは、CO2排出量の削減に大きく貢献できるというわけです。
まとめ
世界的に環境に対する意識が高まっていく中、建築業界を含めさまざまな産業でESG投資が注目されています。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の三つの要因を重視した投資のことです。今回は不動産分野において、その基盤整備、認証制度の検討や評価基準、高評価を得るために必要なことを説明しました。
そして、建設業界における脱炭素の重要性についても触れました。脱炭素による持続可能な未来を実現するため、建設業界でもCO2排出量の少ない建物の設計や、再生可能エネルギーの導入が求められています。
建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。
リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。
この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
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