業界事例

時計 2024/5/10 アップデート 2024/6/7

「新規事業創出」と「海外展開」という視点で見る 三井住友建設の脱炭素化実現に向けた取り組み(前編)

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

はじめに

「2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップ」の策定、新部署「事業創生本部」を立ち上げて再エネ・創エネ事業を加速させるなど、脱炭素社会の実現に向けた新たな挑戦も続ける三井住友建設。半面、海外工事比率が約2割を占めるなか、東南アジアを中心とした海外拠点におけるCO2削減という課題にも直面しています。グループ全体として脱炭素にどう取り組むのか。経営企画部サステナビリティ推進部課長の原登紀子氏、事業創生本部副本部長 兼 再生可能エネルギー推進部長の武冨幸郎氏、国際支店次長の中島正博氏の3人にお話を伺いました。

(中島氏のインタビューは後編にて紹介しています)

脱炭素社会への貢献は最重要項目のひとつ

2019年に環境方針「Green Challenge 2030」を策定された背景について教えてください。

原氏:「Green Challenge 2030」の前に、2011年に策定した「Green Challenge 2020」があり、それを発展的に改定、更新したのが「Green Challenge 2030」です。当社の経営理念の一つに「地球環境への貢献」があり、持続可能な社会を実現するために、ISO14001に準拠した環境マネジメントシステムを構築、運用しています。ISO14001では経営理念に基づいて環境への取り組みに関する基本方針を定めることが要求事項の一つとしてあるので、それに沿って「Green Challenge 2030」を定め、環境マネジメントシステムの基本方針としています。これは気候変動やサーキュラーエコノミー※1、生物多様性にも関連したものとなっております。

「Green Challenge 2030」には、「脱炭素社会への貢献」「循環型社会への貢献」「自然共生社会への貢献」「環境リスクの管理」「環境コミュニケーション・ESDの推進」の5つの柱があり、その中でも当社が一番注力しているのが「脱炭素社会への貢献」です。

具体的な取り組みとしては、 新たな工法・材料の開発や生産性向上による脱炭素型の施工や、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)※2、環境に配慮した設計、省エネ・創エネ・蓄エネなどの技術開発の推進などです。また、太陽光や風力、小水力などの再生可能エネルギー発電事業の展開も進めています。

「Green Challenge 2030」の5つの柱

出典:三井住友建設Webサイト

※1:従来の環境対策に加えて、資源投入量・消費抑制、ストック活用などをしながら、サービス化・マネタイズ化などを通じて付加価値を生み出す経済活動のこと。「循環経済」とも言う。

※2:Net Zero Energy Buildingの略称で、自然エネルギーの積極的な活用及び高効率な設備システムの導入等により消費電力を抑えると共に、再生可能エネルギーにより発電を行い、消費電力と発電電力の収支がゼロになる建築物を指す。延べ面積10,000平方メートル以上の建築物が該当する。

2030年までに実質カーボンニュートラルを達成

2021年11月に策定・公表した「2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップ」について教えてください。

原氏:「2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップ」では、Scope1と2のCO2排出量を2030年までに50%削減することを目指します。加えて、再生可能エネルギー事業等への取り組みによって、2030年までに実質的にカーボンニュートラルの達成を目指します。

2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップ

出典:三井住友建設Webサイト

具体的な施策として、Scope1については、建設機械で使用する燃料面の対策に取り組みます。国土交通省の「低炭素型建設機械認定制度」「燃費基準達成建設機械認定制度」で認定された建設機械や、今後開発が期待される電動の建設機械を採用していく方針です。

Scope2については、当社をはじめ関係会社の作業所や本支店オフィス、工場等の電力を2025年度までにグリーン電力に切り替えます。また、自家使用を目的とした再生可能エネルギー発電所を建設する予定です。

当社のScope1、2、3のCO2排出量のほとんどはScope3が占めているので、脱炭素社会実現のためには、Scope3の排出量削減が特に重要になります。具体的な削減施策のひとつとして、割合が大きいScope3カテゴリ11(販売した製品の使用)の排出量削減のために、ZEB、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の割合を高めていきます。

CO2排出量については、まずは自社で削減する取り組みを進めると共に、連結での数値の報告も求められますので、国内外の関係会社も含めてグループ全体で削減を推進していくことが何よりも重要なことだと考えています。

経営企画部 サステナビリティ推進部 課長
原 登紀子 氏

オフサイトコーポレートPPAへの挑戦

―グループ全体としてはCO2排出量削減にどのように取り組んでいますか。

武冨氏:「中期経営計画2022-2024」では、3カ年の投資総額400億円のうち、サステナビリティ関連投資を30%以上にするという目標を掲げています。この中には、脱炭素や省エネルギー、長寿命化、再利用関連の技術開発や設備投資、再生可能エネルギー事業などが含まれます。

2022年には、当社として初となるオフサイトコーポレートPPA事業に着手しました。オフサイトコーポレートPPAとは、電力需要施設とは離れた場所に太陽光発電システムを導入し、発電した電気は送配電ネットワークを経由して電力需要施設に送る電力購入契約を指します。大阪府泉佐野市にある3つの農業用ため池に自社開発の水上太陽光フロートシステム「PuKaTTo(プカット)」による発電設備を建設しました。2023年6月に完成、運転を開始しています。2024年1月には、同じ泉佐野市内のため池に新たな水上太陽光発電所が完成しています。

一般の発電事業者と当社が違うのは、我々は自治体の庁舎や橋の建設などを請け負ってきた実績があるので、自治体とのつながりが元々深い点です。営業所が全国にあって、自治体や地元の建設業の方との付き合いもある。当然、発電事業を継続していくには維持管理が欠かせませんから、地元企業と連携できる点は、安心して発電事業を任せられるという強みにつながっていると思います。

2024年1月に完成、売電事業を開始した泉佐野市郷之池水上太陽光発電所

出典:三井住友建設Webサイト

事業創生本部 副本部長 再生可能エネルギー推進部長
武冨 幸郎 氏

 

三井住友建設株式会社
国際支店 次長
中島 正博(なかじま・まさひろ)氏(写真左)

経営企画本部 サステナビリティ推進部 課長
原 登紀子(はら・ときこ)氏(写真中央)

事業創生本部副本部長 兼 再生可能エネルギー推進部長
武冨 幸郎(たけとみ・ゆきお)氏(写真右)

※中島氏のインタビューは後編にて紹介しています

前編では、「2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップ」、環境方針「Green Challenge 2030」策定の背景、オフサイトPPAへの取り組みなどについてお話しいただきました。

後編では、事業開発本部の立ち上げと取り組み、創エネ事業の展開、海外事業におけるCO2排出量削減への取り組みと課題、今後の展望などについてお聞きしていきます。

※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年2月)のものです。

後編はこちら:
「新規事業創出」と「海外展開」という視点で見る
三井住友建設の脱炭素化実現に向けた取り組み(後編)

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