セミナー情報
2023/11/6 2023/11/13
【建設業界のScope1】自社の直接排出 算定方法
GHGプロトコルのScope1は自社の事業活動によるCO2の直接排出を指しており、建設現場においては建設機械や輸送車両の燃料使用による排出が大半を占めています。このScope1の計算はいくつかの方法があり、状況によりそれぞれ使い分ける必要があります。今回は実際にCO2排出量を計算しながらScope1の排出量の集計を行ってみます。
Scope1とは?
現在、温室効果ガスの排出削減は自社のみではなく、自社の上流と下流を含むサプライチェーン全体で削減しようと言う取り組みがなされています。このサプライチェーン排出の枠組みはGHGプロトコルにより定められており、排出源に応じてScope1、Scope2、Scope3に分かれています。
(画像出典:環境省「SBT等の達成に向けた GHG排出削減計画策定ガイドブック」)
Scope1は自社で燃料を燃やしたり、焼却設備で焼却させたりした際に放出されるCO2を指しています。燃料の燃焼はガソリン車なども含まれており、自社で使用するガソリン車など内燃機関からのCO2放出もScope1に含まれます。他にも化石燃料を直接燃やしてアスファルトを加熱する際の排出もScope1に分類されます。
このため、建設業界においてはガソリンや灯油など化石燃料で動くトラック、重機類からの排出をScope1からの排出として考慮する必要があります。以下に詳しくご説明いたします。
Scope1の建設機械の排出
建設業界においてはトラックや油圧ショベル、各種トラクタ、クレーンなど大型な建設機械が使用されています。その他にもトンネル掘削機やコンクリートミキサー、アスファルトを固めるプレートコンパクターなど多種多様です。これら自社で所有している機械類の内、ガソリンや灯油、軽油など化石燃料を使用する機械を使用して排出されたCO2はScope1にカウントされます。
一方で、電気を使用して動くEVや機械の場合ですが、こちらは燃料を燃焼させた直接排出ではなく、発電所で発電する際に排出される間接排出となりますので、電気の使用はScope2に分類されます。従って、自社のEVを使用した場合の排出はScope2に分類されます。
では、ビル建設において他社である運搬業者が化石燃料で走るトラックで建築資材を輸送した際に排出したCO2はどうなるでしょうか?こちらは自社ではなく他社の車両で運搬しており自社による直接排出ではないため、Scope1には含まれません。また、EVではないのでScope2にも含まれません。従って、Scope1、Scope2以外の間接排出の分類であるScope3に含まれることになります。
Scope3は多岐に渡っており、15のカテゴリに分類されています。今回は『販売会社に建築資材を運送してもらった』と言う活動ですので、このケースは15のカテゴリの内のカテゴリ4の輸送、配送(上流)に分類されます。
Scope3のカテゴリ9にも輸送、配送(下流)と輸送に関するカテゴリがありますが、こちらは商品の出荷等の際に分類されます。つまり、同じ輸送でも建築資材を販売し他社の車両で輸送する側はカテゴリ9で、建築資材を購入し受け取る側はカテゴリ4に分類されますので、この点に注意が必要です。
建設機械による排出量の算出方法
CO2排出量の計算には二つの数字が必要になります。一つが排出原単位で、もう一つがその活動における活動量です。
実際に一例を出して計算すると、建築資材の輸送を行うために納品先までトラックで走行し、15Lのガソリンを消費した場合、活動量には15Lが当てはまります。
ガソリンの原単位は燃料法で2.3kgCO2/Lとしています。これはガソリン1Lを燃焼させると2.3kgの二酸化炭素が排出されることを意味しています。この原単位を用いると二酸化炭素排出量の計算は以下の通りになります。
原単位×活動量=CO2排出量
従って、今回の輸送活動による二酸化炭素排出量は2.3×15=34.5kgとなります。今回は消費燃料からCO2排出量を計算しましたが、これは燃料法と呼ばれる計算方法です。この他にも燃費と輸送距離から算出する燃費法や輸送した重量(トン)と輸送距離(キロ)から計算するトンキロ法などがあり、必要に応じて使い分けます。
種類と稼働台数を確認
全体の燃料消費量が一元的に管理できていれば燃料法を使って全燃料消費量から全CO2排出量を計算できますが、消費燃料が把握出来ていない場合は建設機械ごとに計算しなければなりません。この場合は燃費法やトンキロ法を使用します。今回は燃費法を使って計算してみましょう。
以下に、ある工事現場で使用された輸送車両の積載量と使用燃料を表にまとめました。実際の燃費が分かっている場合はその値を用いた方がより正確な計算ができますが、今回は計算しやすいように切りのいい数字を使用いたしました。
輸送車両はそれぞれ積載量が異なっており、燃費もそれぞれの最大積載量に応じて異なっています。排出原単位はガソリンよりも軽油の方が僅かに高いです。燃費と走行距離が分かれば輸送の際に実際に消費した燃料の量がわかり、この消費燃料と排出原単位からCO2排出量が計算できます。計算式は以下のとおりです。
走行距離÷燃費×原単位=CO2排出量
計算自体は簡単ですが、このような計算をエクセルにデータを一つ一つ打ち込みながら行うと効率が悪く入力ミスも起こりがちです。このため、あらかじめ燃費などの各種データを入力するだけで建設作業のみではなく、産業廃棄も含めた建設現場全体のCO2排出量を自動で計算できると非常に便利です。
Buildee(ビルディー)調整会議はこのような複雑な計算を自動的に行える便利なアプリです。Buildee調整会議では場内重機の予定調整・稼働管理・計画書出力を行うことができ、重機や車両などの様々な活動がアプリ内で管理されていますのでCO2排出量の集計、管理が自動的に行えます。また、排出量データは(一社)日本建設業連合会様の「CO2排出量調査報告」や、各種CO2排出削減活動の参考データとしてご活用いただけます。
このBuildee調整会議は現場管理を行うだけではなく、今後増えると予想されているCO2排出量の管理およびCO2排出量の削減を行うために建設現場でなくてはならない管理アプリとなるでしょう。
(出典:リバスタ「建設現場施工管理サービスBuildee」)
燃料使用量から実際の排出量を算出
Buildee調整会議を使用するとCO2排出量が自動的に計算され一元的に管理できますが、実際にはどのように計算されているのか排出量を計算しながら見て行きましょう。
先ほどの表で輸送車両ごとにCO2排出量を計算した結果を以下の表にまとめます。
計算の結果、今回の輸送活動では合計291.2kgの二酸化炭素が排出されていました。
建設現場では車両による輸送の他にも重機類やクレーンの使用など多岐に渡っています。これら機械ごとの活動を全てチェックし、計算する必要がありますので手間のかからない自動集計は必須だと言えます。
IoTデバイスで集計
建設現場においてCO2排出量を集計する際に予想される難点は、機械類の燃料使用量がデータとして上がってこず、燃料使用量を人の目で確認しなければならない点でしょう。しかし、この問題は機械類がIoTで結びつくと解決します。つまり、IoTデバイスを機械に繋ぐことで燃料消費データが自動的にアップできるようになれば、人の手を介さずに各種機械類のCO2排出量が自動的に計算されることになります。
CO2排出量を自動的に計算するIoTデバイスは様々な会社で開発されており、実用化もされています。このようなIoTデバイスを導入し、建設現場における機械類の稼働を把握することで、建設現場におけるCO2排出量の集計は自動化されていくと考えられます。
まとめ
建設現場におけるScope1の集計は全使用燃料が把握できれば容易ですが、協力会社分も含めて把握する必要があるので集計には手間がかかります。一方で、IOTデバイスは費用がかかる面はありますが、手間がかからず精度が高い集計が出来ます。建設機械を一台ずつ人の目で確認するのではなく、IoTデバイスで自動集計しBuildee調整会議内で管理することが実用的です。
リバスタは、建設業界のCO2算出や改善サービスに取り組んでいます。ぜひお気軽にご相談ください。
建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。
リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。
この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
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