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【建設業界のScope2】自社の間接排出 算定方法

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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建設業ではScope2のCO2排出量は主に使用した電力から計算されます。この計算で使用する排出係数は、電力会社や電力契約、送電端や需要端、国などで異なっており、適切な排出係数を用いることが大切です。今回は建設業におけるScope2の排出量の計算方法と排出係数について解説いたします。

Scope2とは?

Scope2とはGHGプロトコルで定められているエネルギー起源間接排出量を指します。これは国内外で他者から熱や電気、水蒸気の供給を受けた際、他社がその熱や電気を発生させる際に放出させたCO2排出量を言います。このScope2を計算する際にはGHGプロトコルと環境省のガイドラインに相違がある点に注意が必要です。

参照:「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.5)」Ⅱ-6~Ⅱ-7

①送配電ロスの対象

GHG プロトコルでは送配電ロスを Scope3 のカテゴリ3の対象としていますが、環境省のガイドラインでは同排出量を Scope2 とし、カテゴリ3においては送配電ロスに関する排出は算定対象外としています。

(画像出典:環境省「SBT等の達成に向けた GHG排出削減計画策定ガイドブック」)

電気の排出係数は送電ロスの扱いにより異なります。電気は送電するとロスが生じますので、送電前と送電後では排出係数が異なってしまいます。発電所から送電される地点では送電端と呼ばれ、電力を購入した需要者の地点では需要端と呼ばれています。発電端には送電ロスが含まれておらず、需要端には送電ロスが含まれていますので、送電端と需要端における電力量の差が送電ロスとなります。

GHGプロトコルでは、電気使用者の立場では送電端までがScope2、送電ロスはScope3に計上するように指定されています。つまり、Scope2には送電端の排出係数を使用して計算することになります。

一方で、温対法における排出係数は需要端を使用して算出されており、温対法では需要端を使用して計算され、環境省のガイドラインもこれに準じています。もちろん、地域によっては送電端を使用する方が適切な場合もありますので、このような場合には送電端で計算しても構いません。

いずれにせよ、計算方法によりCO2発生量が変化する訳ではありませんので、どちらの計算方法でもサプライチェーン排出量全体の計算結果は同じになります。

② 排出量の 2 元報告(Dual Reporting)

GHGプロトコルでは、Scope2の計算をロケーション基準法とマーケット基準法の2通りで報告することが求められています。では排出係数が異なっているので注意が必要です。

環境省のガイドラインでは、温対法における算定・報告・公表制度に準じて算定を行うこととなっており、GHGプロトコルのような2元報告は求められていません。

③ 対象となる温室効果ガス

GHGプロトコルではCO2のみではなく、その他の温室効果ガスの排出の算出も求めています。しかし、環境省ガイドラインではScope2の排出はCO2のみとしています。これはCO2が地球温暖化に寄与する割合が99%以上と圧倒的に高いため他のガスの影響は非常に少なく、CO2のみ算定すればよいということです。

GHGプロトコルとは

GHGプロトコルとは、CO2の排出量を算定および報告する際に使用される、国際的な基準のことを指します。「GHG」とは「Greenhouse Gas」が由来であり、日本語では温室効果ガス(CO2)の意味があります。GHGプロトコルは2011年10月に公表され、その後世界で共通基準として使用され続けています。

GHGプロトコルでは、企業が排出するCO2の排出量を、Scope1・2・3の区分で測定します。その数値を合算することで、サプライチェーン排出量を把握できるのも特徴です。今後も温室効果ガスの算定基準として、GHGプロトコルの内容が使用されるでしょう。

GHGプロトコルは、「GHGプロトコルイニシアチブ」によって策定された経緯があります。GHGプロトコルイニシアチブとは、環境問題の政策研究および技術に関する支援を実施する独立機関のことです。世界資源研究所と世界環境経済人協議会が中心となって発足し、その歴史は1998年からとすでに25年以上の歴史があります。

建設業界のScope2について理解を深める際には、GHGプロトコルの基本について把握するのも1つのコツです。

建設業界でのScope2

建設業界では水蒸気や熱の購入は少ないため、Scope2に関しては使用した電気による排出が主となります。オフィスやおよびEVなどバッテリーの充電、建設機械などの使用が主な電気の使用用途になります。

電気使用量のモニタリングですが、最近ではスマートメーターと言い、メーターに通信機能が備わったタイプが普及されています。このようなモニターから送られてきた電力使用量のデータと適切な排出係数を掛け合わせることで、排出量が自動的に計算されるようになりつつあります。

Scope1・2・3それぞれの定義

GHGプロトコルで分類されているScope1・2・3には、それぞれ詳細な定義があります。そのため建設業界におけるScope2を知る際には、各種Scopeの違いを知るのもポイントです。

GHGプロトコルにおけるScope1・2・3は、原料の調達から消費および廃棄までのサプライチェーン全体の流れで発生する温室効果ガスの排出量を、3つの区分に振り分けたものです。これらはScope3基準とも呼ばれ、それぞれの詳細を理解することで詳細を把握できます。

Scope1では、事業者自信が発生要因となった温室効果ガスの排出量を指します。直接排出量とも呼ばれ、工場の稼働で必要となる作業過程や燃料が燃えることで発生するCO2が対象になります。具体的には企業が管理する設備からの排出や、製造過程における化学反応によって排出されたものがScope1として計算されます。

日本国内におけるGX(グリーントランスフォーメーション)では、排出枠を超えて温室効果ガスを排出した企業は、排出枠が余っている別の企業から排出枠を購入する「排出量取引」が可能です。この取引の対象となるのは、今のところScope1のみとなっています。

Scope2は、先の解説通りエネルギーの供給を受けた際に他社が放出した温室効果ガスの排出量を指します。間接排出量とも呼ばれ、電気や熱、蒸気などの使用が対象になります。Scope3では、原材料の生産・輸送・使用・廃棄などの一連の流れで発生する温室効果ガスの排出量が該当します。

こちらはその他間接排出量とも呼ばれ、各ステージで発生する温室効果ガスの排出量を合わせて考えます。基本としてScope1とScope2以外の部分で発生したすべての温室効果ガスの排出量が、Scope3に該当すると判断されるでしょう。このように、Scope1・2・3にはそれぞれ異なる特徴があります。

Scope2だけでなく、この機会に関連するScope1とScope3についての理解を深めるのもおすすめです。

企業がScope2を策定する理由とは

※Scope2は記事の内容通り、策定(方針を立て物事の処置を定めること)するものではないと思われます。

算定の間違いでしょうか?いずれにせよ見出しの意図がわからないため執筆を一度保留といたします。

Scope2の算出手順

Scope2のCO2排出量の計算は基本的に、電力消費量と排出係数の2つの数字を掛けることで算出されます。電力消費量に関しては電力会社が把握していますので容易に知ることができますが、排出係数に関しては様々なケースに応じた選択が必要ですので、それぞれのケースで異なる排出係数を使用しなければなりません。

排出係数は全国平均や送電網ごと、電力会社ごとに算出された値があります。同じ電力会社でも基礎排出係数と調整排出係数が存在しています。基礎排出係数とは、販売した電力を発電する際に放出したCO2排出量を販売した電力量で割った値です。一方の調整排出係数とは基礎排出係数にカーボンオフセットを加味して算出された係数です。

ロケーション基準は送電網の平均排出係数を用いて計算することを指し、マーケット基準は契約している電気の排出係数を使用します。GHGプロトコルではScope2の排出量を算出する際に、ロケーション基準とマーケット基準の両方の数値を算出しなければなりません。

(ロケーション基準イメージ図)

(マーケット基準イメージ図)

つまり、ロケーション基準だとその地域の平均排出係数を使用すれば計算できます。例えば、2022年度の日本全国の平均排出係数は0.000434tCO2/kWhです。これは1kWhの電力を発電する際に0.000434tのCO2が排出されたことを意味しています。この係数を使って10,000kWhの電力を使用した際に排出されたCO2は以下の計算の通り4.34tとなります。

10,000kWh×0.000434tCO2/kWh=4.34tCO2

マーケット基準の特徴として、グリーン電力証書など再生可能エネルギー由来の電力証書の利用が認められている点があります。グリーン電力証書とは再生可能エネルギーを使用して発電された電力の環境付加価値を金額に換算したもので、この証書を購入すると購入額に応じてCO2排出量を削減したことになります。

マーケット基準で計算するとしてみますと、契約した電力の排出係数を0.0002kgCO2/kWhとし、この電力を10,000kWh使用し、さらにグリーン電力証書を5,000kWh分購入したとすると、CO2排出量は1tとなります。つまり、同じ電力量を使用しても計算基準が異なれば排出量も異なります。

(10,000-5,000)kWh×0.0002tCO2/kWh=1.0tCO2

このようにロケーション基準とマーケット基準は計算方法が同じですが、使用する排出係数が異なります。マーケット基準は購入先の電力会社が公表している排出係数を調べ、購入した契約電力ごとに算出する必要があります。

現場毎に電力会社が違う?

マーケット基準のように平均化された排出係数を用いれば計算は簡単になりますが、ロケーション基準のように複数の電力会社から購入した電力はそれぞれ計算しなければならなりません。このようなケースの計算方法を示します。

以下はA、B、Cの現場ごとに異なる電力会社から電力を購入していることをまとめた表です。それぞれの会社で排出係数が異なっています。この場合、使用電力量と排出係数が分かっていればそのまま計算し、合計すれば完了します。ただし、再生可能エネルギー由来の電力でしたらカウントしない、もしくは排出係数が0として計算します。

Scope2の算定対象者

※こちらもScope2の意味を鑑みるに、算定対象者なるものは存在しないと思います。「対象」であれば電気、熱・蒸気などがあると説明できますが、人が対象となるケースは調べたところないように思われます。

参考サイトの「https://zeroc.co.jp/column/scope2/」に同じ見出しがありますが、こちらはScope2に全く触れておらず、Scope1の解説になっています。(説明しているものも「対象者」ではなく「対象」ですので、よくわからない見出しになっています)

こちらも「対象」の間違いでしょうか。
見出しの意図がわからないため執筆を一度保留といたします。

Scope2の算定に必要なもの

Scope2の算定時には、「エネルギーの使用量 × CO2排出原単位(排出係数)」という計算式が用いられます。エネルギーの使用量とはそのまま、実際に使ったエネルギーの値を意味します。「活動量」と呼ばれることもあります。先に解説したScope2に該当する対象を参考にして、計算を行うことになるでしょう。

計算式で使用されるもう一方の「CO2排出原単位」とは、活動量あたりのCO2排出量を指します。Scope2での活動量は、他社から購入をした電気・熱・上記といった間接排出量のことです。例えば電力の場合には、1kWhあたりの排出量を定めた係数を参考にして計算を実施します。

Scope2の算定や報告をする際には、「ロケーション基準手法」と「マーケット基準手法」といった手法が基準になります。ロケーション基準手法とは、地域や国といった各区域での発電による平均の排出原単位に基づいた算定方法です。日本では2016年度から、全国平均が公表されています。

ロケーション基準手法を使った計算方法は、「電力消費量(kWh) × 全国平均排出原単位」となります。マーケット基準手法とは、企業が電力会社との契約によって購入した電力の排出原単位に基づいた算定方法です。こちらの算出方法の場合、再生可能エネルギーを使って電力を確保できれば、排出量の削減が可能です。

ロケーション基準手法の計算方法は複雑で、「Σ{消費量(kWh)×(調整後)排出原単位(t-CO2/kWh)}」となっています。計算が難しい場合には、専用の算定ツールを活用するのがおすすめです。算定ツールならデータを収集してから入力するだけで、CO2排出量を簡単に把握できます。

排出原単位データベース

排出原単位データベースとは、サプライチェーンを通じた組織内のCO2排出などを算定する際に使用されるデータ・および情報をまとめたデータベースです。電気1kWh・焼却1t当たりのCO2排出量など、各種類の活動量に合わせてデータ化されています。

排出原単位データベースには国内と海外のものがあり、最新情報は環境省のホームページで公表されています。排出原単位データベースは主に、CO2排出量の算定や、CO2排出量を削減するための方法の考案時などに用いられます。

例えばサプライチェーン全体を見直して、CO2排出量が高い部分を特定し、その原因と対策を考えることができます。排出原単位データベースにはScopeごとに適した種類があるため、Scope2の計算時にはそれに合わせてデータベースの選定を行いましょう。

グリーン電力を使うと

太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマスにより発電された電力が再生可能エネルギーです。この再生可能エネルギーの使用はサプライチェーン排出から除外できます。言い方を変えれば再生可能エネルギーの排出係数は0として計算できます。

バイオマス発電は太陽光発電などと異なり燃焼時にCO2を排出します。しかし、バイオマスは植物が大気中のCO2を取り込んで出来ているので、バイオマスを燃焼させても大気中のCO2は増えません。このためバイオマスも再生可能エネルギーに分類されています。GHGプロコルではバイオマス由来の電力はScopeにはカウントせず、別途報告するように求めており、温対法では算定の対象外となっています。

現場での太陽光発電

現場で太陽光発電を行いその電気を使った場合ですが、この際の電気は再生可能エネルギーを使って発電されていますので、CO2排出量はゼロとなります。また、使用電力はカウントする必要はありません。

Scope2の事例

Scope2に関する取り組み事例には、さまざまなパターンがあります。多くの事例を参考にすることで、Scope2に対する理解を深めることも可能です。以下では、Scope2における取り組みの事例を解説します。

事例1.Panasonic

Panasonicは、自社で使用する電力を100%再生可能エネルギーに換えることを目標に掲げています。オフィスや工場で使用するエネルギーを再生可能エネルギーに転換することで、自然環境への負担を減らす意図があります。

具体的には太陽光発電の導入のほか、外部から再生可能エネルギーで生産した電力を購入するかたちで、達成を目指しています。製造業においては生産に使用するエネルギーをいかに効率化できるかが重要なため、さまざまな工夫がScope2の結果に影響すると考えられます。

実際にPanasonicは2023年3月時点で、グローバル10拠点における「CO2ゼロ工場」を達成しています。

事例2.リマテックホールディングス株式会社

リマテックホールディングス株式会社は、Scope2の多くを占める工場を対象にして、省エネルギー対策を実施するなどの取り組みを行っています。そのほか、購入する電力を再生可能エネルギー由来のものに切り替えて、環境への配慮に貢献することを目指しているのも特徴です。

Scope2の算定結果を参考にして、特定の領域で積極的に再生可能エネルギーを導入していくことも、重要な施策になります。

事例3.Google

世界最大の事業規模を誇るGoogleも、Scope2に含まれるCO2の排出量削減に力を入れています。データセンターなどで使用される電力をまかなうために、年間消費電力の量と同等の再生可能エネルギーを購入し、Scope2に終えkる排出量を実質ゼロに抑えています。

また、太陽光や風力を使用する設備にも大規模な投資を行い、クリーンエネルギーの生産にも着手しています。自社がお手本となって再生可能エネルギーの普及を促し、他企業の導入に貢献している点も特徴的な事例です。

まとめ

Scope2の計算はGHGプロトコルと環境省のガイドラインとで違いが見られる点がありますが、どちらの計算も適切な排出係数とカテゴリさえわかれば電力使用量に応じて計算できます。また、CO2削減は省エネだけではなく、再生可能エネルギーの使用やグリーン電力証書の購入でも行えます。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO₂排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。

また、建設会社からCO₂排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるディベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO₂排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは、建設業界のCO₂対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業界に特化したCO₂排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

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