業界事例
2023/11/29 2023/11/30
建設混合廃棄物リサイクル率90%を実現。廃棄物の高精度選別で高俊興業が目指す資源循環型社会とはー(前編)
はじめに
産業廃棄物の収集運搬・中間処理・リサイクル業を展開する高俊興業は2022年4月から、東京臨海エコ・プラント、市川エコ・プラント、高俊中央技術研究所にて使用される全ての電力を再生可能エネルギー由来のものにすることで、廃棄物処理に必要となる電力から発生するCO2の発生量をゼロにする取り組みを進めています。
混合廃棄物の高精度選別で資源循環型社会形成推進のトップランナーを目指す同社の高橋潤社長に、循環型社会と低炭素社会の実現に向けた取り組みや、建設廃棄物の再資源化の重要性などについてお話を伺いました。
「非化石証書」導入でCO2を削減
―東京臨海エコ・プラント、市川エコ・プラント、高俊中央技術研究所の3箇所で使われる電力を再生可能エネルギーに変えたきっかけを教えてください。
国際社会の共通目標として設定された2030年のSDGs目標達成期限や国が掲げる2050年の脱炭素の実現目標年を見据えて、CO2削減に取り組むという話が出てきた頃に、社員から「非化石証書」付きの再生エネルギー活用の提案がありました。
「非化石証書」は、再生可能エネルギーなどの非化石電源が持つ環境価値を証書化したもので、発電時にCO2を排出していない証明になります。2022年4月より東京臨海エコ・プラント、市川エコ・プラント、高俊中央技術研究所で使われるすべての電力を再生可能エネルギー由来のものに切り替えました。
私たちの会社は、大体1年間に11,000トンのCO2を出しているのですが、そのうちの約5000トンがプラントと研究所の電力なので、排出量の半分弱のCO2が削減されたことになります。
さらに電気使用量そのものをいかに下げるかという観点から、太陽光パネルの設置も検討しています。
残り6000トンについては、4000トンは廃棄物の収集運搬で使用する車両約200台が排出する量で、2000トンが2箇所のプラントで使う重機が排出する量です。
廃棄物の収集運搬で使用するトラックにはまだハイブリッド車がないので、車両と重機をどう対策するかが今後の課題ではあります。
組織的な取り組みとして15年前に、部署横断型の温暖化対策推進室を立ち上げましたが、そこで取り組んできたのは、そもそも消費する電力量自体をいかに減らすかということです。
たしかに「非化石証書」付きのエネルギーを使えばCO2の排出量はゼロになりますが、それよりもどうやって省エネを図っていくかという点が一番大事だと思います。
CO2削減量の表と3箇所の写真(https://takatoshi.co.jp/compliance/carbon.html)
Scope3把握への新たな取り組み
―CO2削減にあたって、御社のCO2排出量は、どういう形で把握していますか。
燃料や使用電力に対して係数をかければ、Scope1、2は割と簡単に算出できます。
問題はScope3の位置付けですが、例えば当社が廃棄物を処理した後にトラックで搬出した先を含めてどれくらいの量のCO2を間接的に出しているのかというところはまだ算出できるに至っていません。
ここを把握するのはなかなか難しいんです。難しいからこそいま業界でも算出できるようにいろんな対策が出てきているので、まさに取り組もうとしているところです。
もうひとつ課題を挙げると、私たちが中間処理工場でCO2排出量のカウントをゼロにできても、実は建設業者のカウントにならないのです。
逆に、工事現場に出入りしている運搬車両のCO2排出量は、建設会社の排出量に加算されていくので、建設会社の方からも、先ほど話したハイブリッド化の話が出てくるのです。
そういう意味でも、運搬車や作業車の燃料部分をどうしていくかというのは課題なわけです。
建設業者が把握するScope3で、中間処理工場のCO2排出量の削減が反映されるようになれば、建設業界の見方も変わってくるとは思いますね。
高精度選別による再資源化推進
―混合廃棄物を高精度で選別し再資源化するシステムが生まれた背景を教えてください。
「高精度選別再資源化システム」は、徹底した機械選別技術と選別品のリサイクルを容易にする技術を導入し、無害で安定化した再生品を生成することで、環境負荷の低減とリサイクル率の向上を目指すものです。
遡ると1990年頃に戻るのですが、我々の業界における従来の中間処理というのは焼却施設で、まずは工場に廃棄物を持ち込んで可燃系と不燃系に分ける。可燃系のものは中間処理工場で燃やして減量化して管理型埋立処分場に持っていくわけです。そして不燃系は埋立処分というのが一般的な処分方法でした。
その当時、当社も中間処理施設を持つためにいろいろ検討をしていたのですが、建築制約などもあり、当社として第一号の中間処理施設「市川エコ・プラント」が千葉県市川市に完成したのは8年後の1998年でした。その時点で他社からは8年も遅れているわけですから、同業他社と同じことをしても選ばれない。
そこで、焼却施設を持たず、代わりに破砕と多段階にわたる選別設備で分別精度を向上させたわけです。
焼却するとサーマルリサイクルになりますが、何段階も選別をしていくことによってマテリアルリサイクル量を増やそうという試みです。
施設名「エコ(EKO)」には、Environment(環境)Keeping(保全)Opereation(活動)という意味があります。
ここで得た教えが2つあります。1つ目は不可能を可能にする意気込み。2つ目は、選別技術はこれからも当社の武器として伸ばしていかないといけないという点です。
中間処理施設がオープンして2年後の2000年に循環型社会形成推進基本法という法律が制定され、そこで「3R」という言葉が初めて出てきました。
Reduce、Reuse、Recycleの3つですが、Reduceというのは、廃棄物を出さないようにしましょう。Reuseは、私たちの専門用語で言うと、誰かが使ったものを少し加工してきれいにして、他の人が中古品でもいいからと言って使う。廃棄物を発生させない、使えるものは使うということです。
これを廃棄物処分の話に当てはめると、処分するゴミのまま終わらせるのではなくて、ゴミをいかに資源化していくかということです。
焼却施設を持っていなかった分、何段階も選別してマテリアルリサイクルを推進するという当社の考え方が法律に沿ったものでもあったので、そこから仕事も増えていきました。
高精度選別の写真(https://takatoshi.co.jp/service/recycling.html)
リサイクル率90%を達成
―現在、エコ・プラントにおけるリサイクル率は、重量ベースで90%以上を実現していますね。
国土交通省が発表した平成30年度の建設混合廃棄物のリサイクル率が63.2%ですから極めて高い率となっています。
ただ、オープン当初のリサイクル率は3%くらい。機械が途中で止まって全く選別機能を果たせていなかったんです。
プラントメーカーといろいろ意見交換をしながらやっと形になったのが2年後です。
ところが、やっと機械が動くようになっても、中間処理した後の生成物を受け入れてくれる施設がなくて、いくら作っても結局焼却施設や埋立処分場に持って行くということもありました。
選別をきちんとして、どんなにいいものを作っても受け入れ先が確保されていないと意味をなさない。
廃棄物を処理する側の取り組みも大事なのですが、再資源化したものを受け入れる先ともきちんと手を組んで連携していかなければならないということです。
リサイクル品の写真(https://takatoshi.co.jp/service/recycling.html)
高俊興業株式会社 代表取締役社長 高橋潤(たかはしめぐむ)
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前編では、「非化石証書」導入によるCO2削減への取り組み、高精度選別再資源化システムが生まれたきっかけ、廃棄物の再資源化の重要性などについてお話しいただきました。
後編では、廃棄物処理業界と建設業界の連携、高俊興業が目指す資源循環型社会、環境負荷軽減への取り組みなどについてお聞きしていきます。
後編はこちら:高俊興業のリサイクル率90%と資源循環型社会への取り組み 廃棄物処理業界の課題とビジョン(後編)
この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
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