基礎情報
2023/9/4 2024/11/21
日本の二酸化炭素排出の原因とは?排出量を部門別にランキング
CO2の排出量増加により、年々加速しているのが地球温暖化です。地球温暖化に伴う異常気象の発生や生態系の変化による悪影響は、人々の暮らしや健康に直結する重要課題であり世界中で対策が進んでいます。特に、建設業界では大量のCO2が排出されるため、その影響と責任は非常に大きいです。
本記事では、日本におけるCO2の排出量を部門ごとのランキングにして、各部門のCO2の原因や脱炭素に向けた取り組みも解説します。CO2の排出量に関する情報や各部門の課題、取り組みに興味のある人は参考にしてください。
温室効果ガスとは
温室効果ガスとは、地球温暖化の原因となるガスのことです。日々の生活・産業活動において発生するCO2は太陽光の赤外線を吸収する働きをします。
しかし排出量が多いと地中に戻る吸収した熱の量が多くなり過ぎて、地球温暖化を招きます。
CO2の排出原因は化石燃料の使用
CO2の排出原因は、主に生活や産業の中で使われる化石燃料です。代表的な化石燃料とは、石油や石炭などで、炭素を含んでいるため燃やすとCO2が発生します。
この化石燃料を用いた火力発電やガソリン車の使用など、日本の経済や人々の生活を支える活動がCO2の原因になっています。
また、経済の成長と共に住宅や産業・商業施設などの建設が行われ、森林面積は年々減少していきました。森林面積の減少に伴い森林によるCO2の吸収量が追い付かず、排出量が増加し続ける結果へとつながっています。
【日本の温室効果ガス総排出量】
引用:2021年度の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について|環境省
2021年の日本の温室効果ガスの排出量はCO2換算で11億7,000万トンです。そのうちCO2の排出量は10億6,400万トンであり、温室効果ガスの約9割を占めています。また、2013年度の排出量(14億800万トン)と比べて、20.3%(2億8,530万トン)減少しています。
近年の経済発展により人々の生活は豊かになり、その一方でCO2の排出量は増加し続け、環境問題へと発展しました。
この問題の解決は世界規模で行われるようになり、日本では2050年の脱炭素社会の実現に向けてCO2の排出削減への取り組みを加速させています。
グラフの通り、日本の温室効果ガス排出量は減少傾向にあります。この理由には企業や家庭において「再エネ」や「省エネ」の取り組みが進んでいることが挙げられます。
この脱炭素社会に向けた取り組みの結果として、2020年度のCO2排出量は、2013年度比で約21%の減少が確認されました。
部門別のCO2排出量ランキング
環境省のサイトでは2021年のCO2の排出量を産業部門ごとに集計した資料が公開されています。
この資料ではどの産業部門がどれだけ排出しているか、排出量と排出割合を確認できます。以下に特に排出量が多い部門や業界について詳しく解説いたします。
【部門別のCO2排出量ランキング】
順位 | 部門 | 2020年度排出量 |
1 | エネルギー転換部門 | 430百万トン(40.4%) |
2 | 産業部門 | 269百万トン(25.3%) |
3 | 運輸部門 | 178百万トン(16.7%) |
4 | 業務その他部門 | 59.9百万トン(5.6%) |
5 | 家庭部門 | 51.6百万トン(4.8%) |
6 | 工業プロセス及び製品の使用 | 43百万トン(4.0%) |
7 | 廃棄物 | 29.9百万トン(22.8%) |
8 | その他 | 2.9百万トン(0.3%) |
9 | 合計 | 1,064百万トン |
参照:2021年度の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について|環境省
2013年と比較すると、CO2排出量が減少しているのが分かります。
引用:2021年度の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について|環境省
エネルギー転換部門
日本国内のCO2排出量が最も多いのがエネルギー転換部門で、全体の約40%を占めています。
エネルギー転換部門は、石炭や石油などの一次エネルギーを電力などの二次エネルギーに転換する部門であり、発電所や製油所などが代表的です。
日本の電力は化石燃料を大量に使用する火力発電に支えられているのが現状です。また、ガソリンや軽油などの石油製品製造および使用によるCO2排出量も深刻であり、排出量削減にむけた施策や技術導入が強化されています。
日本では太陽光や風力、水力と言った再生可能エネルギーの普及が進んでいます。
特に日本は火山が多く地熱を利用できる場所が多くありますので、地熱発電の普及が進みつつあります。
また、固定価格買取制度(FIT)の実施など、コスト面でも再エネ設備を導入しやすくなっており、再エネの普及を後押ししています。
産業部門
エネルギー転換部門の次にCO2を排出しているのが産業部門です。
産業部門は、製造業、工業、建設業、農林水産業などの業種が分類されており、業種の企業活動により排出されるCO2が対象です。
その中でも鉄鋼業のCO2排出量は産業部門の約40%を占めており、鉄鋼業からの排出が特に注目されています。
鉄鋼業における製鉄所では、これまで「高炉」で石炭コークスを大量に燃やして鉄鋼を製造してきました。
この高炉ではコークスの燃焼と酸化鉄の還元のために大量のCO2が排出されています。
しかし、近年では「電炉」でのリサイクル鉄を原料とした鉄鋼製造により、CO2排出量を大幅に減少させる技術も導入されており、水素で酸化鉄を還元するなど、低炭素の鉄鋼の製造技術開発が進んでいます。
このような製造時のCO2の排出量が少ない鉄鋼はグリーンスチールと言われるようになっています。
鉄鋼業以外もそれぞれの業種でCO2排出削減の課題を抱えており、脱炭素に向けた取り組みが行われています。
建設業
産業部門に分類される建設業では、建築や解体でブルドーザーやショベルカーなどの建設機械の使用をしており、CO2排出の要因となっています。
国土交通省のデータによると、2021年の産業部門のCO2排出量のうち、建設機械による排出量が1.4%を占めます。
この対策として、再エネ由来の電力の使用や作業工程の効率化、燃費改善などにより排出量の削減が行われています。
その他にも太陽光発電システムを設置すると共にCO2排出量の少ない建物にすることでCO2排出ゼロの建物を作っています。この建物はZEBと呼ばれており、注目を集めています。
【建設業の脱炭素に向けた取組み】
建築物のZEB化 | Color 排出量の少ない施工方法の導入促進 |
再生エネルギーへの転換 | 低燃費型建設機械の普及を促進 |
このように、建設業界では現在、主に建設物のZEB化や再生エネルギーの導入による脱炭素の取り組みを推進しています。
ZEBに関する情報は「ZEBとは?知らないと乗り遅れるZEBの基礎知識」も参考にしてみてください。
運輸部門
運輸部門のCO2排出は、旅客輸送(自家用車やバス、鉄道など)が56% (1億400万トン)、貨物輸送(貨物自動車や船舶、航空)が44% (8,050万トン)です。
ガソリンからの排出量が53.2%(9,800万トン)と、運輸部門の排出量の半分以上を占めています。
次いで、軽油からの排出量が34.2%(6,300万トン)と、この2つの燃料種で全体の排出量の9割近くを占めています。
【運輸部門のCO2排出量状況(旅客・貨物別)】
旅客運送からの排出量は、2013年度以降に8年連続で減少し、2020年度はコロナ禍の影響により、大きく減少しました。また、貨物輸送からの排出量は、2014年度以降7年連続で減少しています。
運輸部門のCO2排出量は2012年度以降ではコロナ禍のイレギュラーな増加以外は減少されてきました。この減少はガソリン車やハイブリッド車の燃費改善及び燃費が向上した自動車の販売台数が増加したためであると推測されます。
関連記事:二酸化炭素排出の原因とは? 排出割合や地球温暖化との関係を解説
温室効果ガスに対する日本の取り組み
環境省が2021年に発表した「地球温暖化対策計画」によると、日本政府は、温室効果ガスの抑制のために以下のような方針を打ち出しています。
- 日本の地球温暖化対策は中期的目標と長期的目標を設定して、2050年までに温室効果ガス排出ゼロの実現を目指す
- 5つの部門で地球温暖化抑制の対策を策定し実施
- CO2の吸収源である森林などの植物に対し、森林の整備や保安林などの管理、保全などを推進
目標達成のために、各分野が温室効果ガス排出の軽減に取り組んでいます。
温室効果ガスに対する取り組み
温室効果ガスに対する取り組みは以下のものが代表格です。
・再生可能エネルギーの積極的な導入(太陽光発電など)
・電化製品の省エネ
温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーは、数年後には100%の導入を目指しています。
温室効果ガスに関するよくある質問
温室効果ガスに関する質問を以下にまとめました。質問とその回答を紹介します。
温室効果ガスの一番の原因は何ですか?
温室効果ガスで排出量が多いといわれているのが、CO2です。CO2は日々の生活・産業活動などあらゆる方面で排出されるため、公私ともに再生可能エネルギーの導入・省エネを心がけないといけません。
温室効果ガスの排出源のトップ3は?
環境省が2021年に発表した「温室効果ガス排出量(確報値)について」によると、CO₂の排出源のトップ3は以下のとおりです。
- エネルギー転換
- 産業
- 運輸
発電方法を再生可能エネルギーに100%変更することが今後の目標といえます。
二酸化炭素を一番出しているものは何ですか?
電気・熱配分排出量2つの合計額で最も多いのが、鉄鋼業・化学工業・製造業などの産業部門です。生産に関しては膨大なエネルギーを消費するため、それに比例してCO2排出も増えます。
温室効果ガス排出量ランキングで日本は?
総務省統計局の「世界の統計2024」によると、CO₂排出量の世界ランキングは以下のようになっています。
1位 中国
2位 アメリカ
3位 インド
4位 ロシア
5位 日本
6位 ドイツ
7位 韓国
8位 カナダ
9位 ブラジル
10位 トルコ
日本の排出量は世界的に見てもトップクラスといえるため、CO2排出の削減、再生可能エネルギーの積極的な導入が今後の大きな課題といえます。
まとめ
CO2の排出原因は主に生活や産業の中で使われる化石燃料であり、化石燃料である石油や石炭などを燃やすことで地球温暖化の原因の1つとなるCO2が発生します。特に建設業界では、大型機械の運用や建材の製造過程で大量の化石燃料が消費され、これがCO2排出の大きな要因となっています。
2020年の日本の温室効果ガスの排出量は11億4,900万トンです。
そのうちCO2の排出量は10億4,400万トンであり、温室効果ガスの約9割を占めています。
日本全体で脱炭素が進められており、建設業界でも低炭素技術の導入や効率的な資材利用によるCO2排出削減への取り組みを加速させています。
日本政府も2050年脱炭素社会の実現に向けて様々な取り組みを推進しており、環境省「脱炭素ポータル」にて取り組み情報が発信されていますので、注目してみてはいかがでしょうか。
建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。
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この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
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