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時計 2023/11/14 アップデート 2024/3/25

なぜ脱炭素への取り組みが必要なのか?企業が推進する理由も解説

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
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脱炭素やカーボンニュートラルという言葉が昨今話題になることも多くなっています。

当記事では、なぜ脱炭素への取り組みが必要なのか、推進されている背景も解説します。企業が脱炭素に取り組むべき理由も解説するのでぜひ参考にしてください。

脱炭素は加速する地球温暖化への対策のひとつ

脱炭素とは、カーボンニュートラルを目指すことであり、CO2排出量を実質ゼロにすることです。

地球温暖化対策として脱炭素が推進されている背景には温室効果ガス排出量の増加があります。
温室効果ガスは太陽の熱を地球に留め、 気温を一定に保つ 働きがありますが、増えすぎることによって宇宙に放出される熱が地表に滞留してしまい地球温暖化につながります。

温室効果ガスが排出される主な原因は、産業や運輸で使用される化石燃料によるエネルギーの使用であり、大気中のCO2濃度は18世紀のイギリス革命以降増加が続いています。脱炭素の実現によりCO2濃度の上昇を防ぐことで、地球温暖化を抑制できると考えられています。

現在、温室効果ガスとして7種類が指定されていますが、その中で最も排出量が多く、地球温暖化への寄与が高いと言われているガスがCO2です。

このため、温室効果ガスの増加による地球温暖化を抑えるためには脱炭素への取り組みが必要であり、その一環として省エネ設備や化石燃料に代わる再生可能エネルギーの活用促進が進められています。

カーボンニュートラルと脱炭素の違い

カーボンニュートラルと脱炭素の違いは明確に定義されていません環境省はカーボンニュートラルの定義を「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」として公表していますが、脱炭素の定義を明示していません。一般的には同義として利用されますが、カーボンニュートラルの方が地球単位など広義的な意味で利用されることがあります。

国や企業の脱炭素に向けた具体的な取り組みを知りたい方は「脱炭素とは?概要や取り組み状況に関して解説」を参考にしてください。

脱炭素が推進される理由

【脱炭素が推進される理由】

  • 地球温暖化の抑制
  • 資源枯渇への対処

いずれも国際的な課題となっており、家庭や企業、そして国全体としての取り組みが必要とされています。

地球温暖化の抑制

CO2をはじめとする温室効果ガスの排出によって地球温暖化が進んでいます。脱炭素が推進される主な理由は地球温暖化の進行を抑制することにあります。

地球温暖化が進むと地面や海水の温度が上がります。長期的な気温の上昇によってするため、雨量が増加して異常気象が発生しやすくなります。

脱炭素が推進される主な理由は地球温暖化の進行を抑制することにあります。近年CO2をはじめとする温室効果ガスの排出によって地球温暖化が進んでいますが、地球温暖化が進むと地球の平均気温が上昇し様々な悪影響が出てしまいます。

例えば、海水及び大気の温度上昇により海水の蒸発量が増加すると共に大気中の水蒸気量も増加します。これにより雨量が増加して異常気象が発生しやすくなります。実際、最近では線状降雨帯やゲリラ豪雨と言った異常気象の発生が増えており、地球温暖化が影響している可能性が高いと言われています。

このような異常気象の発生を抑制するためにも、脱炭素を推進することで異常気象の原因と言われている地球温暖化を抑制することが期待されています。

なお、日本では温室効果ガスの9割がCO2となっていますが人為的なCO2の排出量の削減と併せて、植林や森林管理などによってCO2の吸収量を高めることもCO2濃度の上昇を抑える取り組みとして推進されています。

参照:環境省「地球温暖化と感染症~いま何がわかっているのか?~

資源枯渇への対処

石油、石炭、天然ガスなどの資源が有限であることも、脱炭素が推進される理由として挙げられます。

【化石燃料の可採年数】
燃料 可採年数
石油 53.5年
天然ガス 48.8年
石炭 139年

参照:資源エネルギー庁「エネルギー白書2022 第2部 第2章 第2節 一次エネルギーの動向

可採年数とは資源が将来的にあと何年生産可能であるかを示した数字です。可採年数は、現在採掘可能な埋蔵量を年間生産量で割ったもので、埋蔵量や生産量の変動によって変化します。

資源が枯渇すると将来的に燃料不足となりエネルギー供給ができなくなります。化石燃料による環境への影響も踏まえ、水素をはじめとするCO2排出を抑えられるエネルギー源の活用が必要とされています。このため、何度も繰り返して使用できる再生可能エネルギーの利用が進んでおり、この再エネを利用して製造するグリーン水素が注目されています。

なお、水素のエネルギー源としての仕組みに関して知りたい方は「水素と脱炭素の関連性は?エネルギー源としてのメリット・デメリットも解説」を参考にしてください。

パリ協定での目標達成

脱炭素が推進される背景には、パリ協定で設定した目標を達成することも挙げられます。パリ協定とは2015年に採択された、気候変動対策に関する国際的な協定のことです。

パリ協定では「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」ことを共通目標としています。日本の目標は2030年に温室効果ガス2013年度比46%減、さらに50%の高みに向けた継続的な挑戦を目標として掲げています。

なお、脱炭素は気候変動への対策を目的としており、貧困や環境問題など幅広い社会問題の解決を目標としたSDGsとは異なります。脱炭素とSDGsの関係性を知りたい方は「SDGsと脱炭素の関連性と取り組み事例について」を参考にしてください。

国内だけでなく海外でも脱炭素が推進される理由

脱炭素への取り組みは国内だけでなく、海外でも盛んに行われています。2021年11月時点で、154カ国・1地域がカーボンニュートラルの実現を表明しており、脱炭素は世界的に推進されている状況です。

脱炭素が推進される理由としては、深刻化する地球温暖化対策の必要性が挙げられます。海外では脱炭素への取り組みとして自然エネルギー、再生可能エネルギーの活用、炭素税の導入などが行われている先進的な地域もあります。日本でも太陽光パネルの導入が進んでいると共に、2012年からはガソリン購入の際に炭素税が課せられるようになっています。

また、国内外で脱炭素が推進される背景には、2021年にこのアメリカの復帰により世界の主要国が全て参加し、世界規模での協力体制を作ることへの道筋が出来ました。

さらに、気候変動や社会情勢への関心の高まりから、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)に配慮した投資である、ESG投資額が全世界で2020年に35.3兆ドルまで増加し、世界的に気候変動に関する情報開示を企業に求める動きが広がりました。こういった世界情勢を受け、日本でも温対法や省エネ法など環境関連を始めとした様々な法整備が進んでいます。

2050年目標とは?

2050年カーボンニュートラル実現に向けて世界的な取り組みが行われています。2050年目標とは、2015年12月に採択されたパリ協定以降、各国が掲げるカーボンニュートラル実現を目指す目安となる年です。

 2018年に公表された IPCC「1.5℃特別報告書」によると、世界全体の平均気温の上昇を、2℃を 十分下回り、1.5℃の水準に抑えるためには、2050年頃にCO2排出量を正味ゼロとする必要があります。この報告書によって、世界各国で、2050年までのカーボンニュートラルを目標として掲げる動きが広がりました。

国内でも2020年10月、政府が2050年カーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言し、環境省を中心に「地域脱炭素ロードマップ」や脱炭素の先行地域を策定するなどの取り組みがなされています。

 参考:環境省「脱炭素先行地域 – 脱炭素地域づくり支援サイト」

企業が脱炭素を推進する理由

企業が脱炭素に取り組むことで事業の優位性を高められます。

【企業が脱炭素を推進する理由の例】

  • 脱炭素経営による企業イメージの向上
  • 社員のモチベーションや採用力の向上

脱炭素が進むと、CO2排出に価格が付くいわゆるカーボンプライシングが行われることになります。カーボンプライシングが行われることで、「値段」や「納期」などこれまでの商業的な価値に加えて「CO2を排出量」というと言う新たな価値が加わり価格に反映されます。つまり、カーボンプライシングを上手く経営に取り入れることで脱炭素を推進した経営を行い、利益を上げることが出来るようになります。

このカーボンプライシングを取り入れた脱炭素経営により、脱炭素に取り組んでいない競合他社に対する価格の優位性を確保しつつ、企業イメージの向上を図れます。脱炭素をはじめとする環境問題に積極的に取り組む企業としてイメージが向上すると、脱炭素経営が行われているとして優秀な人材獲得や社員へのインナーブランディングに繋がるだけでなく、投資家や金融機関からもESG投の対象として評価を得られるため、投資対象としても有利になる可能性もあります。

なお、企業が行える脱炭素への取り組みにはどのようなものがあるのか知りたい方は「脱炭素社会に向けて企業が取り組むべきことは?必要な理由や事例も解説」を確認してみてください。

 建設業において脱炭素を推進する理由

建設業において脱炭素を推進する理由は、日本の産業におけるCO2削減に影響が大きいためです。

 建設業では施工から解体までの工程でCO2が排出されますが、この工程の中で建設に関わる建設機械からの排出が主であり、建設業における脱炭素の課題となっています。

建設業における脱炭素の課題解決策として、低燃料型建設機械の開発や普及が進んでいます。また、建設業界から排出されるCO2削減に向けて低炭素型コンクリートの活用や工数の短縮などさまざまな取り組みも行われています。

 なお、建設業で行える脱炭素への具体的な取り組みに関して知りたい方は「建設業界が抱える脱炭素の課題は?解決策になる取り組みも解説」を参考にしてください。

脱炭素における企業の取り組み事例

脱炭素に向け、様々な企業が取り組みを進めています。環境省は脱炭素経営に取り組む中小企業の事例をまとめた「事例集」を公表しています。

たとえば令和4年度に環境省が実施した「中小企業の温室効果ガス削減目標に向けた脱炭素経営促進モデル事業」では6つの業種がモデル事業として参加しており、サプライチェーン排出量の削減やCO2削減などに取り組んだ企業事例が複数見られます。

また、CO2削減量の可視化や、EVトラックの活用に取り組んだ企業も見られました。

なお、その他の脱炭素における企業の取り組み事例を知りたい方は、「脱炭素社会に向けて企業が取り組むべきことは?必要な理由や事例も解説」を参考にしてください。

脱炭素とコロナ禍からの経済的な復興を両立する動きもある

世界的に脱炭素とコロナ禍からの経済的な復興を両立する動きも見られます。この動きは「グリーンリカバリー」といわれ、脱炭素への経済的な投資を行いながら持続可能な社会を実現していく政策として欧米を中心に広がりを見せています。

世界約100か国で活動する環境保全団体のWWFでは、グリーンリカバリーのポイントとしてパリ協定とSDGs双方の達成を提唱しています。パリ協定は地球温暖化対策に関する国際協定で「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち1.5℃に抑える努力をすること」を長期目標としており、SDGsは脱炭素への取り組みを含む17の持続可能な国際目標のことです。

日本ではグリーンリカバリーの実現を目指す中小企業向けに補助金の公募が提供されています。脱炭素において資金面に課題を感じている企業の方は補助金の活用を検討してみてください。

なお、グリーンリカバリーに関連する知識として、脱炭素がSDGsにどのように関わっているのか詳しく知りたい方は「SDGsと脱炭素の関連性と取り組み事例について」を参考にしてください。

 まとめ

脱炭素は地球温暖化の抑制に活用されています。脱炭素が国際的な課題として推進される理由は、地球温暖化対策以外にも資源の有限性などが挙げられます。

また、企業が脱炭素経営と言う時代に即した経営を行うことで利益を上げると共にブランドイメージ向上につながり、今後の人材採用では脱炭素への取り組みが求職者の採用の決め手として比重が高まると考えられます。

建設業界においてもこの脱炭素経営の波は押し寄せています。建設業では解体までの工程でCO2を多く排出していますので、建設業界が脱炭素経営に取り組むことにより日本の産業全体のCO2削減量を引き上げ、地球温暖化の抑制に貢献することが期待されています。

なお、脱炭素とコロナ禍からの経済的な復興を両立する「グリーンリカバリー」といわれる動き見られます。欧米では脱炭素への経済的な投資を行いながら持続可能な社会を実現していく政策として展開されています。

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