業界事例

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脱炭素・資源循環・自然共生を統合 「人と自然をつなぐ」竹中工務店の脱炭素社会実現への道(前編)

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

はじめに

創立以来、「棟梁精神」「品質経営」を掲げ、サステナブル社会の実現を目指す竹中工務店。脱炭素への取り組みは、2010年の「環境コンセプトブック」初版公表まで遡ります。今回は、早い段階からゼロカーボン建築への挑戦を掲げ、時代に即したCO2削減策を追求している竹中工務店の取り組みを紹介していきます。

建物の運用段階にとどまらず、資材選定から施工、解体という各段階におけるCO2削減を目指す「ライフサイクルCO2ゼロ」など、同社の環境への取り組みや、建設会社が果たす役割などについて、同社経営企画室CSR推進部長の林健太郎氏にお話を伺いました。

※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年1月)のものです。

「工務店」に込められた創業者の想い

1899年の創立以来「棟梁精神」「品質経営」を掲げていますが、この言葉にはどういう想いが込められているのでしょうか。

当社は織田信長の普請奉行から宮大工に転身し、1610年に名古屋で創業した竹中家の第14代が神戸に進出し、近代建築に取り組むようになった1899年を創立と定めています。そのときに付けた名前が「竹中工務店」。工務は「設計と施工」を表し、「店」にはお客様に奉仕するという意味合いが込められています

宮大工は「棟梁」と呼ばれ、お客様から「こういうものを作りたい」と言われたら、設計図を自分で描いて職人が施工する。それを近代建築においてもやりたい、という思いが「工務店」という名前に込められています。

明治以降の近代建築において技術が日進月歩で進むなか、最新技術を実際の建物に使える形に開発して、お客様の想いをかたちにするのが我々のやるべきことだという決意が「棟梁精神」という言葉にも表れています。さらに「品質経営」は、お客様から請け負った仕事を納期までに恥じない品質でお届けするということです。

1960年代に日本の製造業は米国に学ぶ形で早くから品質管理を取り入れていました。そして建設業界のなかでは当社が70年代に初めて取り組んで、それが認められていろいろな賞をいただきましたが、その流れは今日までずっと続いています。

「設計に緑を」建築とは社会の財産

60年代から70年代は高度成長時代を迎え、公害問題など世界的にも環境に対する関心が高まった時期ですが、71年に「設計に緑を」というスローガンが誕生していますね。

60年代くらいから世界的に環境への危機感が高まりましたが、日本においては64年の東京オリンピック、70年の大阪万博が象徴するように、とにかく右肩上がり、前向きに、という時代でした。しかし、一方で公害問題が起こっていて「このままではまずいのではないか」という社会的な懸念が生まれてきた頃です。

「設計に緑を」は当時、設計部門の代表をしていた人物の言葉です。この言葉は、今でも我々の使う設計図面の枠の下に書いてあります。

我々が作る建築物は使う人の生活を豊かにするものであり、人が生活する上で緑に触れ合う機会をいかに建築計画に盛り込めるかということは意識していたと思います。

建築とはいわば社会の財産です。当社は民間のお客様が多いのですが、ご依頼いただいて出来上がった建築は、そのまちにやっぱり溶け込み、まちに好影響を与える財産になるべきだろうと考えています。この考えは、まちづくりという言葉につながっていきますが、敷地内にとどまらず、その地域にどういう良い影響を与えることができるかも含めて計画を進めようという考えになってきています。

出典:竹中工務店WEBサイト

2023年末に放映されたTVCM「設計に緑を」

出典:竹中工務店公式YouTubeチャンネル

2050年を見据えたゼロカーボン建築への挑戦

2010年には「環境コンセプトブック(初版)」の中で「ゼロカーボン建築の実現」を掲げられました。その背景を教えてください。

2005年の京都議定書発効を受けて、CO2削減の必要性は認識していましたが、ではどうやってやるのかという具体策がなかったのです。2010年に「環境コンセプトブック」の初版を公表するにあたって、「2050年の世界はどうなっているべきか」という議論をしまして、「2050年にゼロカーボン建築の実現を目指す」という目標を定めました。ゴールをみんなで共有して外部にも発信することで、我々が設計施工、技術開発で実現していくんだという姿勢を示したわけです。

その時点では、できるかどうか、まだ裏付けも何もなかったのですが、「では技術開発はどうするのか?」という議論が始まっていき、まずは「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」を目指そうと技術開発も加速していきました。これを初めて実現したのが2015年に着手した東関東支店ZEB化改修プロジェクトです。

この段階では、とにかくZEBを提供できるように技術開発をしていました。そしてこの年のパリ協定で採択され合意されたのが「カーボンニュートラル」、さらに国連持続可能な開発サミットのSDGs合意に至るわけです。

この時点で会社としてまだCO2削減目標を持っていなかったのですが、最初に「CO2削減長期目標」という形で設定したのが2019年、「カーボンニュートラル」に目標を変えたのが2021年です。

2016年にZEB化改修した東関東支店

出典:竹中工務店WEBサイト

株式会社⽵中⼯務店 経営企画室 CSR推進部⻑

林 健太郎氏

 

「ライフサイクルCO2ゼロ」を目指す

―ここで登場するのが、「ライフサイクルCO2ゼロ」という考え方ですね。

今までは建物の運用段階でどれだけ省エネに寄与できるかを考え、省エネビルやZEBに取り組んできたのですが、ここで着目したのは運用の前段階です。資材製造時や建設時のCO2をいかに減らすかを、計画段階、資材の選定段階から考える。さらに、使い終わったビルを解体する段階でもCO2を削減する。建設から解体まで、建物のライフサイクル全体でいかにCO2を削減するかという考えを2021年に初めて打ち出しました

特に、建設段階のCO2削減についてはお客様のニーズも顕在化してきています。例えば、不動産業界からは「CO2削減に向けた取り組みを一緒に考えてほしい」というご用命をいただくなど、カーボンニュートラルへの取り組みが当たり前になってきている印象です。CO2削減という国際的な潮流のなかで、あらゆるプレイヤーがサプライチェーンにおいてCO2削減を意識する時代になっています。

出典:竹中工務店WEBサイト

株式会社⽵中⼯務店
経営企画室 CSR推進部⻑
林 健太郎(はやし・けんたろう)氏

▶1988 年入社
▶建築設計10年、プロジェクトマネジメント4年、経営企画11年、技術営業5年、CSR推進4年の業務に従事
▶2011年 企画室企画部長
▶2015年エンジニアリング本部副本部長
▶2020年 経営企画室CSR推進部長
▶一級建築士 プログラム・マネージャー・レジスタード(PMR)

 

前編では、「工務店」という社名に込められた思い、ゼロカーボン建築から「ライフサイクルCO2ゼロ」へと発展した歩み、環境問題への意識などについてお話しいただきました。

後編では、「環境コンセプトブック」に示された脱炭素・資源循環・自然共生の統合への取り組み、CO2削減目標達成に向けたScope1、2、3の具体的戦略などについてお聞きしていきます。

※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年1月)のものです。

後編はこちら:脱炭素・資源循環・自然共生を統合
「人と自然をつなぐ」竹中工務店の脱炭素社会実現への道(後編)

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