業界事例

時計 2024/3/5 アップデート 2024/4/4

脱炭素・資源循環・自然共生を統合 「人と自然をつなぐ」竹中工務店の脱炭素社会実現への道(後編)

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

前編では、「工務店」という社名に込められた想い、ゼロカーボン建築から「ライフサイクルCO2ゼロ」へと発展した歩み、環境問題への意識などについてお話しいただきました。

後編では、「環境コンセプトブック」に示された脱炭素・資源循環・自然共生の統合への取り組み、CO2削減目標達成に向けたScope1、2、3の具体的戦略などについてお聞きしていきます。

※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年1月)のものです。

環境コンセプトブックで2050年像を提案

2050年のあるべき姿を提案し、環境への取り組みを示した「環境コンセプトブック」を2010年に初めて公表し、2014、2021年と改定を重ねています。改定のポイントを教えてください。

改定ポイントをお話しする前にこれまでの経緯を簡単に説明させてください。1992年に初めて会社として環境への取り組みを示したのが「地球環境憲章」です。2009 年に「環境方針」「環境コンセプト」「環境メッセージ」を制定し、2010年に「環境コンセプトブック」初版を公表しました。その時に環境メッセージとして「人と自然をつなぐ」という言葉を紡ぎ出しました。2010年は生物多様性への取り組みとして「愛知目標」が採択され、環境問題にとってインパクトの大きな年でした。我々はここで「ゼロカーボンを目指す」と謳っています。

ただ、翌年に起きた東日本大震災の影響で、エネルギーを効率的に使う建築という社会的ニーズに応えるため、ゼロエネルギーへの取り組みが加速しました。2014年版は、改めてエネルギーとの向き合い方を見つめ直し、それを取り組みに反映するという改定でした。さらにパリ協定、SDGsの採択により、脱炭素、資源循環、自然共生への要請が高まったのを受け、2021年の改定を行っています。

出典:竹中工務店WEBサイト

株式会社⽵中⼯務店 経営企画室 CSR推進部⻑

林 健太郎氏

 

CO2排出ゼロ代替燃料の採用を推進

2023年には、連結対象グループ全体での1.5℃目標(SBT認定申請中)を設定していますが、達成に向けた戦略はどのように考えていますか。

Scope1では、建設現場での工事車両・発電機で使用する軽油をCO2排出ゼロの代替燃料に切り替えるための試みを始めています。代替燃料として考えているのが、航空機用燃料を作る段階で副産物として出てくるリニューアブル・ディーゼルと呼ばれる燃料でCO2削減が可能なのですが、コストが高い。いろいろな業界が普及に向けて動き出しているので、製造メーカーなどに対しニーズを伝えて、実証実験なども一緒に進めていく計画があります。

社内だけでなく、実際に建設機械を持っておられる下請け会社の方々にも協力を求めていく必要がありますし、業界全体の課題でもあります。

Scope2については、作業所、オフィス、開発事業で使用する電力をCO2排出ゼロのグリーン電力への切り替え、Scope3では、Category1建設資材製造時の低炭素材料への切り替え(電炉鋼、ECMコンクリート)、Category11設計建物運用時のCO2排出量削減に向けたZEB/ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の推進などの具体策を考えています。

低炭素材料への切り替えについては、一建設会社が孤軍奮闘しても得られる成果が少ないので、業界全体としてコンソーシアムを組んで開発を進めています。建設会社はもちろん、セメントメーカーや学識者も参加しています。

出典:竹中工務店WEBサイト

サステナブル社会の実現を目指す

2021年版の「環境コンセプトブック」でも示されている2050年に向けたロードマップについてお聞かせください。

2021年版のコンセプトブックでは、サステナブル社会の大前提として「健康・快適で豊かに暮らせる社会」と、「脱炭素社会」・「資源循環社会」・「自然共生社会」の4つの視点を示しました。我々が究極的に目指すのは健康・快適で豊かに暮らせる社会であり、そのために必要な3本柱が「脱炭素社会」「資源循環社会」「自然共生社会」です。脱炭素への取り組みはかなり加速していますが、最近になって資源循環(サーキュラーエコノミー)と自然共生(ネイチャーポジティブ)がクローズアップされてきています。

我々としても資源循環、自然共生への具体的な取り組みがここ数年でかなり見えてきたので、まさにこの3本柱を統合したソリューションへの貢献を打ち出していく段階に来ていると思います。

ともすれば、この3領域は互いに相反する部分があるともいわれるのですが、どれかを犠牲にするのではなく、統合的に見て最適な選択肢をお客様に提案しようという活動をいま進めているところです。

「想いをかたちに 未来へつなぐ」が当社のコーポレートメッセージで、我々は何のために仕事をしているかというと、やはりサステナブルな社会を実現するためなのです。

常に社会が求める新しい技術を開発して、お客様のプロジェクトに実装する。「この作品を見てもらえば我々が何者か、というのを分かってもらえるだろう」という創立者の言葉が残っていますが、設計者も施工者もこうした気持ちで取り組んでいますし、結局、こうした創立者の想いが繋がれているのだと思います。

出典:竹中工務店WEBサイト

 

株式会社⽵中⼯務店
経営企画室 CSR推進部⻑
林 健太郎(はやし・けんたろう)氏

▶1988 年入社
▶建築設計10年、プロジェクトマネジメント4年、経営企画11年、技術営業5年、CSR推進4年の業務に従事
▶2011年 企画室企画部長
▶2015年エンジニアリング本部副本部長
▶2020年 経営企画室CSR推進部長
▶一級建築士 プログラム・マネージャー・レジスタード(PMR)

終わりに

サステナブル社会の実現に向けて、建設会社として何ができるのか。竹中工務店の環境への取り組みは、こうした問いに応え続けた結果として生まれてきたという印象を強く抱きました。その根底には「工務店」という社名に込められた、お客様への奉仕、創立以来の「棟梁精神」「品質経営」という考えが脈々と受け継がれています。

脱炭素へのアクションも例外ではありません。時代や顧客ニーズの変化に合わせて、常に新しい技術開発を目指し挑戦を続けるという竹中工務店の姿勢は、CO2削減に継続的に向き合う上で、多くの企業にとって参考になるのではないでしょうか。

資源循環、自然共生というサステナブル社会を目指す際に不可欠な要素とうまく統合しながら脱炭素を目指すという考えは、今後のCO2削減を進める上で欠かせない視点でしょう。

※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年1月)のものです。

前編はこちら:脱炭素・資源循環・自然共生を統合
「人と自然をつなぐ」竹中工務店の脱炭素社会実現への道(前編)

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