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時計 2024/1/7 アップデート 2024/5/10

土木業界でDX化が進行中?その事例・利点・課題とは?

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

近年、土木業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進行しているのはご存知でしょうか。DXとは、ITなどのデジタル技術を活用して業務を改善するなどして、企業の競争力を高めようとする変革のことです。

しかし、DX化を行うには多額の初期投資がかかるなどの問題もあります。それにも関わらず、なぜ土木業界では、DX化が進行しているのでしょうか。今回は、DX化を進める利点とその課題、そして、DX化を行って成功した事例も複数紹介しています。本記事が、DX化を進める一助となれば幸いです。

土木業界でDXが注目されている理由とは?

 

土木業界でDXが注目されている背景には、経済的な損失を防ぎ、人々の生活をよりよくするという大きな理由があります。

DXの概要

DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、企業や組織がデジタル技術を活用して業務やサービスを変革・革新することを指します。これにより、企業の競争力を高めるのがねらいです。

このDX化の動きは、情報技術の進化とともに、従来のアナログな業務や手法をデジタル化し、効率化や新しい価値の創出も目指しています。

2025年問題

日本でDX化が上手く進まなかった場合、2025年以降、12兆円を超える損失をする可能性があると経済産業省が発表しています。これを2025年問題(2025年の崖)と言います。これを阻止するためにも、土木業界を含む、あらゆる業界でのDX化が進められているのです。

参照:デジタルトランスフォーメーションレポート ~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~ | 経済産業省

Society 5.0の影響

土木業界のDX化は、Society 5.0の影響を受け、以前よりも早く進行しています。Society 5.0とは、人とモノがIoT技術で繋がり、AIが大量の情報を適切に解析・提供する新しい社会のことです。これにより、多くの社会的課題を解決し、人々の生活の質を向上させられると言われています。

土木業界でも、人間が行うと作業に時間がかかったり、ミスをしたりします。この問題をDX化によって解決し、Society5.0の実現を目指しているのです。

参照:Society 5.0 – 科学技術政策 – 内閣府

土木業界におけるDXの具体的な利点とは?

土木業界において、DX化を進めることは非常にたくさんの利点があります。ここでは、代表的なDX化の利点を6つ紹介します。

現場の作業効率向上

バックオフィスの作業効率向上

安全性の確保

競争力の向上

情報やノウハウの蓄積・継承

人手不足・人材不足の解消

現場の作業効率向上

土木業界の現場作業は、以前、手作業やアナログな手法が中心でした。しかし、DXの導入により、それらの手法をデジタル化することで作業効率を向上させることに成功しています。

例えば、lot技術(ものをインターネットとつなぐ技術)により、時間のかかる測量や検査などを効率的に行えるようになりました。また、機器の自動化や遠隔操作もできるようになりつつあり、人の手だけでは難しかった作業もスムーズに進められるようになっています。

バックオフィスの作業効率向上

DXの導入は現場作業だけでなく、オフィス業務においても大きなメリットをもたらしています。例えば、クラウド技術(データを一か所にまとめて管理できる技術)を活用することで、現場とオフィスの連携がよりスムーズになり、リアルタイムでのデータ共有や更新が可能になりました。

これにより、必要な書類をオフィスまで取りに行ったり、どこに書類があるのかを長時間探したりすることはなくなるでしょう。

安全性の確保

土木業界は、他の事業と比べても事故が多いです。そのため、安全性の確保は最優先事項だと言えるでしょう。そこで、活躍するのがDXです。例えば、ドローンを使用して、高所や足場の悪い危険な場所の点検を安全に、しかも効率的に行えるようになりました。

加えて、AIを活用した危険予測や警告システムも開発されているため、事故の予防やリスクの低減にも貢献しています。

競争力の向上

土木業はDXの導入がまだ進んでいません。このため、他社に先駆けてDX化を行い、他の企業ができない高度な分析やシミュレーションを活用してより質の高いサービスを顧客に提供できれば、企業の競争力と収益アップを期待できます。

情報やノウハウの蓄積・継承

土木業界では、高い技術を持つ労働者が高齢化しており、そのノウハウを伝える前に退職してしまうケースが多いです。しかし、DXを導入することで、この問題は解決できます。なぜなら、クラウドを使用して情報やノウハウを蓄積・共有できるからです。例えば、熟練者の動きを動画で撮影して、それをクラウドで共有するなどが考えられます。

これにより、新人教育や従業員のスキルアップがこれまでよりも簡単に行えるでしょう。

人手不足・人材不足の解消

DXを導入することで、機器の遠隔操作や運転の自動化が可能となります。これらの技術を活用すれば、少ない人手でも作業を効率的に進めることができます。これにより、近年土木業界で深刻な問題となっている人手不足・人材不足の解消に繋がります。また、AIやロボット技術の活用も進んでおり、人材の確保や教育の問題の解決に役立っています。

土木工事におけるDX技術の例

ここからは、土木工事で利用可能なDX技術の例を5つ紹介します。

LiDAR

LiDAR(Light Detection and Ranging)は、光を放射し、その反射によって、物体の位置や形状を3Dで測定する技術です。土木業界では、地形の測量や構造物の点検に利用されています。

従来の測量方法に比べて、精度が高く、短時間でのデータ収集が可能です。特に、現場に出向くのが難しい地域や高所での測量作業を行うとき、ドローンと組み合わせて使用することで、安全かつ効率的に作業を行えます。

3次元モデルデータ

3次元モデルデータは、物体の形状や地形を3Dで表現したデータです。土木業界では、設計段階から施工、メンテナンスに至るまでのさまざまな場面で利用されています。これにより、時間のかかる手作業での計算や寸法ミスなどの問題を解消することが可能です。

また、3Dモデルを用いることで、実際の現場の状況をリアルタイムで確認することもできます。そのため、何かトラブルが起こったとしても、以前よりも問題点や改善点を発見しやすくなりました。

RTK

RTK(Real Time Kinematic)は、GPSを用いて、非常に高い精度で位置情報を取得する技術です。土木工事においては、精密な地形の測量に利用されることが多いです。従来のGPSよりも、はるかに高い精度を持ち、誤差は数センチメートルほどしかないと言われています。非常に正確な位置情報を取得できるため、施工の精度を大きく向上できます。

AI活用

AI(人工知能)は、コンピュータが大量のデータを学習して、人間の活動を真似する技術です。土木業界でも、AI技術はデータの分析や解析、予測、機器の自動制御など、多くの場面で利用されています。

例えば、過去の工事データを分析して、工程の最適化や安全対策の提案を行うことや、機械の自動運転をサポートするといった業務を行えます。

クラウド

クラウドは、インターネットを通じて、必要なストレージ、ソフトウェアを提供するサービスのことです。土木業界では、クラウドを利用して、全拠点のデータを一か所にまとめて管理したり、ノウハウを蓄積・共有したりと様々な場面で利用されています。

さらに、クラウドは、現場とオフィス、さらには関連する多くのパートナー企業との情報共有をリアルタイムかつスムーズに行えます。そのため、効率的にプロジェクトを進める要因ともなっています。

土木業界でDX化するときの課題とは?

土木業界において、DX化を行うことで、作業の効率化や安全性の確保、人手不足の解消など、多くのメリットがあります。一方、DX化するにあたって、課題もいくつか存在します。今回は、次の4つの課題について説明します。

初期投資の問題

技能者の養成

デジタル格差

社内理解の浸透

初期投資の問題

DX化最大の課題は、初期投資です。新しい技術やシステムを導入するには、どうしても多額の初期投資がかかります。土木業界では、大規模なプロジェクトを扱うため、導入コストも大きくなる場合が多いです。

特に中小企業にとっては、高額な初期投資は負担となり、DXの導入をためらう一因となっています。さらに、投資した後、十分な利益を得られるかどうかわからないことも、企業を慎重にさせる要因となっています。

技能者の養成

DX化を進行するうえで、技能者の養成も必要です。無事にデジタル技術を導入できても、それを操作・管理するスキルを持った人材がいなければ、本来の力を発揮させられません。さらに、現場の作業者や管理者にとっては、これまでの使用したことのない新しいシステムやツールを活用することになるため、十分な研修や教育も欠かせません。このように、技能者の養成は時間とコストがかかるため、DX化できない企業も多いのが現状です。

デジタル格差

デジタル格差とは、デジタル技術を使用できる人と使用できない人との間に生まれる格差のことです。土木業界では、高齢の労働者も多く、デジタル技術よりも従来のアナログ手法を好む傾向があります。そのため、仮にDX化ができたとしても、企業内にその技術を使用する人と使用しない人が出てきてしまい、上手く連携を取れない恐れがあります。

社内理解の浸透

DXは単に技術やツールを導入するだけではなく、企業の伝統や働き方まで変えなければなりません。この際、変革に対して抵抗感を抱く従業員や、新しい方法に不信感を覚える従業員が現れるかもしれません。これが、DXを推進するうえでの大きな障壁となることがあります。

なぜなら、組織全体での理解や受け入れが浅いと、新しい技術がもたらすメリットを最大限に活かすことが難しくなるためです。そのため、高額な初期投資に見合った結果を得られない可能性もあります。

土木業界のDX化:今後はどうなる?

現在、土木業界ではDX化が進行しています。この動きは今後どうなっていくのでしょうか。技術や環境の観点から考えてみます。

AIの進化

土木業界において、AIの進化は、大きな変化をもたらしています。例えば、建設プロジェクトの計画段階から完成後のメンテナンスに至るまで、AI技術を活用することで、以前よりも精度の高い、そして素早いデータ解析ができると考えられます。

例えば、建物の寿命を予測したり、災害時のリスクを分析したりなど、これまでは人の目や手に頼っていた作業は、AIによって自動化できます。これにより、コスト削減や時間の短縮が可能です。土木業界では今後、AIを組み込んだ設計や施工技術が一般的になっていくでしょう。

持続可能なインフラ構築

土木業界において、持続可能なインフラ構築の必要性が高まっています。環境の変動や限りのある資源の有効活用などが、以前よりも重要視されるようになっているためです。DXの技術を活用し、エネルギー効率の高い建物の設計や再生可能エネルギーの導入などの取り組みが現在も進められています。これは、循環型社会の実現には欠かせないため、土木業界でDX化を取り入れる方針は今後も変わらないと考えられます。

環境にやさしい建設の促進

環境保護は、現代の大きな課題となっており、土木業界もその影響を受けています。このため、土木業界ではDXを活用することで、環境への負荷を最小限に抑えた建設方法の開発や実践が進められています。

具体的には、CO2排出量の削減、廃材のリサイクル、自然環境への影響を考えた設計などが挙げられます。今後、環境にやさしい建設は、土木業界の基準となることが予想されます。それを支えるDX技術は、今後さらに発展していくと思われます。

土木DXでは脱炭素の取り組みも視野に入れる

環境問題への対策として、脱炭素の取り組みが行われることが増えています。土木業界におけるDX化でも、脱炭素の取り組みが目立つようになりました。今回は、実際に脱炭素に向けた取り組みを行っている3社を紹介します。

株式会社大林組

川上ダムの建設では、施工段階から完成後の維持管理を見据え、3次元モデルに建設の属性情報を付与するCIM(Construction Information Modeling/Management)をベースにデジタルツインを構築。ダム建設のオートメーション化をめざし、ICTやIoT、AIといったデジタル技術を多数導入しました。川上ダムは、建設現場でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進した次世代型のダムです。
中でも、クレーン運搬においては、AIによって最適な運搬ルートを自動生成し、その運搬ルートに沿って自律で運転する「クレーン自律運転システム」を開発。クレーン自律運転などの要素技術とCIMを連携したデジタルツイン現場管理により、工程や品質管理、安全性の向上を実現しました。

引用:出現!建設DXを結集した川上ダム | ニュース | 大林組

鹿島建設株式会社

新桂沢ダムでは、4台のクローラクレーンにて複数ブロックを同時に昼夜打設し、コンクリートの運搬先が多岐にわたること等から、人為的ミスによるコンクリートの誤運搬が引き起こす打設遅延対策や打設間違いのリスク回避策が求められました。そこで、コンクリートの注文、製造、運搬、打設までの一連の管理をIoT、ICTを利用して「見える化」することによって、打設当番やコンクリート運搬車両の運転手、クレーンオペレータ、バッチャープラントオペレータ、JV職員が、いつでもどこでもコンクリートの注文、製造、運搬、打設状況を把握し確認できる「コンクリート注文・製造・管理の自動化システム」を開発、導入しました。その結果、今までにない管理形態と見える化によって誤運搬、打設間違いのリスクを回避でき、効率よく無駄のないコンクリート打設を行うことが可能となりました。

引用:自動化・機械化 | ICT・DX | 鹿島建設株式会社

株式会社熊谷組

熊谷組は、2022年5月に経済産業省が定める「DX認定事業者」に認定されました。
現中期経営計画で経営基盤の強化として「デジタル化」を掲げ、基幹システムを刷新するなどDXへの取り組みを推進しています。
新基幹システムの建設WAOは、全8支店のモデル現場において運用を開始しました。2024年春の全面稼働に向け、プロジェクトが進行中です。
土木、建築の作業所で使うICTツール等の配備方針を策定しました。すべての作業所で ICTツールを利活用することにより、生産性を向上し労働時間の短縮を図ります。

引用:DXの取組み | 経営方針 | 投資家の皆様へ | 熊谷組

まとめ

近年、土木業界においてDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されるようになっています。その背景には、日本が12兆円も損失するかもしれないという2025年問題やデジタル技術で生活の質を上げようとするSociety5.0の影響などがあります。

LiDARや3次元モデルデータ、AIの活用などDXの導入により、現場の効率向上、安全性の確保、ノウハウの蓄積・継承などの多くの利点が期待されています。一方で、初期投資やデジタル格差の問題など、課題も多いです。

今後も、土木業界におけるDX化は、AIの進化や環境にやさしい建設の促進、脱炭素の取り組みなどによって進行すると思われます。そのため、土木業界もデジタル化の波に乗ることができれば、さらなる発展が期待できます。ぜひ、DXの導入を検討してみてください。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO₂排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。

また、建設会社からCO₂排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるディベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO₂排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは、建設業界のCO₂対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業界に特化したCO₂排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

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