業界事例

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安藤ハザマの「次世代エネルギープロジェクト」 次世代エネルギーを見据えた自社電力広域融通への挑戦(前編)

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

はじめに

2018年4月に環境方針を改定し、脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会の実現に向けた環境重視経営をさらに加速させている安藤ハザマ。日本が抱えるエネルギー問題の解決に向けた取り組みとして「次世代エネルギープロジェクト」を推進しています。これは水素燃料を使った発電システムを構築し、建物で使用するエネルギーに起因するCO2排出量を削減しようというユニークな取り組みです。

建設会社がなぜエネルギー供給システムの開発に取り組むのか―。同プロジェクトを担う安藤ハザマ技術研究所の谷口裕史所長、次世代エネルギー戦略部の郡司清部長、中里壮一課長に、脱炭素・循環型社会への取り組み、プロジェクトの背景、実証試験の進捗状況などについてお話しいただきました。

長期ビジョンで示す「環境価値の創造」

―安藤ハザマでは、脱炭素で低負荷な循環型社会の実現に向けて、長期ビジョンで「環境価値の創造」を掲げています。

谷口氏:当社は2020年2月、長期ビジョン「安藤ハザマVISION2030」を策定し、「イノベーションの加速とたゆまぬチャレンジで新たな価値を創造、社会課題の解決に貢献」を基本方針に、「お客様価値の創造」「株主価値の創造」「環境価値の創造」「従業員価値の創造」の4つの価値創造を掲げています。その一つが「環境価値の創造」であり、豊かな地球を次世代に引き継ぐため、脱炭素社会の実現に貢献することを目指しています。当社はゼネコンとしてこれまで様々なお客様のニーズに応え、オンリーワンの建造物を設計、施工してきましたが、特に建築事業においてはこれまでのニーズに加え、「脱炭素」、つまりカーボンニュートラルのニーズが高まってきていると実感しています。このニーズに、ゼネコンとして応える必要があります。

当社は2019年12月にScience Based Targets initiative(SBTi)の認定を取得しています。SBTiは、企業の温室効果ガス削減のガイダンスを策定し、このガイダンスに基づいた削減目標に適合していると認められる企業に対して、SBT認定を与えています。現在受けている認定はパリ協定の「2℃目標(2℃よりも十分低く保ち、1.5℃に抑える努力)」によるものですが、近日中に現行の「1.5 ℃目標」での更新を申請中です。また、当社は事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーに代替することを目指す国際的イニシアチブであるRE100(Renewable Energy 100%)※2にも加盟しています。

出典:安藤ハザマWebサイト

執行役員 技術研究所長
谷口裕史 氏

※1:「パリ協定」について詳しくはこちら(https://co2media.rvsta.co.jp/basic/55/
※2:「RE100」について詳しくはこちら(https://co2media.rvsta.co.jp/basic/55/

建物が排出するCO2削減への挑戦

―脱炭素、エネルギー問題の解決に向けた取り組みの一つとして、2018年9月に「次世代エネルギープロジェクト」に着手しています。本プロジェクトについてお話を聞かせてください。

谷口氏:当社は事業活動の脱炭素化に関して、Scope1やScope2だけでなく、サプライチェーンの排出であるScope3の削減にも注力しています。このScope3の排出量の70%以上は、弊社からお客様へ建物を引き渡した後に使用されるエネルギーに起因するカテゴリ11が占めています。「次世代エネルギープロジェクト」は、このカテゴリ11の削減に寄与します。お客様にとっては、Scope1やScope2の削減になります。

当社では、2017年8月に従来の土木事業と、建築事業のエネルギー関連営業部門の統合部署が設立されました。その際にエネルギーという観点で、新たな事業化を模索する部署として設置されたのが、現在の次世代エネルギー戦略部です。

「次世代エネルギープロジェクト」は、離れた敷地にある複数事業所全体のエネルギーを統合・最適化する新たな広域的省CO2エネルギーマネジメントプロジェクトです。具体的には、供給サイド、需要サイド、広域的エネルギー融通という3つのコンセプトを組み合わせています。

供給サイドでは化石燃料に代わる次世代のエネルギーとして世界中で期待され注目されている水素の本格運用を見据えて、燃料(都市ガス)から電気と熱を同時に作って供給するコージェネレーション(CGS)群と、大容量ナトリウム硫黄蓄電池(NAS蓄電池)とを組み合わせたエネルギーシステムを構築します。需要サイドでは、発電拠点となる事業所で節電した電力を、発電電力と同等にみなすネガワットの取り組みを行っています。さらに、遠隔地への効果の波及です。複数の遠隔地にある建物の電力需要予測を行い、発電供給側でも遠隔地の需要に応じた供給量を調整することで、需要と供給のバランスが取れた省CO2分散型エネルギーマネジメントシステムを構築し運用されています。

この3つのコンセプトによって得られた電力は、広域電力グリッドを利活用し、単一建物だけでなく、複数遠隔建物に融通することで、広域的な省CO2化を実現することが出来るのです。

2020年4月からは、茨城県つくば市にある安藤ハザマ技術研究所を発電拠点とし、遠隔敷地にある複数の需要拠点を含めた実証試験を進めています。

 

出典:安藤ハザマWebサイト

「次世代エネルギープロジェクト」の発足背景

―実証試験では、つくば技術研究所での省CO2電力の「発電」(自家使用)に留まらず、余剰電力を遠隔地に提供する「送電」「融通」に取り組んでいると伺いました。この狙いはどこにあるのでしょうか?

中里氏:従来、建築物に供給するエネルギーは、エネルギー事業者(旧一般電気事業者、ガス事業者等)からの供給に依存していました。しかし、オンサイトでエネルギーを創出することは、さらなる省エネ、CO2排出量削減に寄与できるのではないかと考えました。また、送配電ネットワークを利⽤して、電⼒市場を介さず発電した電気を同時に遠隔地の事業所へ送る自己託送など、まだ普及していない利活用方法の導入も考えられました。しかしながら、このシステムを構想時点でお客様に提供することは技術的な課題もあり、自ら実証することで技術的課題を克服し、将来的にお客様にご提供できる技術にすることが本プロジェクトの狙いです。

また、分散型電源としての位置づけもあります。火力発電所などの大型発電所ではなく、排熱利用も加味できる分散型電源であれば、よりCO2排出量の削減に寄与できること、災害時のBCP(事業継続計画)対策にもなること、さらに電力自由化後の安定した電力供給にも貢献できると考えていました。

営業本部 次世代エネルギー戦略部 課長
中里壮一 氏

郡司氏:東日本大震災の経験なども踏まえて、災害時には分散型電源が強みを発揮するのではないかと考えました。災害発生時には工場が稼働を停止してしまいますが、分散型電源として自前で発電機を持ち、燃料も貯められていれば生産を継続できたわけです。例えば、都内で地震が起きて事業所ビルが被害を受けたときにも当てはまります。そういうニーズが高まるのではないか、当社としてもこうしたニーズに応える提案ができるようになりたいという議論が起こりました。震災時にゼネコンとして何ができるのかを考えたときに、災害復旧ももちろんですが、インフラ機能に対して何かできることはないのか、という思いがあったのです。

2018年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」において、脱炭素化に向けた水素開発という方向性が示されましたが、その中でも分散型電源は我が国のエネルギー戦略の一つに位置づけられています。

他方で、環境問題、CO2排出量削減という大命題もあるわけですが、環境に良いことだと分かっていても、コスト的な説得力がなければ進めにくいという本音もあったわけです。従来の建設会社のビジネスは、例えば建物を作っておしまい、というフロービジネスでした。これからは、施主様が長期利用される資産という前提でサービスとして提供するという手法を導入することでその説得力を生む、つまり、ストックビジネスへの変革がいくつかの課題を解決できます。そうした変革が期待されるなかで、エネルギーやCO2排出量削減という問題をどう捉えていくかを考えたときに、CO2排出量削減という付加価値のあるエネルギーを、新たなビジネスチャンスにつなげたいという流れが出てきたわけです。

営業本部 次世代エネルギー戦略部長
郡司清 氏

 

株式会社安藤・間
執行役員 技術研究所長
谷口裕史(たにぐち・ひろふみ)氏

 

株式会社安藤・間
次世代エネルギー戦略部長
郡司清(ぐんじ・きよし)氏【写真左】

次世代エネルギー戦略部 課長
中里壮一(なかざと・そういち)氏【写真右】

※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年1月)のものです。

 

前編では、SBTi認定、RE100加盟など脱炭素に向けた取り組み、「次世代エネルギープロジェクト」の概要、同プロジェクトの第1フェーズを推進する背景や現場の思いなどについてお話しいただきました。

後編では、同プロジェクトの展望、第2フェーズであるCO2フリー水素活用に向けた実証試験、技術研究所における脱炭素への技術開発、ゼネコンとして脱炭素・環境負荷軽減に取り組む理由などについてお聞きしていきます。

 

後編はこちら:安藤ハザマの「次世代エネルギープロジェクト」自社発電・送電・融通システムへの挑戦(後編)

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